著者
小松 雄樹 野上 昭彦 家田 真樹
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.57-63, 2021-06-28 (Released:2021-07-02)
参考文献数
13

左室最上部(LV summit:Left ventricular summit)は特発性心室不整脈の好発部位の一つとして知られているが,アブレーションの成功率はあまり高くない.LV summitを走行する大心静脈遠位交通枝(communicating vein at the LV summit:summit-CV)の枝に挿入した2Fr電極カテーテルで記録される心内局所電位が心室不整脈中の最早期興奮部位であり,さらに同部位でexcellent pacemapが得られるLV summit起源心室不整脈の12誘導心電図の特徴は下方軸,非特異的脚ブロックタイプ(V1誘導のR/S波比0.67±0.33),I誘導の陰性波,aVR誘導よりもaVL誘導で大きなQS波などであった.最早期興奮部位を記録する2Fr電極を標的として,2Fr電極に対して解剖学的に最も近接する部位(右室流出路,大動脈冠尖,大動脈弁直下の左室流出路,あるいは大心静脈–前室間静脈内)からアブレーションを行い,14症例中10症例(71%)において最終的に心室不整脈が抑制された.2Fr電極カテーテルを大心静脈遠位の枝に挿入することにより,従来の手法では困難であったLV summitのマッピングが可能となり,LV summitにおける正確な不整脈起源を同定することができる.心室不整脈中の最早期興奮部位の2Fr電極に解剖学的に近接する部位からのアブレーションが有用である.
著者
福田 有希子 高月 誠司 三田村 秀雄 大橋 成孝 家田 真樹 三好 俊一郎 小川 聡 坂本 宗久 茅野 眞男 鈴木 亮 佐藤 千恵 黒島 義明 菊野 隆明
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement3, pp.18-23, 2004-07-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
2

症例は35歳の男性.失神,突然死の家族歴はない.平成15年4月1日午前9時3分頃,通勤途中の電車内で,突然意識消失.駅員が午前9時7分救急隊を要請した.モニター上心室細動(VF)で,救急隊により午前9時15分電気ショックを施行,午前9時24分再度VFとなり,2回めの電気ショックを施行した.その後洞調律を維持し,午前9時45分他院救急救命センターに搬送された.到着時意識レベルは,昏睡状態,JCS300,血圧135/82mmHg,心拍数116/min,洞性頻脈で,瞳孔は3mm大,対光反射を認めず,脳保護のため低体温療法を開始した.復温とともに意識状態は回復し,神経学的にも後遺症を認めなかった.心臓超音波検査,冠動脈造影,アセチルコリン負荷検査を行ったが,異常所見は得られず,当院へ紹介入院した.トレッドミル運動負荷試験,pilsicainide負荷試験では異常所見を認めなかった.6月10日に行った心臓電気生理検査で,Baselineでは不整脈は誘発されなかったが,isoproterenol負荷後の右室期外刺激(400/200ms)で,VFが誘発され,特発性VFと診断し,ICD(植え込み型除細動器)を挿入した.本症例は,医師の指示なく,救急救命士の判断で行った電気的除細動によって一命をとりとめ,さらに社会復帰し得た本邦第1例目の症例であった.