- 著者
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宮西 香穂里
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2004
本研究の目的は、ジェンダーの視点から、プエルトリコの米軍基地と地域社会についての分析を試みることである。その際、交際・結婚、売買春および反基地運動の3領域に焦点を当てる。以上の研究目的にもとづいて、関連文献のレビューを行い、日本文化人類学会やAsian Studies Conference Japan (ASCJ)において報告した。今年度は、昨年行ったプエルトリコでの現地調査の資料整理を中心に進めた。特に、米海軍基地が撤退した後の基地の街、セイバや基地周辺に住む人々について調査を行った。セイバの基地周辺で、米軍を相手としたバーを経営する50代のプエルトリコ人女性は、基地があった頃の生活を振り返り、米軍基地との思い出を語った。また、彼女は、プエルトリコの東部、ビエケス島での基地反対運動について厳しく批判をした。インタビューの最後には、現在抱えるバーの深刻な経営問題について語り、基地撤退後の苦しい生活を話した。その他のインタビューからも、基地撤退後の基地の街で生きる人々の抱えるさまざまな問題が明らかになった。また、インタビューの資料整理に加えて、随時プエルトリコの米軍基地に関する文献調査を継続した。以上のように、米軍基地と基地周辺の地域社会の関係は、非常に複雑であり、多くの地域住民が米軍基地にさまざまなかたちで関係している。また、米軍基地反対運動を通じて、プエルトリコは沖縄やハワイなど米軍基地をかかえる様々地域とつながっていることがわかった。今後は、さまざまな立場で米軍基地と関係する人々の視点から、米軍基地と地域社会との重層的な関係を考察していきたい。