著者
大野 裕司
出版者
北海道大学大学院文学研究科
雑誌
北海道大学大学院文学研究科研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
no.6, pp.35-53, 2006

日本の陰陽道研究の成果として、近世以来、混亂のあった禹歩と反閇の關係について、禹歩は、反閇を構成する呪術の一つに過ぎず、反閇はその他の呪術をも含む一連の儀式であることが明らかになった。また、近年の若杉家文書『小反閇作法并護身法』(1154年) の發見と公開(村山修一編『陰陽道基礎史料集成』東京美術、1987年)によって、これまで江戸期の資料に據るほかなかった反閇の儀式次第について、平安期に実際に行われていたと考えられる陰陽道の反閇を知ることができるようになった(ただし、小反閇は、數多くある反閇儀式の一つに過ぎない)。 近年の陰陽道研究の成果として特に重要なことは、陰陽道における反閇は、中國における「玉女反閉局法」に由来するということを明らかにしたことであろう。しかしながら、これまでの陰陽道研究において、玉女反閉局法は、小坂眞二氏らによる『武備志』、酒井忠夫氏による『太上六壬明鑑符陰經』の紹介があるに過ぎず(玉女閉局法はこの二書意外にも、數多くの遁甲式占の書などに記載される)、またその紹介も、部分的なものである。筆者は先に、秦代の出土資料である睡虎地秦簡『日書』に見える、出行の凶日にどうしても出行しなくてはならない時に行う儀式(この儀式には禹歩を伴う)について檢討し、また、この儀式の明清時代に至るまでの變遷についても言及した(「『日書』における禹歩と五畫地の再検討」『東方宗教』第108號、2006年)。その際、玉女反閉局法の儀式次第が見える最も古い文獻『太白陰經』を紹介し、かつ該書に載せる玉女反閉局法には禹歩が見えないことを指摘した。筆者前稿では、紙數の都合により玉女反閉局法については十分な紹介と検討を行うことができなかった。そこで、本稿では、玉女反閉局法を考察するに當たって、最も古いものである『太白陰經』に見える玉女反閉局法について、これと内容的にほぼ同一の『武經總要』の玉女局法を用いて初歩的な校勘を試み、また後世の玉女反閉局法の基礎となったと考えられる『太上六壬明鑑符陰經』と『景祐遁甲符應經』の玉女反閉局法についても初歩的な校勘を試みる。
著者
大野 裕司
出版者
北海道大学大学院文学研究科
雑誌
研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.35-53, 2006-12-20

日本の陰陽道研究の成果として、近世以来、混亂のあった禹歩と反閇の關係について、禹歩は、反閇を構成する呪術の一つに過ぎず、反閇はその他の呪術をも含む一連の儀式であることが明らかになった。また、近年の若杉家文書『小反閇作法并護身法』(1154年) の發見と公開(村山修一編『陰陽道基礎史料集成』東京美術、1987年)によって、これまで江戸期の資料に據るほかなかった反閇の儀式次第について、平安期に実際に行われていたと考えられる陰陽道の反閇を知ることができるようになった(ただし、小反閇は、數多くある反閇儀式の一つに過ぎない)。 近年の陰陽道研究の成果として特に重要なことは、陰陽道における反閇は、中國における「玉女反閉局法」に由来するということを明らかにしたことであろう。しかしながら、これまでの陰陽道研究において、玉女反閉局法は、小坂眞二氏らによる『武備志』、酒井忠夫氏による『太上六壬明鑑符陰經』の紹介があるに過ぎず(玉女閉局法はこの二書意外にも、數多くの遁甲式占の書などに記載される)、またその紹介も、部分的なものである。 筆者は先に、秦代の出土資料である睡虎地秦簡『日書』に見える、出行の凶日にどうしても出行しなくてはならない時に行う儀式(この儀式には禹歩を伴う)について檢討し、また、この儀式の明清時代に至るまでの變遷についても言及した(「『日書』における禹歩と五畫地の再検討」『東方宗教』第108號、2006年)。その際、玉女反閉局法の儀式次第が見える最も古い文獻『太白陰經』を紹介し、かつ該書に載せる玉女反閉局法には禹歩が見えないことを指摘した。 筆者前稿では、紙數の都合により玉女反閉局法については十分な紹介と検討を行うことができなかった。そこで、本稿では、玉女反閉局法を考察するに當たって、最も古いものである『太白陰經』に見える玉女反閉局法について、これと内容的にほぼ同一の『武經總要』の玉女局法を用いて初歩的な校勘を試み、また後世の玉女反閉局法の基礎となったと考えられる『太上六壬明鑑符陰經』と『景祐遁甲符應經』の玉女反閉局法についても初歩的な校勘を試みる。
著者
大野 裕司
出版者
中国出土資料学会
雑誌
中国出土資料研究 (ISSN:13430009)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.42-70, 2005-03-31

At the end of 1975, Shuihudi Qinmu Bamboo-scripts 睡虎地秦墓竹簡 were unearthed, half of which were "Rishu 日書". Recent study has revealed that inscriptions on the "Rishu" are descriptions of various methods for divination, purification and prayer. Many parts od the "Rishu" deal with methods to select auspicious days (see Liu Lexian 劉楽賢, Shuihudi Qinjian Rishu yanjiu 睡虎地秦簡日書研究, Taibei: Wenjin Press, 1994). This paper explores the relationship between living humans and spiritual beings and classifies the spiritual beings by examining descriptions of their deification and taboo days inscribed on the "Rishu". According to the "Rishu", some spiritual beings become deified while others do not. Furthermore, "taboo days" are associated with some spiritual beings but not with others. There are auspicious days and inauspicious days for deifying spiritual beings. The inauspicious days are included among "taboo days". Spiritual beings that are deified are closely associated with people. For example, the sprits of one's father and mother (ancestral spirits) and of Wusi 五祀 are deified. If spiritual beings are deified on an auspicious day, a positive outcome will be gained; however, if they are deified on an inauspicious days, curses will result. Various taboos are associated with spiritual beings that are not deified.Those beings included Di 帝, Shen 神, and Shensha 神煞(star-spirits), all of whom are high-ranking deities. People can do nothing but observe the taboo days. If people do not respect the taboos, they will suffer curses. There is no way to avoid the curses. There are some spiritual beings that are neither deified nor associated with taboos (e.g., Cigui 刺鬼 and Guqiugui 故丘鬼, which are inscribed on the "Jie" 詰 Chapter). Such spiritual beings bring curses whether or not the taboos are respected. It is thought that these curses can be avoided, and people can stave off the spiritual beings in various ways.The standing of the these spiritual beings is relatively low. In light of the above, the author classifies the spiritual beings inscribed on the "Rishu" into three kinds: 1. Spiritual beings that are closely associated with people, such as ancestral spirits(father and mother), Wusi (Shizhong 室中, Hu 戸, Men 門, Xing 行, Zao 竃) and occupation deities (Shixian 史先, Wuxian 巫咸, Nongyeshen 農業神, Nüwa 女媧). 2. High-ranking spiritual beings, such as supreme gods(Di and Shen) and Shensha (e.g., Tianli 天李, Sui 歳 and others). 3. Other spiritual beings inscribed on the "Jie" Chapter or elsewhere.
著者
三浦 國雄 山里 純一 宮崎 順子 益子 勝 大野 裕司
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、術数学の基礎研究として主要術数書の文献解題を行なうものである。すでに平成17・18 年度の第一期研究において研究報告『主要術数文献解題』を刊行したが、本研究はそれを承ける第二期研究であり、第一期で取り上げることが出来なかった文献(出土術数文献も含む)の解題を試み、すでに本年3 月、『主要術数文献解題 続編』として刊行ずみである。