著者
可児 瑞夫 可児 徳子 富松 早苗 新海 研志 山村 利貞
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.281-285, 1977 (Released:2010-03-02)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

フッ化物洗口法による洗口時に口腔内に残留するフッ素量を調べることにより, フッ化物洗口法の安全性, う蝕予防効果の期待, さらに洗口方法そのものの再検討を目的として本研究を行った。某小学校児童80名 (3年生, 男子44名, 女子36名) を対象とし, 正確に秤取したフッ化物洗口液 (500 ppm F-, pH5.0, リン酸酸性フッ化ソーダ溶液) 10mlを用いて30秒間洗口をさせ, 次に蒸留水10mlで10秒間の洗口を2回行わせた。洗口カップに残したフッ素量, 吐き出した洗口液中のフッ素量および水による洗口で吐き出されたフッ素量をそれぞれ定量した。定量にはオリオン社製イオンメータ (801型) およびフッ素イオン電極を用いた。その結果, 男子では与えたフッ素量の93.79%, 女子では91.52%が洗口時に吐き出されることが認められた。すなわち, 現行のフッ化物洗口法による口腔内残留フッ素量は男子では0.31±0.12mg (6.21%), 女子では0.42±0.12mg (8.48%) であることが示された。児童80名中81.3%に相当する65名は残留量が0.5mg以下の値を示した。また, フッ化物洗口後に水で口すすぎを行うと残留フッ素量は男子で0.16±0.12mg (3.13%), 女子では0.27±0.12mg (5.46%) となることが示された。以上のことから, 現在行っているフッ化物洗口法における洗口液のフッ素濃度および液量は洗口方法を正しく実施すれば全く安全であり, フッ化物洗口法は効果的なう蝕予防法であることが再確認された。
著者
可児 徳子 可児 瑞夫 富松 早苗 新海 研志 河野 節 久保 憲昭
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.38-45, 1977 (Released:2010-03-02)
参考文献数
17
被引用文献数
4

フッ化物洗口液のエナメル質におよぼす影響について検索する目的で, エナメル質粉末を材料とし, in vitroでフッ化物洗口液作用実験とフッ化物歯面塗布液作用実験を行い, これら2種のフッ素濃度の異なるフッ化物についてX線回折法により比較検討を行った。フッ化物洗口液としてリン酸酸性フッ化ソーダ溶液 (フッ素濃度: 500ppm, pH5.0), 歯面塗布液として酸性フッ素リン酸溶液 (フッ素濃度: 0.9%, pH3.6) を用いた。X線回折には島津製自動記録式X線回折装置VD-1A型を用い, 結晶性の変化と反応生成物の同定を行った。結晶性については半価幅の測定からScherrerの式によ9求められる値をパラメターとし, 反応生成物についてはASTM cardによる同定, peak shiftおよび1ine profileの変化の観察ならびにHallの解析法に準ずるsinθとβcosθの関係図から検討を加えた。その結果, 洗口液作用群では経時的に結晶性が向上し, かなり結晶性の高いFluorapatiteが多量に生成することが認められた。しかし, CaF2の回折線は検出されなかった。一方, 塗布液作用群では初期の結晶性向上と結晶性の低い多量のCaF2の生成がみられ, 水洗をくり返すことによりこのCaF2は流出することが認められた。以上のことからエナメル質とフッ化物の反応では, フッ素濃度のみでなく作用方法も反応生成物に影響を与えることが明らかとなった。すなわち, フッ化物洗口法のように低濃度のフッ化物を長期間繰返し適用する方法はエナメル質を脱灰することなく, より結晶性の高いFluorapatiteを生成し, エナメル質apatiteに好結果をもたらすことが示唆された。
著者
可児 徳子 可児 瑞夫 富松 早苗 新海 研志 河野 節 久保 憲昭
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.93-99, 1977 (Released:2010-03-02)
参考文献数
13
被引用文献数
1

フッ化物洗口液のエナメル質におよぼす影響について検索する目的で, エナメル質粉末を材料とし, in vitroでフッ化物洗口液作用実験とフッ化物歯面塗布液作用実験を行った。フッ化物洗口液としてはリン酸酸性フッ化ソーダ溶液 (フッ素濃度: 500ppm, pH5.0), 歯面塗布液として酸性フッ素リン酸溶液 (フツ素濃度: 0.9%, pH3.6) を用いた。エナメル質粉末に取込まれたフッ素量と, 浸漬蒸留水中に流出するフッ素, カルシウム, リン量の分析を行い, フッ素濃度の異なるこれら2種のフッ化物について比較検討を行った。フッ化物洗口液作用群では第1回の洗口液作用によってエナメル質粉末のフッ素量は約2000ppmを示し, 以後経時的に増加し, 8週では1.1%に達した。フッ化物塗布液作用群では作用直後のエナメル質粉末は12.76%のフッ素量を示し, 以後蒸留水交換を行うことにより流出し, 8週後には6000ppmとなった。蒸留水中に流出するフッ素, カルシウム, リン量から算出したCa/Fモル比, Ca/Pモル比によると, 洗口群ではCaF2生成はごくわずかであり, 比較的安定した形でフッ化物が取込まれ, 経時的にエナメル質の溶解性の減少することが認められた。一方, 塗布群では多量のCaF2の生成と流出がみられたが, 取込まれたフッ素の一部は安定した形で残留することが示唆された。