著者
宮崎 忠昭
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.140, no.2, pp.62-65, 2012 (Released:2012-08-10)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

毎年,季節性インフルエンザが流行し,高齢者,乳幼児,妊婦,および慢性疾患患者がインフルエンザを発症した場合は,急性脳症や肺炎などを合併し死亡するケースも報告されている.さらに,今後,病原性の高いインフルエンザウイルスや薬剤耐性ウイルスが出現し,それらの感染拡大の可能性があるため,効果的なワクチンや治療薬を早急に開発する必要がある.生体で産生されるインターフェロンは抗ウイルス効果を有するが,我々は,これまでに,インフルエンザAウイルスのRNAポリメラーゼがIPS-1(interferon-beta promoter stimulator 1)に直接会合し,インターフェロンの産生誘導を阻害すること,また,RNAポリメラーゼのサブユニットであるPB2にSiva-1というアポトーシス誘導分子が会合し,カスパーゼの活性化を介してウイルスの増殖を制御することを明らかにした.今回,インフルエンザウイルスの増殖を阻害する物質を探索した結果,漢方薬である銀翹散(ぎんぎょうさん)と麻黄湯(まおうとう)の成分がインフルエンザウイルスのプラーク形成阻害作用を示し,“新型ウイルス”と報道されたA/Narita/1/2009株やA/Kadoma/2/2006株に対しても高い阻害効果を示すことを確認した.そこで,銀翹散のエチルアセテート抽出物をさらにメタノール/クロロホルムで抽出した後,シリカゲルカラムで分画した結果,非常に高いプラーク形成阻害活性を有する画分が認められた.また,麻黄湯に関しては,メタノール残渣成分に高い阻害活性が確認されたため,現在,活性成分の分画を進めている.今後,これらの分画成分に含まれる活性物質を分離精製しその構造と薬理活性を明らかにすれば,インフルエンザ治療薬の候補物質となる可能性がある.
著者
宮崎 忠昭
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.363-368, 2012 (Released:2013-07-19)
参考文献数
31

インフルエンザは,高熱,頭痛,筋肉痛,腹痛,および下痢等の症状を伴う感染症であり,罹患者の症状が重篤化した場合,急性脳症や肺炎などにより死亡することもある。その原因となるインフルエンザウイルスに対しては,抗ウイルス作用を有するインターフェロンが生体防御に重要な役割を担う。我々は,ウイルスのRNAポリメラーゼが,このインターフェロンの発現誘導を阻害していることを見出した。さらに,ポリメラーゼにはSiva-1というアポトーシス誘導分子が会合し,ウイルス増殖および宿主細胞のアポトーシス誘導に働くことを明らかにした。これらの分子はインフルエンザの病態形成,およびウイルス増殖に重要であることが示唆される。最近,我々は銀翹解毒散および麻黄湯エキスにウイルスの増殖抑制効果があることを示した。そこで,現在,有機溶媒によりこれら成分を分画し,HPLC システムにより抗ウイルス活性物質の単離を進めている。
著者
門岡 幸男 小川 哲弘 高野 義彦 守屋 智博 酒井 史彦 西平 順 宮崎 忠昭 土田 隆 佐藤 匡央
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.79-83, 2019 (Released:2019-04-23)
参考文献数
19

Lactobacillus gasseri SBT2055株 (LG2055) の摂取による消化管を介した保健機能に関する研究を行った。内臓脂肪蓄積抑制作用については, はじめに, LG2055を含む高脂肪飼料を摂取したラットで腸間膜脂肪の脂肪細胞の肥大化が抑制されることを見出した。さらに, この知見を基にヒト介入試験を実施し, 有効性探索, 用量設定および最終製品での確認という一連の試験において, LG2055の摂取による内臓脂肪蓄積抑制作用を確認した。免疫調節作用については, マウスにおける小腸免疫グロブリンA産生促進作用およびインフルエンザウイルス感染防御作用を確認し, さらに, ヒト介入試験においてインフルエンザワクチン特異的抗体価およびナチュラルキラー細胞活性の亢進を確かめた。以上の成果の活用例として, 内臓脂肪蓄積低減作用に関する知見に基づいた特定保健用食品の許可取得および機能性表示食品としての届出があげられ, 実際の商品への保健機能表示が可能となった。