著者
三田村 秀雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.1284-1290, 2011 (Released:2013-01-19)
参考文献数
9
著者
三田村 秀雄
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.391-399, 2012 (Released:2015-07-16)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

欧米よりも大幅に遅れて,日本でも2004年にようやく,一般市民によるAEDの使用が認められた.その後は予想を上回る勢いで普及が進み,市民用AEDの累積台数も2010年末には25万台を超えた.今や目撃された心原性心停止に現場の市民がAEDを用いて除細動すれば,45%の例が救命され,その85%が社会復帰できる時代になった.しかし見落としてならないのは,目撃された心原性心停止のうちAEDが実際に使用されたのは3%に過ぎず,残り97%はAEDによる恩恵にあずかれていないことである.AEDの絶対数がまだまだ足りないことに加え,政策的,戦略的な設置が進められていないことも問題である.またこれまでのところ,AED使用例の半数近くは現場にたまたま居合わせた医療・救急関係者が使用しており,素人の一般市民が気やすく使える救命具にはなりきっていない.特に実働部隊として期待される若者を巻き込むためには,学校での教師・学生・生徒が一体となって行う救命訓練や,短時間の指導で救命のエッセンスを体得できるCALL & PUSHと呼ばれる簡易蘇生法の普及推進が重要である.AEDの出現は,これまで医療職に頼っていた救命という最も尊い重要な治療を,非医療職にアウトソーシングした画期的なパラダイムシフトといえる.現場の市民の協力とAEDのさらなる活用によって,長年低迷していた院外心停止全体の救命率を改善できる見通しが開けてきた.
著者
福田 有希子 高月 誠司 三田村 秀雄 大橋 成孝 家田 真樹 三好 俊一郎 小川 聡 坂本 宗久 茅野 眞男 鈴木 亮 佐藤 千恵 黒島 義明 菊野 隆明
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement3, pp.18-23, 2004-07-30 (Released:2013-05-24)
参考文献数
2

症例は35歳の男性.失神,突然死の家族歴はない.平成15年4月1日午前9時3分頃,通勤途中の電車内で,突然意識消失.駅員が午前9時7分救急隊を要請した.モニター上心室細動(VF)で,救急隊により午前9時15分電気ショックを施行,午前9時24分再度VFとなり,2回めの電気ショックを施行した.その後洞調律を維持し,午前9時45分他院救急救命センターに搬送された.到着時意識レベルは,昏睡状態,JCS300,血圧135/82mmHg,心拍数116/min,洞性頻脈で,瞳孔は3mm大,対光反射を認めず,脳保護のため低体温療法を開始した.復温とともに意識状態は回復し,神経学的にも後遺症を認めなかった.心臓超音波検査,冠動脈造影,アセチルコリン負荷検査を行ったが,異常所見は得られず,当院へ紹介入院した.トレッドミル運動負荷試験,pilsicainide負荷試験では異常所見を認めなかった.6月10日に行った心臓電気生理検査で,Baselineでは不整脈は誘発されなかったが,isoproterenol負荷後の右室期外刺激(400/200ms)で,VFが誘発され,特発性VFと診断し,ICD(植え込み型除細動器)を挿入した.本症例は,医師の指示なく,救急救命士の判断で行った電気的除細動によって一命をとりとめ,さらに社会復帰し得た本邦第1例目の症例であった.
著者
三田村 秀雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.998-1003, 2019-10-15 (Released:2020-12-31)
参考文献数
10
著者
三田村 秀雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.135-139, 2015 (Released:2016-02-15)
参考文献数
14
著者
三田村 秀雄
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.205-212, 2015 (Released:2016-03-11)
参考文献数
28
被引用文献数
1

年間7万人を超える心臓突然死のほとんどは心室細動によって起こるが,その予防が困難である現在,頼れる救命法は除細動器の活用である.ハイリスクであることが固定していれば植込み型除細動器(ICD),その評価が未定な時期には着用型自動除細動器(WCD)が利用できるが,正確なリスク評価は決して容易でない.さらに,突然死最大の原因である急性冠症候群の例をはじめ,多くの症例は直前まで受診していないか,リスクを予知されていないため,現場で迅速な除細動を施すしか救命を保証する術はない.今や,目撃された心原性心停止に対して現場の市民が自動体外式除細動器(AED)を使えば,50%が救命可能な時代に入ったが,今後も不特定多数へのAED対応体制を充実させつつ,特定グループ,さらには個人への集中救命対応の推進が求められ,その成果が期待される.
著者
三田村 秀雄
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.135-141, 2013

心房細動(AF)治療の薬理学的ターゲットはいまだに不明瞭で,しかも変化するため,既存の抗不整脈薬の効果は十分とはいえない.それでも,孤立性発作性AFに対してはレート治療よりもリズム治療が有効で,特にNa<SUP>+</SUP>チャネル遮断薬が奏功することは確認されている.発作時に自身で止めるためのpill-in-the-pocket(頓服)療法も,一定の注意を払えば有用である.持続性AFのリズム治療は心房筋のリモデリングのために困難であるが,様々な工夫が試みられている.除細動後に洞調律が長く続くほどリモデリングからの回復が進むため,その期間だけ抗不整脈薬で時間稼ぎをしたり,再発時に抗不整脈薬を早期に投与することによって,抵抗性のAFを停止できる場合がある.また,アミオダロンやベプリジルなどには,薬理学的に電気的リモデリングを逆転させる作用があることも認められている.最近では,デバイスやアブレーションなど非薬物治療の効果を補助するために,抗不整脈薬が併用されることもある.
著者
三田村 秀雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.53-53, 2007

2004年7月に自動体外式除細動器(AED)が一般に解禁されると,全国津々浦々にAEDの設置が拡がり,AEDによる救命例も続出している.AEDの設置場所として人の密集する所は特に効果的で,空港,駅,イベント会場,ホテル,ショッピングセンターなどへの配備が進み,救命例も報告されている.運動に伴う心室細動の出現も想定内のことであり,AEDが準備されたマラソン大会やフィットネスジム,プール,運動場,学校などで救命に成功している.その一方でAEDが未配備の新幹線内での心停止や,配備されていたのに使用されなかった学校の事例なども報告されており,いまだ啓蒙が十分とはいえない.またAEDによる頻拍診断が不適正な事例も報告され,そのアルゴリズムに限界のあることもわかってきた.AED後に心肺蘇生術を必要とする例も少なくなく,電気ショック後の自動診断に時間をとられる前に蘇生術を再開することが新しいガイドラインで勧められている.