著者
守田 貴弘
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.144, pp.29-53, 2013 (Released:2022-03-08)
参考文献数
35

本論文は,言語学におけるさまざまな分類の根拠を問うこと,特に,意味に基づく分類がいかにして正当化されるのか検討することを目的としている。言語学は科学の一種だと考えられている。しかし,言語学におけるすべての分類が「何らかの操作を行い,その操作に対する同質かつ恒常的な反応によって分類を決定する」という科学的要請に応えているわけではない。特に,意味的分類は検証可能な分類基準を設定することが難しく,科学性を保持することが困難であるにも関わらず,現在の言語研究ではほとんど不可欠である。では,何がこの意味的分類を正当化してくれるのだろうか。本論文では,意味的分類を支えてくれる条件として,(1)分類の動機が研究者の間で共有されることと,(2)当該の分類によって現象がより良く説明され,他の現象に対しても一定の説明力を有することの2点を提案する。