著者
天池 洋介
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
vol.139, pp.31-47, 2018-09-30

本研究は,A.B. アトキンソンらの労働インセンティブによる福祉国家論を概観し,福祉国家レジーム論をはじめとしたエスピン−アンデルセンの諸理論との比較を通じて,福祉国家の可能性を考察することを目的としている.検討の結果から,福祉国家は労働インセンティブを強める作用も,弱める作用も両方持ち合わせているために,一概に大量失業の原因である,あるいは経済効率を引き下げているとは言えず,むしろその適切な制度設計こそが求められるということを明らかにした.
著者
天池 洋介
出版者
日本福祉大学子ども発達学部
雑誌
日本福祉大学子ども発達学論集 = THE JOURNAL OF CHILD DEVELOPMENT (ISSN:24352802)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.23-38, 2021-01-31

PISA などの国際学力調査において,フィンランドは世界一の好成績を修めたとして注目されているが,その要因についてグローバル化の視点から考察したものは少ない.本論ではグローバル化の一つの形態である,北欧協力における初等・中等教育政策について,グローバル化の諸層と国境を越える福祉国家の視点から考察をした.PISA をはじめグローバル化し,競争が激化する教育政策の中で,EU はヨーロッパ地域において一元的にベンチマークを設定して,ヨーロッパの文脈を踏まえた独自の教育政策を展開している.さらに北欧協力は北欧地域において,平等を基調とした北欧の文脈に沿った初等・中等教育政策を行っている.それはベンチマークなどによる一元的な管理ではなく,各国の多様性を重視する北欧型福祉国家が,国境を越えて展開する教育政策である.
著者
天池 洋介
出版者
日本福祉大学子ども発達学部
雑誌
日本福祉大学子ども発達学論集 = THE JOURNAL OF CHILD DEVELOPMENT (ISSN:24352802)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.29-45, 2020-01-31

グローバル化によって, 教育が国際貿易における商品となり, 教育政策が人的投資戦略に転換している. EU では各国の教育政策が資格枠組みを通して統合化されるとともに, エラスムス計画をはじめとするヨーロッパの次元での教育政策が展開している. 北欧の次元の教育政策としてノルドプラスがあるが, その内容も歴史的変遷も, ヨーロッパの次元の教育政策と類似している. しかしノルドプラスは北欧諸国・バルト諸国の統合を目標とはせず, あくまで国家間の多様性を保持したまま, 弱点を補い合い相乗効果を発揮するシナジーを形成する, 共同による国家間制度である. ノルドプラスは, 北欧諸国間における共同の原理によって, 競争的なグローバル教育市場を組み替えている.
著者
天池 洋介
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.138, pp.15-30, 2018-03

アトキンソンはイギリスにおける失業保険削減と所得の不平等化に対して,制度的要因を分析することでその原因と内在的な必然性を考察した.労働市場の2部門モデルでは,失業保険給付が「よい仕事」への雇用補助金となり,「よくない仕事」からの労働移動を促進することで,賃金と生産性の累積的上昇過程の形成が検討できる.そのためアトキンソンの失業保険制度は,ウェッブなどの産業進歩論の系列に位置づけることが可能である.