著者
佐伯 圭吾 車谷 典男 岡本 康幸 奥地 一夫
出版者
奈良医学会
雑誌
Journal of Nara Medical Association (ISSN:13450069)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.127-134, 2010-12-31

医療従事者が職場で経験する暴力被害は,精神的あるいは身体的に医療従事者に悪影響を及ぼし,医療の質を低下させる.医師が受ける暴力被害については,英国やオーストラリアのGeneralPractitionerや救急科医で調査されており,加害者側の危険因子としては飲酒や薬物中毒,精神疾患,被害者側の危険因子としては医療経験が短い,女性などが挙げられている.しかし,多くの調査は過去1年間の暴力被害の経験者割合を指標としており,その期間に繰り返し被害を受けた者のリスクが評価できていない.労働時間あたりの暴力被害発生率や発生率比を用いての危険因子の検討が今後の課題である.加えて,暴力による精神的被害としてPTSD症状やパーンアウト,職場満足度の低下が指摘されているが,妥当性が検証された質問票でそれらを定量化する研究が今後必要と考える.
著者
藪内 博史 三谷 典映 北垣内 佳予子 島岡 光美 建島 澄子 増谷 喬之 岡本 康幸
出版者
一般社団法人 日本臨床化学会
雑誌
臨床化学 (ISSN:03705633)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3-4, pp.187-191, 2004-12-31 (Released:2012-11-27)
参考文献数
7

脳性ナトリウム利尿ペプチドbrain natriuretic peptide (BNP) は, 血液検体保存中に分解されることが知られている。最適な検体保存方法を探るため, 種々の検体保存条件がBNP値に及ぼす影響について検討した。BNPの分解を最も抑制したのはEDTA+アプロチニン入り血漿で, 6時間後でほぼ90%以上の残存率を示した。EDTAだけでは, この効果は減弱した。血清中では急速なBNP値の低下がみられたが, EDTAとアプロチニンを加えた場合では, 冷蔵保存で良好な残存率を示した。“プロテアーゼ阻害剤カクテル”は, ほぼEDTA+アプロチニンの場合と同程度の効果を示した。カクテルの成分では, ロイペプチンが最も良好なBNP残存率を示した。これらの結果より, BNP測定のための検体を数時間凍結せずに保存する場合は検体へのアプロチニンの添加と冷蔵保存が必要であると考えられた。