- 著者
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安酸 建二
梶原 武久
- 出版者
- 日本会計研究学会
- 雑誌
- 会計プログレス (ISSN:21896321)
- 巻号頁・発行日
- vol.2009, no.10, pp.101-116, 2009 (Released:2021-09-01)
- 参考文献数
- 12
- 被引用文献数
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1
コスト・ビヘイビアに関連する近年の実証研究において,売上高の変動に対するコストの変動は,売上高が増加する場合と減少する場合とで非対称(asymmetry)であり,売上高が減少する場合のコストの減少率の絶対値は,売上高が増加する場合のコストの増加率の絶対値よりも小さいことが明らかにされている。このようなコスト・ビヘイビアは,コストの下方硬直性と呼ばれている。コストの下方硬直性が生じる原因として,経営者・管理者の合理的な意思決定の結果,コストが下方硬直的になる可能性―「合理的意思決定説」と本稿では呼ぶ― が指摘されている。すなわち,売上高の減少が一時的であり近い将来回復すると予測される場合,売上高の減少時での経営資源の削減と,売上高の回復時での経営資源の再獲得は,短期的に過剰な経営資源を維持することよりも,結果的に高いコスト負担につながることがある。この場合,経営者は,積極的にコストの低い方を選ぶという合理的な意思決定を行うと考えられている。しかし,先行研究では,経営者・管理者が抱く将来の売上高の見通しに関する情報が,分析モデルに組み込まれていないため,合理的意思決定説はこれまでのところ検証されていない。本研究では,日本企業が決算短信で要求される次期売上高予測を,将来の売上高の見通しに関する情報とみなして合理的意思決定説の検証を試みる。