著者
瀬地山 葉矢
出版者
日本福祉大学子ども発達学部
雑誌
日本福祉大学子ども発達学論集 = THE JOURNAL OF CHILD DEVELOPMENT (ISSN:24352802)
巻号頁・発行日
no.14, pp.1-9, 2022-01-31

本稿では,里親養育における里親の支援ニーズと実際の支援方法について,既存の調査と先行研究に基づいて整理をした.支援方法のなかでも,とりわけアタッチメント理論に基づく子どもと親子関係の理解,および親子関係支援プログラムについて取り上げ,検討を行った.その結果,現場の特徴を踏まえたうえで,アタッチメント理論を適切に活用することにより,里子の行動を理解する手がかりが得られる可能性があること,また親子関係支援プログラムでは,子どもの行動やその対応方法について,ファシリテーターによるアタッチメントの視点に基づいた助言が,子どもの変化や里親のサポートにつながることが示唆された.さらにファシリテーターは,それ以外にも,里親の安全感・安心感を高め,視点の変換を養育者にもたらすことが示唆された.
著者
松山 有美
出版者
日本福祉大学子ども発達学部
雑誌
日本福祉大学子ども発達学論集 = THE JOURNAL OF CHILD DEVELOPMENT (ISSN:24352802)
巻号頁・発行日
no.12, pp.47-52, 2020-01-31

本研究は, 保育における多様性を論じるための試論として, 保育内容「言葉」に注目した. 特に, 米国における調査を通して, 保育における「多ような有りよう」は, いかに保障されうるのかを検討した. そこには, 子ども一人ひとりがどのような言葉を使っても・使わなくても, 発達が保障される保育の土壌と保育者の姿があることが明らかとなった.
著者
三橋 広夫
出版者
日本福祉大学子ども発達学部
雑誌
日本福祉大学子ども発達学論集 = THE JOURNAL OF CHILD DEVELOPMENT (ISSN:24352802)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.75-87, 2020-01-31

浅川巧は, 朝鮮民芸・陶芸の研究家・評論家だった. 朝鮮半島で植林事業を行う傍ら, 朝鮮半島の陶磁器と木工を研究・紹介した. 彼の墓はソウル郊外の忘憂里共同墓地にある. 当時の多くの日本人とは違って朝鮮人と対等につきあった人物の一人として知られる. 彼の生き方を学んで, 韓国コリョ高麗大生は「日本の誤った政策に対しては警戒するものの, 日本の人々まで嫌うのはやめなければならないと」という認識を獲得した.
著者
玉木 博章
出版者
日本福祉大学子ども発達学部
雑誌
日本福祉大学子ども発達学論集 = THE JOURNAL OF CHILD DEVELOPMENT (ISSN:24352802)
巻号頁・発行日
no.14, pp.51-74, 2022-01-31

本研究ではこれまで9 人の若手女性保育者にインタビュー調査を行い,様々な状況にある彼女達の語りから今後の保育者養成のヒントを得ようとしてきた.本稿では,本研究を研究史の中で高く評価した市原(2021)の知見を参照しつつも,市原との見解の違いを明らかにするため,他の同種の調査でも希な追跡調査を試みた.それらからは,保育者のキャリア形成における媒介的コミュニティの重要性を凌ぐ効果を持つパートナーの存在や,職場でのベテラン保育者のリカレント教育の重要性が明らかになった.また保育者達のキャリア形成における恋愛模様の変化や,パートナー等へ再帰的に依存する様相,つまり再魔術化とも看取できる様相が看取できた.そして今後の課題として,キャリアの広域化を可能にするため,敢えて遠回りするようなキャリア教育の実現を提案すると共に,遠回りの典型例として四大生と短大生とのキャリア意識の違いを明らかにする必要性を示唆した.
著者
三橋 広夫
出版者
日本福祉大学子ども発達学部
雑誌
日本福祉大学子ども発達学論集 = THE JOURNAL OF CHILD DEVELOPMENT (ISSN:24352802)
巻号頁・発行日
no.13, pp.75-88, 2021-01-31

「元始,女性は太陽であった」を書いた平塚らいてうは,日本のフェミニズム運動に邁進していった.当時の戸籍制度に囚われることもなく,女性の権利拡張をめざした.また,母性主義をめぐって与謝野晶子や山川菊栄らと論争をくり広げた. 日中戦争,アジア太平洋戦争期には軍部に協力したらいてうだったが,戦後は平和運動に一身を捧げたと言っても過言ではない.そうしたらいてうが一貫して追及したものは何か,#MeToo 運動が盛んな韓国高麗大生とともに考えた.
著者
江村 和彦
出版者
日本福祉大学子ども発達学部
雑誌
日本福祉大学子ども発達学論集 = THE JOURNAL OF CHILD DEVELOPMENT (ISSN:24352802)
巻号頁・発行日
no.13, pp.39-47, 2021-01-31

本研究は,保育者をめざす学生の表現領域における美術,芸術の捉え方を揺さぶる試みの実践研究である.保育者として,芸術表現の多様なあり方を知るきっかけとして,アール・ブリュットの鑑賞活動を取り上げた.アール・ブリュットとは,障害者が制作した絵画,彫刻などの自由な表現のことを指す.学生は,施設運営者や学芸員による解説のもとアール・ブリュットの作品鑑賞を行った.鑑賞後のコメントから学生が多くの重要な気付きをしていることが明らかになった.それは,①作品の制作過程そのものがその人の生きている証であり,自分の生活の一部であること,②作者に寄り添った職員との関係性そのものがアール・ブリュットであること,③これまでの美術観を超えて作り手を想像する行為は共感性を育むことができること,である.今後は,様々な作品を鑑賞する機会を設け,保育者に必要な「みる力」を養う造形教育の在り方を模索したい. his research is a practical study of an attempt to shake art and the way of thinking of art in the field of expression of students aiming to be childcare workers. As a childcare worker, I took up the appreciation activity of Art Brut as an opportunity to learn about various ways of artistic expression. Art Brut refers to free expressions such as paintings and sculptures made by people with disabilities. Students watched Art Brut work under the guidance of facility operators and curators. Comments after the appreciation revealed that the students had many important notices. It is (1) that the production process of the work itself is a living proof of the person and a part of one's life, (2) that the relationship with the staff who is close to the author itself is Earl Brut, and (3) this. The act of imagining the creator beyond the artistic view is that empathy can be fostered. In the future, I would like to provide opportunities to appreciate various works and explore the ideal form of modeling education that cultivates the "power to see" necessary for childcare workers..
著者
天池 洋介
出版者
日本福祉大学子ども発達学部
雑誌
日本福祉大学子ども発達学論集 = THE JOURNAL OF CHILD DEVELOPMENT (ISSN:24352802)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.23-38, 2021-01-31

PISA などの国際学力調査において,フィンランドは世界一の好成績を修めたとして注目されているが,その要因についてグローバル化の視点から考察したものは少ない.本論ではグローバル化の一つの形態である,北欧協力における初等・中等教育政策について,グローバル化の諸層と国境を越える福祉国家の視点から考察をした.PISA をはじめグローバル化し,競争が激化する教育政策の中で,EU はヨーロッパ地域において一元的にベンチマークを設定して,ヨーロッパの文脈を踏まえた独自の教育政策を展開している.さらに北欧協力は北欧地域において,平等を基調とした北欧の文脈に沿った初等・中等教育政策を行っている.それはベンチマークなどによる一元的な管理ではなく,各国の多様性を重視する北欧型福祉国家が,国境を越えて展開する教育政策である.
著者
三橋 広夫
出版者
日本福祉大学子ども発達学部
雑誌
日本福祉大学子ども発達学論集 = THE JOURNAL OF CHILD DEVELOPMENT (ISSN:24352802)
巻号頁・発行日
no.12, pp.75-87, 2020-01-31

浅川巧は, 朝鮮民芸・陶芸の研究家・評論家だった. 朝鮮半島で植林事業を行う傍ら, 朝鮮半島の陶磁器と木工を研究・紹介した. 彼の墓はソウル郊外の忘憂里共同墓地にある. 当時の多くの日本人とは違って朝鮮人と対等につきあった人物の一人として知られる. 彼の生き方を学んで, 韓国コリョ高麗大生は「日本の誤った政策に対しては警戒するものの, 日本の人々まで嫌うのはやめなければならないと」という認識を獲得した.
著者
天池 洋介
出版者
日本福祉大学子ども発達学部
雑誌
日本福祉大学子ども発達学論集 = THE JOURNAL OF CHILD DEVELOPMENT (ISSN:24352802)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.29-45, 2020-01-31

グローバル化によって, 教育が国際貿易における商品となり, 教育政策が人的投資戦略に転換している. EU では各国の教育政策が資格枠組みを通して統合化されるとともに, エラスムス計画をはじめとするヨーロッパの次元での教育政策が展開している. 北欧の次元の教育政策としてノルドプラスがあるが, その内容も歴史的変遷も, ヨーロッパの次元の教育政策と類似している. しかしノルドプラスは北欧諸国・バルト諸国の統合を目標とはせず, あくまで国家間の多様性を保持したまま, 弱点を補い合い相乗効果を発揮するシナジーを形成する, 共同による国家間制度である. ノルドプラスは, 北欧諸国間における共同の原理によって, 競争的なグローバル教育市場を組み替えている.