著者
大髙 瑞郁 唐沢 かおり
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.49-59, 2010 (Released:2010-08-19)
参考文献数
18
被引用文献数
2

帰属と援助の先行研究は,貧困者が政府に援助されるに値するか否かの判断(Zucker & Weiner, 1993)や,貧困者を援助する社会政策に対する態度の規定因(Applebaum, 2001)を検討してきた。しかし,政府に援助されるに値しないと判断した人々も,社会保障政策を支持するかもしれない。なぜなら,彼らが貧困者に貧困を解決することが不可能であると判断すれば,政府に援助する責任があると判断し,社会保障政策を支持する可能性が考えられるからである。そこで本研究は,社会調査データの二次分析を行って,人々が社会保障政策に対する態度を決定する過程を解決責任(Brickman, Rabinowitz, Karuza, Coates, Cohen, & Kidder, 1982; Karasawa, 1991)の観点から検討した。結果は,低所得者は高所得者よりも,社会保障の対象となる人々の生活を保障する政府の責任を重く判断し,社会保障政策を支持することを明らかにした。考察では,格差が拡大しつつある日本社会に,本研究が与える示唆について議論した。
著者
大髙 瑞郁 唐沢 かおり
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.89-100, 2015-11-30 (Released:2015-12-17)
参考文献数
40
被引用文献数
2

Factors other than frequency of involvement probably determine emerging adults’ attitudes toward their fathers. However, factors that affect these attitudes have not yet been revealed. Therefore, this study focuses on children’s perceptions of perspective taking from their fathers and blame for negative behaviors by their fathers, and verifies whether these factors determine children’s attitudes toward their fathers. We conducted a panel survey of 501 Japanese undergraduate students. Data were collected in two waves over approximately two months to establish the causal relationships between the above-mentioned variables. Results indicated that in case of sons, the more positively they perceive their fathers’ behaviors, the more positive their attitudes become toward their fathers. Implications for father-son relationships, compared with father-daughter and mother-child relationships, are discussed.
著者
渡辺 匠 唐沢 かおり 大髙 瑞郁
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.11-20, 2011 (Released:2011-08-30)
参考文献数
30
被引用文献数
4

本研究では,家族介護と公的介護に対する選好度の規定要因および関係性について検討を行った。一般成人331人を対象とした調査研究の結果,家族介護意識が家族介護・公的介護に対する選好度を規定していること,および,両者の選好度の間には背反的な関係があることが明らかになった。具体的には,調査対象者が被介護者の立場に立って回答した際に,家族介護への選好は介護サービス等の公的介護の利用抑制につながり,介護への態度が公的介護導入を制限する要因になることが認められた。一方,家族介護に伴う負担の懸念が高い場合は公的介護利用を志向して,介護サービスに対する税金使用への賛意が高まることが示唆された。しかし,以上の仮説モデルは心理的負債感によって調整されており,心理的負債感が低い人は返報義務を感じにくいために,介護受容における選択的選好や公的介護を利用する上での積極的関与が観察されなかった。以上の結果に基づき,介護選択と介護政策に対する態度の関連性や,介護受容における家族介護意識と心理的負債感の役割について議論した。