著者
原山 智 大藪 圭一郎 深山 裕永 足立 英彦 宿輪 隆太
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.127-140, 2003-06-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
46
被引用文献数
11 16

飛騨山脈の隆起については,鮮新世後期から更新世初頭(2.7~1.5Ma)にかけて,最初の極大期があったとする点では,多くの研究者の意見が一致している.しかし,その後の第四紀の期間にテクトニックな隆起があったかどうかでは,意見が分かれていた.山麓の堆積物から隆起時期を推定する方法では,山脈の隆起がテクトニックなのか,アイソスタティックなのか,判定困難なため,本研究では飛騨山脈,爺ヶ岳一帯に分布する鮮新世後期~前期更新世の火山岩類の構造を解析した.この結果,これらの火山岩類はコールドロンをなしており,東に70°前後傾動していることが判明した.南方の高瀬川流域や槍穂高連峰での資料を加味すると,前期更新世後半(1.3Ma~)以降,飛騨山脈東半部の広い範囲で,東西圧縮場のもとでの挫屈による傾動・隆起を生じていることが明らかとなり,飛騨山脈の2段階にわたるテクトニックな隆起運動が明らかとなった.
著者
原山 智 高橋 正明 宿輪 隆太 板谷 徹丸 八木 公史
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.Supplement, pp.S63-S81, 2010 (Released:2012-01-26)
参考文献数
28
被引用文献数
2 7

飛騨山脈の北半部中央を南から北へ流下する黒部川の流域はいまだ踏査の行われていない地域が残る地質学的秘境の状態にある.近年に至っても様々な発見が相次いできており,その代表的な例が第四紀黒部川花崗岩の発見である.黒部川花崗岩は黒部川右岸中流域の祖母谷温泉から黒部ダム- 扇沢にかけてバソリスとして露出している.黒部川流域は日本国内ではもっとも多数の花崗岩貫入時期が確認される地域であり,ジュラ紀(190 Ma 前後),白亜紀前期末(100 Ma 前後),白亜紀後期初頭(90 Ma),白亜紀後期末(70 Ma前後),古第三紀初頭(65-60 Ma),鮮新世初頭(5 Ma),鮮新世(3 Ma),第四紀更新世前期(2-1 Ma)の貫入ユニットが確認できる.この流域には源頭部から黒部川扇状地に至るまで多数の温泉や地熱地帯が知られており,祖母谷,黒薙地域には80℃を超える高温泉がある.また黒部峡谷鉄道の終点,欅平から名剣温泉にかけてはマイロナイト化した花崗岩類中に熱変成した結晶片岩類が捕獲され,その帰属が議論されてきた.本見学旅行では,飛騨山脈の形成という視点で黒薙・鐘釣・祖母谷の温泉と,欅平-祖母谷温泉間の鮮新世-更新世の花崗岩および剪断帯を取り上げ,観察する.