著者
佐伯 圭吾 車谷 典男 岡本 康幸 奥地 一夫
出版者
奈良医学会
雑誌
Journal of Nara Medical Association (ISSN:13450069)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.127-134, 2010-12-31

医療従事者が職場で経験する暴力被害は,精神的あるいは身体的に医療従事者に悪影響を及ぼし,医療の質を低下させる.医師が受ける暴力被害については,英国やオーストラリアのGeneralPractitionerや救急科医で調査されており,加害者側の危険因子としては飲酒や薬物中毒,精神疾患,被害者側の危険因子としては医療経験が短い,女性などが挙げられている.しかし,多くの調査は過去1年間の暴力被害の経験者割合を指標としており,その期間に繰り返し被害を受けた者のリスクが評価できていない.労働時間あたりの暴力被害発生率や発生率比を用いての危険因子の検討が今後の課題である.加えて,暴力による精神的被害としてPTSD症状やパーンアウト,職場満足度の低下が指摘されているが,妥当性が検証された質問票でそれらを定量化する研究が今後必要と考える.
著者
辻本 達寛 藤井 久男 福井 博
出版者
奈良医学会
雑誌
Journal of Nara Medical Association (ISSN:13450069)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.91-100, 2010-08-31

ダブルバルーン内視鏡による小腸の内視鏡診断と治療の現況について,自験例を含めながら概説した.最近まで「暗黒大陸」,「未知の臓器」などと言われていた小腸は,カプセル内視鏡とダブルバルーン内視鏡の登場を契機に,内視鏡診断や内視鏡治療が可能となり,小腸疾患の診療体系が大きく変化してきている.当院では2008年5月よりダブルバルーン内視鏡,2009年4月よりカプセル内視鏡を導入し小腸疾患の診療を行っている.それに伴い新たな問題点も出現してきた.今後さらなる症例の集積と機器の改良に伴い,より効率的な診断と治療が可能になると思われる.ダブルバルーン内視鏡検査は安全性についても十分な配慮が必要でありその標準化が望まれる.
著者
藤本 眞一 森田 孝夫 中村 忍
出版者
奈良医学会
雑誌
Journal of Nara Medical Association (ISSN:13450069)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.9-14, 2009-04-30

奈良県立医科大学の目指す地域基盤型医療教育について概説した.本学では,平成18年度から「MDプログラム奈良2006」として,「6年一貫教育」,「成人教育学に基づいた教育」,「地域を基盤とした教育(Community Based Education」の3つの方針のもとにカリキュラム改革を進めてきた.本稿では,その重要な柱の一つである地域基盤型医療教育の中での新しい試みとして, 1)メンター制度, 2)クリニック実習, 3)ぬいぐるみ病院実習, 4)保育所実習, 5)ホスピス実習, 6)健康相談実習などを中心に説明している.これらの,新企画を実りあるものにするためには,関連諸施設の緊密なネットワークが必須である.今後,さらに地域基盤型医療教育を本学で発展させるために,e-learningシステムの開発も重要であると考える.