著者
武田 聖司 西村 優基 宗像 雅広 澤口 拓磨 木村 英雄
出版者
一般社団法人 日本原子力学会 バックエンド部会
雑誌
原子力バックエンド研究 (ISSN:18847579)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.23-38, 2012 (Released:2013-02-28)
参考文献数
40

TRU廃棄物の地層処分の安全評価において,多量のセメント系材料を使用した処分施設から溶出する高アルカリ性地下水がバリア機能へ影響を及ぼす可能性があることがとくに懸念されている.そこで,セメント系材料から溶出する高アルカリ性地下水の母岩への影響を,地下水流動場において地球化学と物質移行の連成解析でシミュレートし,TRU廃棄物の地層処分における高アルカリ性領域の拡がりに,二次鉱物の生成の有無がどのように影響するかを検討した.また,母岩の水理特性の影響の解析も実施した. ゼオライトの沈殿に関して,1) 実験での観察により沈殿する可能性がとくに高いと考えられるanalcimeとphillipsite(2種類)のみを考慮した場合や,2) それ以外で沈殿する可能性のある13種類のゼオライト(clinoptilolite(2種類),heulandite,laumontite,mordenite,erionite(2種類),chabazite(2種類),epistilbite,yugawaralite,stilbite,scolecite)も含めた計16種類のゼオライトを考慮した場合では,高アルカリ性領域の拡がりや二次鉱物の沈殿量に関してほぼ同様の結果が得られ,高アルカリ性領域(pH>11)は40 m程度までしか拡がらず,当該領域で0.1Vol.%以上の二次鉱物が沈殿し,いずれのケースでも主にゼオライトとしてはanalcimeとphillipsite,ゼオライト以外としてはsepioliteの沈殿が支配的であった.一方,3) それらのゼオライトの沈殿を考慮しない場合には,二次鉱物の生成量はゼオライトを考慮した場合に比べて少なく,高アルカリ性領域が広範囲に拡がる計算結果となった.このことから,二次鉱物としてゼオライトが生成するか否かが高アルカリ成分の拡がりや二次鉱物の沈殿量に影響することがわかった.また,地下水流速の影響をみるために10倍速い流速を設定した場合では,もとの流速を設定したケースより広範囲に高アルカリ成分が拡がることが示された.これは高アルカリ成分を中和する化学反応が,母岩に含まれる鉱物の溶解反応速度によって制限されているためと考えられた.
著者
酒井 隆太郎 宗像 雅広 木村 英雄
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.311-329, 2009 (Released:2012-02-01)
参考文献数
27
被引用文献数
1

広域地下水流動に関する評価手法確立のための調査の一環として、千葉県養老川流域の小流域において、河川流量および観測点付近の河川水、湧水、井戸水の水質、水素・酸素同位体比等の分析を行った。水文学的検討により、地下水流動特性と地質・地質構造との関係を把握し、地化学的検討から、流出域の地下水の起源や流動経路を推定を試みた。この結果、高透水性を持つ砂岩優勢互層(大福山を含む高標高部)で涵養された地下水の大部分は、地層の走向の方向に流動した後、Ca-HCO3(SO4)型地下水として下流域において流出するが、一部は深部まで流動し、Na-HCO3型地下水と混合した後に、低透水性の砂泥互層の亀裂等を通じて下流域において流出する可能性が推定された。