著者
間宮 正光
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.11, no.18, pp.131-148, 2004

能登半島には鎌倉で確認される「やぐら」と類似した中世石窟が分布する。本稿の目的は,それらの集成を行いつつ「やぐら」と比較検討し,その発生を促した歴史的要因の考察にある。<BR>能登半島では,横穴墓の再利用や可能性のあるものを含めると、5ヶ所において石窟が確認される。造営の時期は,14世紀第2四半期から15世紀代で,"都市鎌倉"が隆盛する時期の遺構はなく,我が国における石窟造営の末期になり造られている。<BR>構造においては「やぐら」との相違は認められず,両者が極めて類似する遺構と判断されたが,内部施設及び埋葬施設を分析すると,同規模の「やぐら」に比べて石窟内施設の充実や外側入口上部の妻入り屋根形に代表される装飾性が明らかとなった。<BR>造営者については,石窟の分布が密教系寺院及び禅宗系寺院(臨済禅)の勢力地に位置する傾向があり,「やぐら」と石窟は基本的に同一の遺構であることからも律宗系あるいは臨済禅の人々の関与が想定できる。全体に造営数は少なく葬送観念を共有する集団の存在を暗示しており,特に臨済宗が教線をはる富山県氷見市周辺にまとまりをみせることは示唆的である。<BR>能登半島における石窟造営の歴史的要因を見通すと,この地域における石窟が主として鎌倉幕府崩壊後にみられることから,真言宗勢力が弱まり,禅宗(曹洞宗),更には浄土真宗の影響が浸透していく状況で,律宗や臨済禅などの南宋文化を引き継いだ人々の教線の強化,あるいは新たな展開を模索した結果であり,津・浦を媒体とする広域的な交通路を背景に,鎌倉地域で隆盛した「やぐら」の葬制を基調として成立したと考えた。そして,「やぐら」が寺院と密接な関係にあり総合的な宗教空間を構成するのに対して,能登半島では装飾性と機能を充実させることで石窟毎に一っの宗教的空間の創出を意図したところに,この地域における中世石窟の様相がうかがわれる。
著者
吉武 裕美子 勝身 俊之 南口 誠 西川 雅美 宮 正光 近藤 みずき 白仁田 沙代子 田辺 里枝 山本 麻希
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.31-42, 2016-07

科学技術へ関心の低い女性に科学技術を伝えるツールとして、かわいいと感じる要素を取り入れた科学実験・工作を考案し、その効果を調べた。女性が男性よりもより強く感じる感情である「かわいい」は、対象と関わりたい、仲良くなりたいという共感性や、社会的交流を求める感情に関連している。実験・工作を体験した中学生に対し「実験を体験していない人にも話したいか」というアンケート調査を行ったところ、普段の理科の授業や実験はあまり人に話さないのに対し、かわいいと感じる要素を取り入れた実験は特に女性にとって誰かに話したくなる実験であることがわかった。「かわいい」と科学の組み合わせは、実験実施者から体験者だけでなく実験体験者からその知人へと波及していく効果があり、より多くの人へ体験を伝えるという意味で、特に若い年代の女性にとって科学技術コミュニケーションの強力なツールになると思われる。
著者
敷島 良也 髙津 哲也 高橋 豊美 二宮 正光 坂井 伸司 一ノ瀬 寛之 森岡 泰三 佐々木 正義
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.1170-1175, 2012 (Released:2012-11-28)
参考文献数
21

えりも岬以東海域で刺網と定置網,桁網で採集したマツカワの成長特性を明らかにした。無眼側耳石の外縁は,4~7 月には不透明帯を持つ個体の割合が増加し,8~12 月には減少していた。透明帯外縁を指標として年齢群に分けたところ,夏季に全長が著しく増加したが,11~5 月にはほとんど成長しないことが判った。4 月 1 日を年齢起算日とし,全長を von Bertalanffy 式に当てはめた。えりも岬以西海域に比べて本海域の方が成長が速い要因として,夏季に成長に適した 20℃ 以下の水温に保たれることが考えられた。