- 著者
-
加藤 照之
松島 健
田部井 隆雄
中田 節也
小竹 美子
宮崎 真一
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2002
北マリアナ諸島のテクトニックな運動を明らかにするためのGPS観測と2003年5月に噴火活動を開始したアナタハン島の地質学的な調査を実施した.GPS観測は2003年1月,同年7月及び2004年5-6月に実施,以前の観測データとあわせて解析を実施した.今回は,1回のみ観測が実施されていた北方の3島を中心とした観測を実施した.西マリアナ海盆の背弧拡大の影響が明瞭に見て取れるものの,北方3島については,繰り返し観測の期間が短いせいか,必ずしも明瞭な背弧拡大の影響は見られない.アナタハン島噴火の調査は2003年7月及び2004年1月に実施した.2003年7月の調査では,噴火はプリーニ式噴火から水蒸気爆発に移行し,一旦形成された溶岩ドームが破壊されたことが分かった.2004年1月調査で計測した噴火口は,直径400m,深さ約80mであり,火口底には周囲から流れ込んだ土砂が厚く堆積し,間欠泉状に土砂放出が起きていた.2003年7月には最高摂氏300度であった火口の温度が2004年1月には約150度と減少し高温域も縮小した.カルデラ縁や外斜面には水蒸気爆発堆積物が厚く一面に堆積しているものの,大規模噴火を示す軽石流堆積物層等は認められない.このため,アナタハン島の山頂カルデラの成因は地下あるいは海底へのマグマ移動であると推定される.この噴火についての地殻変動を調査するためにGPS観測を強化することとなった.火口の西北西約7kmに位置する観測点では,連続観測を開始したほか,2004年1月には島の北東部に新たな連続観測点を設置して観測を行っている.2003年1月と7月の観測データの比較では,水平成分がほとんど変化せず沈降約21cmが観測された.観測された地殻変動は主に噴火によるマグマ移動によって引き起こされたと考えられ,マグマ溜まりが噴火口の直下よりも島の西端にある可能性を示している.