著者
久保 憲昭
出版者
長崎大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

【目的】遺伝子組換えマウスのほとんどがバリア区域以外で自家繁殖により系統維持されているため、免疫関連遺伝子の組換えマウスを中心に、ネズミ盲腸蟯虫の発生がたびたび見られるようになった。ネズミ盲腸蟯虫の駆虫方法について少なからず報告があり、駆虫薬による駆虫方法がほぼ確立されているが、ほとんどの場合、再発を繰り返しているのが現状である。簡便な駆虫方法としてイベルメクチン10倍希釈液の噴霧法が一般的であるが、副作用の報告が少なからずあるので、投与濃度の検討を行ってより安全で効果的な駆虫方法を探るために実験を行った。【方法】AKRマウスを購入後、ネズミ盲腸蟯虫感染マウスを1週間飼育した床敷き内で飼育、感染させた。実験用マウスの肛門周囲から粘着テープ法による検査で蟯虫卵が確認されたマウス(3匹/ケージ)に対して、駆虫薬(イベルメクチン)を水で10倍~100倍に希釈してハンドスプレーでケージ内に噴霧(1ml)した。この操作を1回/週、ケージ交換直後に3回行った。対照群として水のみを噴霧したマウスと効果を比較した。駆虫の効果を見るために、2回/週、4週間に渡り粘着テープ法にて検査を行った。また、1ヶ月目に剖検にて腸管内の成虫を確認した。【結果及び考察】今回の実験では、イベルメクチンの10倍、20倍、30倍、40倍希釈液投与群で完全に駆虫することができた。50倍希釈液については、粘着テープ法ではほとんど検出することができなかったため効果があるように思えたが、剖検で腸管内から成虫が検出された。60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、水(Control)は、粘着テープ法でほぼ毎回蟯虫卵が検出され、剖検でも腸管内から成虫が検出された。この結果から、ネズミ盲腸蟯虫は、イベルメクチン40倍希釈液を1回/週、3回行うことで駆虫できることが示唆された。また、希釈倍率が上がり薬剤の投与量が減ったことから、副作用も減少するものと推測される。
著者
可児 徳子 可児 瑞夫 富松 早苗 新海 研志 河野 節 久保 憲昭
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.38-45, 1977 (Released:2010-03-02)
参考文献数
17
被引用文献数
4

フッ化物洗口液のエナメル質におよぼす影響について検索する目的で, エナメル質粉末を材料とし, in vitroでフッ化物洗口液作用実験とフッ化物歯面塗布液作用実験を行い, これら2種のフッ素濃度の異なるフッ化物についてX線回折法により比較検討を行った。フッ化物洗口液としてリン酸酸性フッ化ソーダ溶液 (フッ素濃度: 500ppm, pH5.0), 歯面塗布液として酸性フッ素リン酸溶液 (フッ素濃度: 0.9%, pH3.6) を用いた。X線回折には島津製自動記録式X線回折装置VD-1A型を用い, 結晶性の変化と反応生成物の同定を行った。結晶性については半価幅の測定からScherrerの式によ9求められる値をパラメターとし, 反応生成物についてはASTM cardによる同定, peak shiftおよび1ine profileの変化の観察ならびにHallの解析法に準ずるsinθとβcosθの関係図から検討を加えた。その結果, 洗口液作用群では経時的に結晶性が向上し, かなり結晶性の高いFluorapatiteが多量に生成することが認められた。しかし, CaF2の回折線は検出されなかった。一方, 塗布液作用群では初期の結晶性向上と結晶性の低い多量のCaF2の生成がみられ, 水洗をくり返すことによりこのCaF2は流出することが認められた。以上のことからエナメル質とフッ化物の反応では, フッ素濃度のみでなく作用方法も反応生成物に影響を与えることが明らかとなった。すなわち, フッ化物洗口法のように低濃度のフッ化物を長期間繰返し適用する方法はエナメル質を脱灰することなく, より結晶性の高いFluorapatiteを生成し, エナメル質apatiteに好結果をもたらすことが示唆された。
著者
可児 徳子 可児 瑞夫 富松 早苗 新海 研志 河野 節 久保 憲昭
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.93-99, 1977 (Released:2010-03-02)
参考文献数
13
被引用文献数
1

フッ化物洗口液のエナメル質におよぼす影響について検索する目的で, エナメル質粉末を材料とし, in vitroでフッ化物洗口液作用実験とフッ化物歯面塗布液作用実験を行った。フッ化物洗口液としてはリン酸酸性フッ化ソーダ溶液 (フッ素濃度: 500ppm, pH5.0), 歯面塗布液として酸性フッ素リン酸溶液 (フツ素濃度: 0.9%, pH3.6) を用いた。エナメル質粉末に取込まれたフッ素量と, 浸漬蒸留水中に流出するフッ素, カルシウム, リン量の分析を行い, フッ素濃度の異なるこれら2種のフッ化物について比較検討を行った。フッ化物洗口液作用群では第1回の洗口液作用によってエナメル質粉末のフッ素量は約2000ppmを示し, 以後経時的に増加し, 8週では1.1%に達した。フッ化物塗布液作用群では作用直後のエナメル質粉末は12.76%のフッ素量を示し, 以後蒸留水交換を行うことにより流出し, 8週後には6000ppmとなった。蒸留水中に流出するフッ素, カルシウム, リン量から算出したCa/Fモル比, Ca/Pモル比によると, 洗口群ではCaF2生成はごくわずかであり, 比較的安定した形でフッ化物が取込まれ, 経時的にエナメル質の溶解性の減少することが認められた。一方, 塗布群では多量のCaF2の生成と流出がみられたが, 取込まれたフッ素の一部は安定した形で残留することが示唆された。
著者
久保 憲昭
出版者
長崎大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

【目的】蟯虫の感染経路については、感染マウスとの接触および感染マウス飼育ケージ内の床敷きを介して感染することは知られているが、それ以外の感染経路が存在するか否かは未だ不明である。今回、長崎大学先導生命科学研究支援センター動物実験施設において、ネズミ盲腸蟯虫の駆虫薬による駆虫後に再発を経験したこともあり、再発を防止するためには蟯虫卵の飼育室内分布状況を明らかにし、感染経路を探し出すことが必要と考え、実験を行うこととした。【方法】ネズミ盲腸蟯虫の感染を粘着テープ法により確認したAKRマウス♂9匹を実験に使用した。飼育方法は、木製チップを入れたプラスチックケージに給餌器兼用のステンレス製フタに飼料と給水瓶をセットして3匹ずつ3ケージに分けて入れ、一方向気流方式飼育ラック内で1週間飼育した。蟯虫卵分布の観察ポイントとして、ケージ本体、フタ、給水瓶、床敷き、給餌後残飼料、飼育棚、排気ダクト内粉塵、ケージ交換時着用手袋と実験着及び実験台、マウス固定器、電子天秤用体重測定カップの12カ所を設定した。蟯虫卵の検出は対象物により飽和庶糖液による浮遊法または粘着テープ法で行った。今回実験着以外は浮遊法で検査を行ったが、前処理として対象物を0.05%Tween20液1Lで洗浄後、その洗浄液を金網製ザルで濾した後、遠心分離機にて3000rpm10分間遠心して沈渣を検査に供した。【結果及び考察】今回の実験で蟯虫卵が検出されたのは、検出個数が多い順に、床敷き462個、ケージフタ33個、ケージ15個、飼育棚8個、マウス固定器・給水瓶3個、排気ダクト内粉塵2個、手袋・体重測定カップ・実験台1個で、実験着と給餌後残飼料は0個であった。今回の実験の結果から感染経路を推測すると、使用済みの床敷き、ケージ、フタを介して感染している可能性が高く、また、飼育棚、マウス固定器、給水瓶、排気ダクト内粉塵、手袋、体重測定カップからの感染も少なからずあることが示唆された。