著者
堀 真寿美 小野 成志 喜多 敏博 宮下 健輔 宮原 大樹 小林 信三
出版者
特定非営利活動法人サイバー・キャンパス・コンソーシアムTIES(附置研究所)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

発展途上国では,ITインフラの状況も知的財産権等の整備状況も多様であり,そうした状況が障壁となって,オンライン教育の技術移転を難しくしている場合がある.本研究の第一の目的は,ブロックチェーン技術を導入した学習支援システムを構築し,発展途上国の多様な事情に対して適切に対応できる可用性,プライバシー保護,セキュリティ確保に優れた学習支援システムを構築することである.具体的には,ブロックチェーン技術を応用し(1)ラーニングコイン,(2)コンテンツ流通,(3)コース開講,(4)eポートフォリオから構成される学習支援システムを開発し,発展途上国において実証実験を行う.また,この開発から検証までの過程を通じて, ブロックチェーン技術の課題を明らかにするとともに,オンライン教育における応用範囲と活用方法,そして新たなオンライン教育の手法とサービスを検討する.平成29年度は研究計画に基づき,コンソーシアム型ブロックチェーンであるHyperledger Fabricを利用して,SNSをユーザーインターフェースとする学習支援システムを開発した.開発システムでは,教師や学習者同士のSNSを利用した学習活動を学習成果としてブロックチェーンに記録する機能,記録された学習成果をまとめて電子書籍を制作する機能,そして制作された電子書籍をラーニングコインで購入する機能を実装した.本システムは,次年度より研究分担者所属機関において,実証実験を行う予定である.
著者
堀 真寿美 小野 成志 山地 一禎 宮原 大樹 宮下 健輔 坂下 秀 喜多 敏博
雑誌
インターネットと運用技術シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.65-72, 2017-11-30

インターネットは,その仕組み上,非集中型アーキテクチャの性格を強く有しているにも関わらず,今日ではアプリケーション層において集中管理の傾向が強く,誰もが何の束縛もなく自由に情報を発信できる機会を奪われているという批判がある.集中管理型アーキテクチャに起因する,多様性への対応,個人の自由度の低下に対して,ブロックチェーンに代表される非集中型アーキテクチャが今後のインターネットの重要な技術になるとみなされている.教育分野においても LMS (Learning Management System) などの学習支援システムは,集中型アーキテクチャが中心であり,我々はこれまでに,他に先駆けて,非集中型アーキテクチャを採用する学習支援システムである CHiLO (Creative Higher Education with Learning Objects) を開発してきた.本稿では,この CHiLO に,ブロックチェーンを採用することで,さらなる非集中型アーキテクチャ指向を実現し,電子書籍ストアなどの集中管理サーバーを必要としていた電子書籍の頒布,著作権に関する CHiLO Book の課題を解決するための概念実証システムを構築したことを報告する.