著者
堀田 饒 中村 二郎 岩本 安彦 大野 良之 春日 雅人 吉川 隆一 豊田 隆謙
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.47-61, 2007 (Released:2009-05-20)
参考文献数
10
被引用文献数
24

アンケート調査方式で,全国282施設から18,385名が集計され,1991∼2000年の10年間における日本人糖尿病患者の死因を分析した.18,385名中1,750名が剖検例であった.1) 全症例18,385名中の死因第1位は悪性新生物の34.1%であり,第2位は血管障害(糖尿病性腎症,虚血性心疾患,脳血管障害)の26.8%, 第3位は感染症の14.3%で,糖尿病性昏睡は1.2%であった.悪性新生物の中では肝臓癌が8.6%と最も高率であり,血管障害の中では糖尿病性腎症が6.8%に対して,虚血性心疾患と脳血管障害がそれぞれ10.2%と9.8%とほぼ同率であった.虚血性心疾患のほとんどが心筋梗塞であり,脳血管障害の内訳では脳梗塞が脳出血の2.2倍であった.2) 剖検例において死亡時年齢から糖尿病患者の死因をみると,血管障害全体では年代が上がるにつれて頻度が高くなるが,腎症および脳血管障害の頻度には40歳代以上では年代による大きな差は認められなかった.しかしながら,虚血性心疾患は年代の上昇に伴って増加し,50歳代以上では他の血管障害に比して頻度が高く,70歳代では血管障害全体の約50%を占めていた.悪性新生物は,40歳代以上の各年代で最も高く,60歳代においては46.3%と極めて高頻度であった.また,感染症による死亡には40歳代以上の各年代で大きな差はなかった.3) 血糖コントロールの良否が死亡時年齢に及ぼす影響をみると,血糖コントロール不良群では良好群に比し,男性で2.5歳,女性で1.6歳短命であり,その差は悪性新生物に比し血管合併症とりわけ糖尿病性腎症と感染症で大きかった.4) 血糖コントロール状況および糖尿病罹病期間と血管障害死の関連を検討すると,糖尿病性腎症,虚血性心疾患,脳血管障害ともに血糖コントロールの良否との関連性は認められなかった.罹病期間に関しては,大血管障害は細小血管障害である糖尿病性腎症と比較して糖尿病歴10年未満でも頻度が高かった.5) 治療内容と死因に関する検討では,食事療法単独21.5%, 経口血糖降下薬療法29.5%, 経口血糖降下薬の併用を含むインスリン療法44.2%とインスリン療法が最も多く,とりわけ糖尿病性腎症では1,170名中683名58.4%を占め,虚血性心疾患での1,687名中661名39.2%, 脳血管障害での1,622名中659名40.6%に比べて高頻度であった.6) 糖尿病患者の平均死亡時年齢は,男性68.0歳,女性71.6歳で同時代の日本人一般の平均寿命に比して,それぞれ9.6歳,13.0歳短命であった.前回(1981∼1990年)の調査成績と比べて,男性で1.5歳,女性で3.2歳の延命が認められたが,日本人一般においても男性1.7歳,女性2.7歳の延命が観察されており,糖尿病の管理・治療が進歩したにも拘らず,患者の生命予後の改善に繋がっていないことが明らかとなった.
著者
若井 建志 大野 良之
出版者
社団法人 日本循環器管理研究協議会
雑誌
日本循環器管理研究協議会雑誌 (ISSN:09147284)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.42-45, 1999-02-10 (Released:2009-10-16)
参考文献数
4

バイアスは疫学方法論における重要な問題の1つである。以下, バイアスの種類とその対策について2回にわたって述べるが, 詳細については参考文献 (1, 2, 3) を参照されたい。なお, 疫学用語については可能なかぎり参考文献 (4) に準じた。今回はバイアスとは何か, およびバイアスの種類についてである。
著者
若井 建志 大野 良之
出版者
社団法人 日本循環器管理研究協議会
雑誌
日本循環器管理研究協議会雑誌 (ISSN:09147284)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.188-190, 1999-04-30 (Released:2009-10-16)
参考文献数
1

前回はバイアスとは何か, およびバイアスの種類について述べた。今回はバイアスに対する対策を考えてみたい。
著者
岡本 和士 大野 良之
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, pp.604-609, 1994-08-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
9

痴呆の発症リスク要因を明らかにするため, 愛知県M町でコーホート内症例対照研究を実施した. 症例群は昭和54・55年に実施した高齢者総合健康調査の受診者のうち, 平成5年4月時点に痴呆と同定された19名である. 対照群は性・年齢 (±1年以内), 居住地域を対応させ症例1名に対し2名を上記総合健康調査受診者から無作為に選定した. オッズ比による検討の結果, 13~14年前の身体的精神的状況および生活習慣と, 痴呆発症との関連は以下のようであった.1. 痴呆発症リスク有意上昇要因は, 手指の使いにくさ, 入れ歯使用, 日頃話す機会が少ない, 暇な時間が多い, 友達が少ない,「29-17」の減算不可である.2. 痴呆発症リスク上昇傾向要因は片側手足麻痺あるいは首・肩こりの場合である.3. 痴呆発症リスク有意低下要因は運動習慣ありである.4. 喫煙習慣と睡眠薬常用は比較的大きなオッズ比であったが, 痴呆発症と有意に関連していない.5. 今回の分析で得られた7つの有意なリスク上昇要因 (「手指の使いにくさ」「入れ歯の使用」「日頃話す機会が少ない」「暇な時間が多い」「友達が少ない」『「29-17」の減算不可』「運動習慣なし」) の保有数が多くなるにつれて, 痴呆発症よリスクは明らかに上昇すると考えられた.