著者
宇治 達哉 橋本 好和
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.133, no.6, pp.351-358, 2009 (Released:2009-06-12)
参考文献数
15
被引用文献数
2

タゾバクタム・ピペラシリン(ゾシン®静注用2.25,ゾシン®静注用4.5)は,β-ラクタマーゼ阻害薬であるタゾバクタムと広域抗菌スペクトルを有するペニシリン系抗生物質であるピペラシリンを力価比1:8の割合で配合した注射用抗生物質であり,2008年10月より販売されている.本剤は,各種のβ-ラクタマーゼ産生菌を含むグラム陽性菌および緑膿菌などのグラム陰性菌に対して強い抗菌力を有し,タゾバクタムの添加によって薬剤耐性菌の出現頻度が抑制されることが明らかにされている.これまでに国内で実施された敗血症,肺炎,複雑性尿路感染症および小児感染症を対象とした臨床試験においても,優れた細菌学的効果と臨床効果を示すことが証明されている.本剤は,1992年以降,海外において国内の適応症のほか,腹腔内感染症や発熱性好中球減少症などの重症・難治性感染症の標準治療薬として使用されてきた.本剤の用法・用量は,臨床分離菌に対する抗菌力と体内動態に基づくPK-PD解析の結果から設定され,1日最大投与量は18 g(4.5 g 1日4回:重症・難治の市中肺炎および院内肺炎患者)であり,緑膿菌などの重症・難治性感染症の原因菌に対しても有効性が期待できることが明らかにされている.健康成人を対象とした臨床薬理試験では,4.5 g 1日4回の7日間反復投与においてもタゾバクタムおよびピペラシリンの血漿中濃度に蓄積性は認められていない.国内の臨床試験において認められた主な副作用は,肝機能異常と下痢などの胃腸障害であり,本剤の安全性プロファイルは海外と本質的に差がなく,日本人においても安全に投与できるものと考えられた.タゾバクタム・ピペラシリンが使用できることにより,国内においても海外と同様に重症・難治性感染症に対してペニシリン系抗菌剤での治療が可能になり,耐性菌出現抑制にも寄与するものと考えられる.
著者
三宅 美行 西田 幸一 東谷 房広 宇治 達哉 兵頭 昭夫 石田 直文 釆見 憲男
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement2, pp.156-163, 1994-10-24 (Released:2011-08-04)
参考文献数
11

Tazobactam/piperacillin (TAZ/PIPC) のin vivo抗菌力を既存のβ-lactam系抗生物質と比較検討した。マウス全身感染治療実験においてTAZ/PIPCの治療効果はβ-ラクタマーゼ非産生のEnterococcus faecalisでpiperacillin (PIPC) と同等であったがβ-ラクタマーゼ産生株では優れていた。E. faecalisとEscherichia coliの混合感染およびStaphylococcus aureusとPseudomonas aeruginosaとの混合感染でTAZ/PIPCはPIPCより優れた治療効果を示した。尿路感染治療実験でTAZ/PIPCはP. aeruginosa単独, Proteus vulgarisとP. aeruginosaの混合感染共にPIPCより速やかな腎内生菌数の減少が観察され, 感染5日後ではPIPCより1/100以下に低下していた。Klebsiella pneumoniaeを用いた呼吸器感染治療実験でTAZ/PIPCはsulbactam/cefoperazone (SBT/CPZ) とほぼ同等の効力を示しPIPCより有意に優れていた。以上によりTAZ/PIPCは全身, 局所感染治療実験において優れた治療効果が認められた。特にβ-ラタマーゼ産生菌との単独, 混合感染において優れていた。
著者
宇治 達哉 古川 哲心 清水 千絵 兵頭 昭夫 石田 直文 戸塚 恭一 清水 喜八郎
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.305-310, 1994

<I>Klebsiella pnemonn</I>に対するgentamicin, cefodizimeおよびceftazidimeの再増殖抑制作用におよぼす白血球の影響を<I>in vitro</I>および<I>in vivo</I>で検討した。各薬剤の4MICで前処理した菌の増殖は白血球存在下で薬剤非処理菌に比べ抑制された。一方, マウスの敗血症モデルにおいて, 菌の増殖は各薬剤投与によりX線照射マウスに比べて正常およびG-CSF投与マウスで有意に抑制された。これらのことより, gentamicinとともにcefodizime, ceftazidimeにおいても生体防御因子との協力作用により, 再増殖抑制効果の増強が認められることが明らかとなった。
著者
古川 哲心 清水 千絵 宇治 達哉 三宅 美行 兵頭 昭夫 出口 浩一
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.310-317, 1993

Methicillin-resistant <I>Staphylococcus aureus</I>(MRSA)に対するCefodizime(CDZM)とMinocycline(MINO)のin vivo併用効果を検討した。Fractional effective dose indexによる併用効果の検討では, 両剤はセフェム高度耐性MRSAに対して相乗又は相加効果を示した。更にCDZM, MINO併用時においてマウス多形核白血球存在下で単剤よりも有意な増殖抑制が認められた。このことがMRSAに対しCDZM, MINO併用時において優れた治療効果が認められた理由の一つと示唆された。