著者
松崎 哲也 安田 幸雄 野中 衆一
出版者
Japanese Association for Laboratory Animal Science
雑誌
Experimental Animals (ISSN:00075124)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.337-341, 1989-10-01 (Released:2010-08-25)
参考文献数
6
被引用文献数
5 8

スナネズミの毛色に関する遺伝学的研究を行った。まず, 白色について遺伝分析を行うために, 白色と野生色とを交配しF1, F2およびバッククロス個体を得た。その結果, F1はすべて野生色, F2では野生色と白色が3: 1に, またバッククロスでは1: 1に分離した。次に, 本研究で発見された黒色 (非野生色) の個体をもちいて野生色の遺伝分析を行った。野生色と黒色との交配でF1およびF2を得た。F1はすべて野生色を, またF2では野生色と黒色が3: 1に分離した。なお, 交配実験で得られた各世代における毛色の性比を調べたが偏りはなかった。以上の結果は, 白色は常染色体性の劣性遺伝子支配を, また野生色は非野生色に対して優性で常染色体性の遺伝子支配を受けることを示した。また, 黒色個体の出現によって, brown遺伝子座の存在が示唆された。以上を総合すると, スナネズミの毛色はマウス・ラットと同様に3種類の基本遺伝子座, a (non-agouti/agouti) , b (brown/black) およびc (albino/colored) で説明できることを強く示唆した。
著者
松崎 哲也 鈴木 博 神谷 正男
出版者
公益社団法人 日本実験動物学会
雑誌
Experimental Animals (ISSN:00075124)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.65-69, 1989
被引用文献数
3

1984年4月から6月にかけて奄美大島で捕獲したアマミノクロウサギ (<I>Penzalagus furnessi</I>, 以下クロウサギと略す) 雌雄各5匹を導入し, ケージ内飼育・繁殖を試みた。飼育中のクロウサギは神経質で音に敏感で警戒心が強く, 常に逃避行動をしめした。飼料は, ウサギおよびナキウサギ用の固形飼料を主に, 好食するサツマイモ, リンゴ, ススキ等の野草を若干与えた。クロウサギはカイウサギと同じく食糞行動がみられた。糞には硬い糞と軟らかい糞の2種があり, 後者を食した。ケージ内飼育のクロウサギは最大体重に達するまでに13ヵ月を要したが, 雌雄間に体重の差はみられなかった。繁殖には小型のケージ6個を並列に並べた6連式ケージを作製して用いた。交配は雌雄1: 1で行った。雌雄各5匹の種々の組み合わせで, 延べ74回の交配を試みた。そのうちの1組に妊娠が成立し, 1986年6月10日, 1仔の誕生をみた。この新生仔 (2日齢) は体重が100gであり, 目や耳が閉じ, 門歯が萌出していた。また, 新生仔は野生色の短毛を有しており, 腹部の皮膚は赤味を帯びていた。4肢の爪は伸びて, 先端は白く糸状に巻いていた。新生仔は生後4日で死亡したが, この時の体長は15cmであった。
著者
松崎 哲也 松崎 香苗 横畑 泰志 大坪 リラ 神谷 正男 ヤテス テリー
出版者
公益社団法人 日本実験動物学会
雑誌
Experimental Animals
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.395-401, 1994

キタバッタネズミ (<I>Onychomys leucogaster</I>) の実験動物化を目的としてニューメキシコ州で捕獲した野生キタバッタネズミの実験室内繁殖を試み, 以下の成績が得られた。キタバッタネズミを雌1: 雄1で長期間同居 (30日以上) させた場合の妊娠率は75.0%であったが, 短期間同居 (1~7日) では4.0%と低値であった。産子数は1~6匹の幅で, 平均3.5±1.2匹であった。哺育は比較的良好で, その離乳率は78.8%であった。雌の腟垢像から精子を確認する方法で調査した妊娠期間は, 25~31日, 平均27.4±2.0日であった。なお, 温湿度の一定している飼育室では周年繁殖が可能であった。
著者
松崎 哲也 小島 淳 北 逸郎 長谷川 英尚 千代延 俊 佐藤 時幸 林 辰弥
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.85, 2010

カリブ海バハマ沖と湧昇地域である東太平洋ペルー沖およびインド洋オマーン沖で掘削された第四紀堆積物コア中の石灰質ナンノ化石の上部透光帯種と下部透光帯種の相対量に連動した堆積有機物の窒素炭素同位体比及び水銀含有量の変動関係を検討した。バハマ沖では30‐130万年前の全期間で両同位体比と水銀含有量の変動領域に変化は見られない。一方、現在から50万年前までのペルー沖およびオマーン沖の堆積物からは、各々25万年前と20万年前を境に両同位体比と水銀含有量に明確な変化が観測された。これら両海域の結果は、25万年前と20万年前を境に透光帯の水塊構造変動を支配する海上風強度に大きな変化があったことを示唆している。このような堆積物コアの微化石量と同位体比および水銀量変動と気候変動との関係について発表する。
著者
小松崎 哲也 青木 正彦 市村 正明 平井 正幸
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.326, 2009

〈目的〉当院は第三次救急病院であり,緊急を要すること<BR>が多いので放射線情報システム(以下RIS)の使用上,不<BR>適切な処理をしてしまうことがみうけられた。今後フィル<BR>ムレスを迎えるにあたり,医療ミスを未然に防ぐために各<BR>技師がRIS を適切に使用・修正できることが必須とな<BR>る。よって,2009年2月より新たにRIS データ修正作業<BR>を業務として開始した。開始後から現在までの間で,RIS<BR>データ修正業務担当技師8名のRIS の使用・修正方法に<BR>対する理解度を調査し,今後の教育体制を図る。<BR>〈方法〉<BR>1.RIS データ修正業務担当技師8名が,2008年7月から<BR>12月にかけての不適切な処理をしたデータを収集・分類<BR>し作成したマニュアルをもとにRIS データ修正作業業<BR>務を行った。<BR>2.画像情報管理担当技師2名が過去の事例をもとにRIS<BR>の使用方法に対する問題10問,RIS データ修正方法に関<BR>する問題10問の記述式テストを作成した。<BR>3.RIS の使用が可能またはRIS データ修正が可能な回<BR>答を○,誤った回答を×とし,○を1点,×を0点とし<BR>た。<BR>4.作成した記述式テストをRIS データ修正業務担当技<BR>師8名に行ってもらった。<BR>5.画像情報管理担当技師2名が回答した技師の理解度を<BR>調査し,教育体制を図った。<BR>〈結果〉現在におけるRIS データ修正業務担当者8名中<BR>6名は17点以上だった。残りの2名は12点を以下だった。<BR>全問正解者はいなかった。<BR>〈考察〉全問正解者はいなかったが大半の技師は十分な知<BR>識を有していると判断できた。しかし,残りの技師は理解<BR>不足によるものや知識として蓄えられていないものであっ<BR>たため,従来のマニュアルの簡易化に加え,RIS のテキス<BR>ト作成による習熟を図るべきである。また,定期的なテス<BR>トによる個人の理解度を管理していくことも必要である。<BR>〈結語〉新たに始める教育体制の結果については学会当日<BR>に報告する。<BR>
著者
松崎 哲也 若菜 茂晴 江袋 進 伊藤 守 神谷 正男
出版者
公益社団法人 日本実験動物学会
雑誌
Experimental Animals
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.161-166, 1992

エゾヤチネズミ (<I>Clethrionomys rufocanus bedfordiae</I>) の実験動物化を目的として, 北海道当別町で捕獲された野生エゾヤチネズミを用いた実験室内繁殖の成績を報告する。エゾヤチネズミの繁殖成績について見ると, 2年間 (1987-1988) の成績では, 妊娠率は35.4%, 出産率94.6%, 離乳率は79.5%と比較的良好であった。産仔数は1-9匹と幅があり, 平均5.1±1.6匹であった。また, 妊娠期間は18-22日であり, 平均20.0士0.7日であった。以上の結果から, エゾヤチネズミの実験室内繁殖は, 既存の市販固形飼料の給与により回転輪を使用せずに可能であった。また, 今回系統化を進めるため, 実験室内繁殖に用いた野生エゾヤチネズミにおけるミトコンドリアDNAの変異を調べた結果, 切断パターンに4型が存在することが明らかとなった。
著者
浦野 聡 師尾 晶子 太記 祐一 草生 久嗣 中谷 功治 小笠原 弘幸 深津 行徳 益田 朋幸 村田 光司 田中 咲子 松崎 哲也 奈良澤 由美 KORKUT Taner
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

古代から中世にかけての地中海世界における聖域空間と社会の関係の変動を具体的に調査するため、リキア地方(トルコ南西部)のトロス遺跡の司教座聖堂に焦点を定め、発掘調査を行った。この聖堂は、古代の都市の主聖域に建造されており、それ以前の神殿や聖域との関係で重要な知見を得られることが期待されたが、キリスト教の国教化から50年ほど経った五世紀の半ばには完成し、その後、11世紀に至るまで、隣接する旧都市の主神殿クロノス神殿までの空間に教会付属の工房区域が形成され、都市の手工業の中心となったことが明らかにされた。