著者
寺内 文雄 大釜 敏正 増山 英太郎 久保 光徳 青木 弘行
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.7-12, 1995-07-31 (Released:2017-07-25)
参考文献数
2
被引用文献数
1

木目模様の方向の嗜好とその背景にある心理的要因を明確にするために,模様の方向の官能評価実験およびイメージの解析を行った。官能評価実験には(1)木目模様の複写,(2)木目模様を連想させる線模様,(3)山形模様の3種類の模様を用い,これらの方向の嗜好を一対比較法によって評価した。評価に寄与する心理的要因はカード間の評価の相関関係と,数量化理論III類によるイメージ構造の解析結果から検討を行った。その結果,木目模様では方向の嗜好が水平・垂直方向に偏り,なかでも上方向と右方向の評価が高いことが確認できた。また,数量化理論III類によって,模様イメージはI)緊張感,II)親近感,III)活動感の3要因で構成されることが明確となった。これらの結果を併せて検討したところ,模様イメージのI)緊張感とII)親近感が木目模様の方向の嗜好に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
嵐田 絵美 塚越 覚 野田 勝二 喜多 敏明 大釜 敏正 小宮山 政敏 池上 文雄
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.491-496, 2007 (Released:2007-07-24)
参考文献数
25
被引用文献数
5 8

主にハーブを用いた園芸作業の持つ療法的効果について,心理的指標である精神健康調査(GHQ)および気分プロフィール検査(POMS),生理的指標である唾液中コルチゾール濃度およびフリッカー値を用い,主観的および客観的に検証することを試みた. GHQから,園芸作業による神経症症状の改善傾向が認められた.POMSから,園芸作業には緊張や不安,抑うつ感,疲労感,当惑などの一時的な負の感情を減少させる効果があることが明らかとなった.唾液中コルチゾール濃度は作業前に比べて作業後に低下し,作業によるストレスの緩和効果が認められた.フリッカー値の変化から,屋外での栽培作業は室内でのクラフト作業に比べて中枢性疲労の回復効果が大きい可能性が示唆された. 以上より,園芸作業は神経症症状や一時的気分の改善に有効であった.また,唾液中コルチゾール濃度とフリッカー値によって,園芸作業がストレスや中枢性疲労の解消に効果的であることを客観的に判断できた.質問紙による主観的評価に,客観的評価指標を組み合わせることで,園芸作業の療法的効果を総合的に判断し,より効果的なプログラムの構築と普及に寄与できると考えられた.
著者
大釜 敏正 池上 文雄 野田 勝二 寺内 文雄
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

多様な香りを有するバラの香りは、どのようなイメージ空間で捉えられていて、生理学的及び生化学的にどのような影響を及ぼすのか、について検討した。得られた概要は以下のとおりである。1.イメージ構造の検討には、セマンティック・デファレンシヤル法を用いた。評価尺度は、既往の文献及びパーヒューマーの助言をもとに、両極15対及び単極2対を選定した。現代バラ6種の香りについて官能検査を行い、因子分析を行ったところ3因子が抽出された。それらは、「総合的な評価」、「質」及び「強さ」を表していて、ニオイのもつ性質とほぼ対応する。男女間で評価に違いがみられたのはダマスク系の香りで、ティーの香りにはほとんど差はなかった。単複尺度を含めて男女とも評価が高かったのはブルーの香りであった。2.自転車エルゴメータを用いた運動負荷から生じるストレスに及ぼすバラ(ブルー)の香りの影響を唾液中のアミラーゼ活性を指標として調べた。香りは運動負荷を取り除いた直後に与えた。運動経験の豊富な被験者群における運動負荷後のストレスは、運動経験の少ない群よりも小さく、バラツキも少なく、バラの香りを与えた場合には、時間とともに減少し、安静時の値よりも小さくなる傾向がわずかではあるがみられた。3.バラの香りの有無が精神的なストレスに及ぼす影響を調べるため、計算課題を与え、作業終了直後の脳波及び心電図の計測を行った。また、快適感、集中度、疲労感、緊張感に関する主観評価も行った。バラの香りを与えた場合は、ブルーおよびダマスク系のいずれの香りもα波帯域の比率が有意に減少し、β波帯域の比率が増加した。心拍数には香りの有無による影響は認められなかった。また、主観評価では、緊張感に有意な差がみられ、ブルーの香りは緊張感を減少し、ダマスク系の香りは増加した。