著者
安酸 建二 緒方 勇
出版者
日本管理会計学会
雑誌
管理会計学 : 日本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌 (ISSN:09187863)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.3-21, 2012-01-15

本稿の目的は,利益目標の達成圧力にさらされている企業において,自由裁量的支出費用の代表である研究開発費(以下,R&D費用)の削減を通じて「期中に」利益調整が行われているのかどうかを検証することにある.利益目標として注目するのは,経営者による利益予測値である.分析の結果,利益目標を達成できそうもない状況におけるR&D費用の削減を通じた利益調整が,売上高に占めるR&D費用予算の割合が大きい場合(本研究では5%以上)に見られることを発見した.これらの発見は,R&D費用の期中における削減を通じた利益調整の存在を示す証拠となる.
著者
安酸 建二
出版者
日本管理会計学会
雑誌
管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌 (ISSN:09187863)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.19-39, 2008-02-15 (Released:2019-03-31)

企業の価値創造を明示的な企業目標とする考え方が,広く普及しつつある.これに伴い,企業価値の創造を導く経営活動・経営努力に対して測定可能な目標を与えると同時に,価値創造のプロセスをモニターし,評価するための期間業績指標の開発に大きな関心が向けられている.特に,注目されている期間業績指標は,資本コストを控除した後の経済的利益である.経済的利益の有用性は,しばしば企業価値の理論モデルであるフリー・キャッシュフロー割引モデルとの整合性から説明されるが,経済的利益そのものが何を測定し,どのような情報を生み出しているのかについては十分に明らかにされていない.そこで,本稿では,経済的利益によって生み出される情報を明確にし,経営管理上の経済的利益の有用性を明らかにする.
著者
安酸 建二 梶原 武久
出版者
日本会計研究学会
雑誌
会計プログレス (ISSN:21896321)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.10, pp.101-116, 2009 (Released:2021-09-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

コスト・ビヘイビアに関連する近年の実証研究において,売上高の変動に対するコストの変動は,売上高が増加する場合と減少する場合とで非対称(asymmetry)であり,売上高が減少する場合のコストの減少率の絶対値は,売上高が増加する場合のコストの増加率の絶対値よりも小さいことが明らかにされている。このようなコスト・ビヘイビアは,コストの下方硬直性と呼ばれている。コストの下方硬直性が生じる原因として,経営者・管理者の合理的な意思決定の結果,コストが下方硬直的になる可能性―「合理的意思決定説」と本稿では呼ぶ― が指摘されている。すなわち,売上高の減少が一時的であり近い将来回復すると予測される場合,売上高の減少時での経営資源の削減と,売上高の回復時での経営資源の再獲得は,短期的に過剰な経営資源を維持することよりも,結果的に高いコスト負担につながることがある。この場合,経営者は,積極的にコストの低い方を選ぶという合理的な意思決定を行うと考えられている。しかし,先行研究では,経営者・管理者が抱く将来の売上高の見通しに関する情報が,分析モデルに組み込まれていないため,合理的意思決定説はこれまでのところ検証されていない。本研究では,日本企業が決算短信で要求される次期売上高予測を,将来の売上高の見通しに関する情報とみなして合理的意思決定説の検証を試みる。
著者
安酸 建二 乙政 佐吉 福田 直樹
出版者
神戸大学経済経営学会
雑誌
国民経済雑誌 (ISSN:03873129)
巻号頁・発行日
vol.198, no.1, pp.79-94, 2008-07

財務情報に過度に依存した経営によるさまざまな弊害が,先行研究においてしばしば指摘されてきた。この弊害に対する解決策の一つとして,業績管理システムに非財務指標を組み込むことが重要視されている。本稿では,まず,非財務指標をめぐる論点として,非財務指標が財務業績に対する先行指標になる可能性,および,戦略の実現に向けて経営者・管理者の意思決定や行動に影響を与える可能性の二つを取り上げ,非財務指標研究を業績管理システム研究の流れの上に位置づける。次に,非財務指標の可能性に関連する実証的証拠を検討する。最後に,今後の非財務指標研究の方向性を示す。
著者
安酸 建二
出版者
日本管理会計学会
雑誌
管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌 (ISSN:09187863)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.19-39, 2008

<p>企業の価値創造を明示的な企業目標とする考え方が,広く普及しつつある.これに伴い,企業価値の創造を導く経営活動・経営努力に対して測定可能な目標を与えると同時に,価値創造のプロセスをモニターし,評価するための期間業績指標の開発に大きな関心が向けられている.特に,注目されている期間業績指標は,資本コストを控除した後の経済的利益である.経済的利益の有用性は,しばしば企業価値の理論モデルであるフリー・キャッシュフロー割引モデルとの整合性から説明されるが,経済的利益そのものが何を測定し,どのような情報を生み出しているのかについては十分に明らかにされていない.そこで,本稿では,経済的利益によって生み出される情報を明確にし,経営管理上の経済的利益の有用性を明らかにする.</p>
著者
安酸 建二
出版者
日本管理会計学会
雑誌
管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌 (ISSN:09187863)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.19-38, 2006
被引用文献数
1

<p>企業価値の創造(value creation)を企業目標とするvalue-based managementの考え方の普及に伴い,会計上の利益や利益率だけでなく,価値創造の観点から定義される指標に注目が集まるようになっている.本稿では,企業価値の向上を導く経営活動に対して測定可能な目標を与えると同時に,価値創造のプロセスをモニターし,評価するために,全社的な業績指標としてどのような指標が適切かという観点から,キャッシュフロー,資本コスト控除後の利益,会計上の利益が持つ有用性を,これに関係する実証研究のレビューを通じて検討する.</p>