著者
高取 克彦 岡田 洋平 梛野 浩司 徳久 謙太郎 生野 公貴 奥田 紗代子 鶴田 佳世 庄本 康治 嶋田 智明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.52-58, 2007-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
33
被引用文献数
4

リハビリテーション専門病棟入院中の慢性期脳卒中片麻痺患者32例を対象に,Functional reach test(FRT)を応用した非麻痺側上肢の最大リーチ見積もり距離(Perceived reachability: PR)を評価し,実際のリーチ距離との誤差(以下,誤差距離)と入院期間中に生じた転倒回数との関係を調査した。PRはリーチ目標物が遠位から近位に接近する条件で評価し,誤差距離は実測値との差を絶対値で記録した。また両者の関連性を,他の要因を含めて検討するために,調査項目にはこの他,FIM移動項目点数,Functional reach距離(FR距離),下肢Brunnstrom's recovery stage,下肢感覚障害の程度,転倒恐怖心を含めた。解析は誤差距離と転倒回数との相関と,転倒の有無で分類した2群間の誤差距離とFR距離それぞれの比較,および上記評価項目の全てを含めた転倒関連因子の抽出とした。誤差距離と過去の転倒回数との関係にはピアソンの積率相関係数を用い,転倒関連因子の抽出には目的変数を転倒の有無に2項化したステップワイズ法でのロジスティック回帰分析を用いた。結果として,誤差距離と転倒回数には有意な相関が認められた。また転倒の有無を基準に2群化した場合,誤差距離は転倒群が有意に大きかった(p<0.01)。ロジスティック回帰分析の結果では,誤差距離,FIM移動項目点数,性別が転倒関連因子として採択された。回帰式を用いた判別分析による予測判別率は85%であり,転倒群の92%は6cm以上の誤差距離を有していた。以上のことから,片麻疹患者に対するFRTを応用したPR見積もり誤差の評価は,転倒ハイリスク患者を判別する簡便な評価法の1つとなる事が示唆された。
著者
徳久 謙太郎 松田 充代 松尾 篤 冷水 誠 庄本 康治 鶴田 佳世 宇都 いづみ 高取 克彦 梛野 浩司 生野 公貴 岡田 洋平 奥田 紗代子 竹田 陽子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.A0798, 2006

【はじめに】ハンドヘルドダイナモメーター(以下HHD)は簡易かつ携帯性に優れた等尺性筋力測定器であり、先行研究によるとその再現性・妥当性は良好であるとの報告が多い。しかし従来の徒手による膝伸展筋力測定方法では、女性検者のHHD固定力に限界があり、筋力が強い場合には正確に測定できないことや、被検者の体幹筋力が弱い場合には、転倒防止のため2人のセラピストが必要になることなど、臨床的有用性にはまだ問題がある。そこで今回、HHD固定力を強化し、臨床において安全かつ簡易に測定できることを重視した測定方法である「H固定法」を考案し、その男女検者間再現性や、測定にベルトを使用した場合との同時妥当性、及び測定時間の比較により簡便性を検討した。<BR>【対象及び方法】対象は、当院通所リハビリテーション利用者の内、中枢神経疾患の既往のない者25名(男7名、女18名)である。検者は、HHD使用経験のある理学療法士男女2名で、HHDはアニマ社製μTas MF-01を使用した。測定は当院で考案したH固定法にて行った。H固定法は、被検者の肢位を車椅子座位にて下腿下垂位とし、検者のHHDを装着した上腕を同側下肢にて補強することにより、HHDの強力な固定を可能にしている。測定は、各被検者に対し男性検者・女性検者・ベルト使用にて1回ずつ、測定順序はランダムに実施した。測定結果は測定終了時まで、被検者および検者に知らせないことにより測定バイアスを排除した。測定時間は、オリエンテーションの開始から測定終了時までの所要時間を記録者が測定し、同じく検者には測定していることを知らせなかった。統計学的解析は、男女検者間の再現性を級内相関係数(以下ICC)にて、H固定法とベルトによる測定との同時妥当性をピアソンの積率相関係数にて検討した。<BR>【結果】男性検者と女性検者間のICCは0.96であった。ベルト使用時と男性検者、女性検者とのピアソンの積率相関係数は、それぞれ0.94、0.92であった。女性検者のH固定法による測定時間は平均2分26秒、ベルト使用時は平均4分9秒であった。<BR>【考察】山崎らは女性が徒手にてHHDを固定できる最大重量は平均19kgであったと報告している。本研究においては、筋力が19kgを超える被検者が7人いるにもかかわらず、1回の測定でICCが0.96という良好な検者間再現性が得られた。これはH固定法によるHHD固定力が、従来の測定方法よりも優れていることが一因であると考える。また、先行研究において妥当性が確認されているベルト使用による測定と高い相関がみられたことから、H固定法による測定は妥当性を有しているといえる。H固定法を使用した場合の測定時間は平均2分26秒であり、実際の臨床場面においても簡便に測定が可能である。H固定法による等尺性膝伸展筋力測定は、再現性・妥当性・簡便性のある臨床的に有用な測定方法である。