著者
実山 豊 市川 伸次
出版者
日本育種学会・日本作物学会北海道談話会
雑誌
日本育種学会・日本作物学会北海道談話会会報
巻号頁・発行日
vol.50, pp.1-2, 2009-12

ダイズとサツマイモの混植栽培は,相互に成育が促進され双方の収量が増加すると伝承的に言われており,またサツマイモ草姿の特徴から,混植対象に対するリビングマルチ的な雑草防除効果が想起されるが,「コンパニオンプランツ亅と言われる科学的な理由付けは未だ為されていない.冷涼な気候の北海道でも,サツマイモ塊根及び茎葉のバイオマス生産がある程度のぞめるならば,雑草防除のほか,主作物収量と併せ,総合的な単位面積当りバイオマス生産量の増加が期待できると考えた.そこで本試行ではその検証のため,有機栽培圃場にて予備試験的に小圃場配置を設け,ダイズ及びサツマイモを無農薬栽培で単植または混植し,その収量形質を比較した.更に,除草(手取り除草)する処理区を組み合わせ,雑草の繁茂による作物成育への影響について調査,加えて,作物収穫物内における内生成分を調べ,混植あるいは雑草の,収穫物の質的形質または養分競合状況への影響を調査した.
著者
実山 豊
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

ダイズの湿害は農業上重要な障害だが、その発生メカニズムには不明な点が多い。本研究では、水耕栽培法により過湿土壌の一様態「低酸素」を人工的に再現し、経験的に圃場耐湿性が既知な多種ダイズ品種を1ヶ月間栽培、その反応性を詳細に調査した。その結果、低酸素反応性と圃場耐湿性とに密接な関係性を検出し、湿害発生の主な理由の1つが低酸素であることを確認した。更に圃場耐湿性が弱い品種の中には、低酸素環境によって葉面積や細根の減少、根における吸水能力の減衰などの特徴的な反応を見出した。
著者
福岡 峰彦 岩間 和人 実山 豊
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.57-67, 2006-01-31
被引用文献数
1

陸稲品種間のかんばつ回避性の差異を, 大気飽差(VPD)が比較的小さい日本の圃場条件下において, 群落表面温度(T_c)から気温(T_a)を引いた値である葉気温較差(ΔT)を用いて推定できるかを検討した.主に根系の到達深度の違いから, かんばつ回避性が大きく異なることが想定される陸稲品種群を, 降雨を遮断し, 2001年には潅水および無潅水の, 2002年には無潅水のみの土壌水分処理をそれぞれ行った畑圃場において供試した.両年とも出穂までの約1ヵ月間に各6日, サーモグラフィー装置で測定したT_cと, 気温計で測定したT_aからΔT(T_c-T_a)を得, ほぼ同時にポロメーターで測定した気孔コンダクタンス(gs)との関係を調査した.また, 2002年には収穫期に測定した根系の到達深度との関係も調査した.2001年には, 測定期間中の平均値でみた品種の順位関係は, それぞれの土壌水分処理区において, ΔT(低い順)とgs(高い順)とで完全に一致していた.しかし, 潅水区におけるそれらの順位は無潅水区とは異なっており, かんばつ回避性を説明するものではなかった.2002年には, 全ての測定日および測定期間中の平均値で, ΔTに有意な品種間差異が認められ, 深根性の品種ほどΔTは低く, gsは高かった.以上のことから, 無潅水条件下におけるΔTは, 日本の圃場条件下において, 陸稲のかんばつ回避性を推定評価する指標として有効であると結論した.