著者
大井 信夫 三浦 英樹
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.45-50, 2005-02-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
7

北海道北部稚内市恵北における恵北層上部,ガラス質テフラ直下の泥炭層の花粉分析を行った.このガラス質テフラは,阿蘇4(Aso-4)に対比される.泥炭層の花粉群は,トウヒ属が優占,カラマツ属,モミ属,カバノキ属などを伴い寒冷乾燥気候を示唆する.この花粉群の特徴は,北海道の他地域のAso-4直下における花粉群と一致する.したがって,本地点の恵北層は後期更新世,最終氷期前半の堆積物と考えられる.Aso-4降下頃の恵北においては,カラマツ属が多産する花粉群ではカヤツリグサ科が,少ない花粉群ではミズバショウ属,ミズゴケ属が多産する.これは,スゲ湿原上にグイマツ林が成立し,ミズゴケ湿原にはミズバショウが伴うという湿地の局地的環境を示していると考えられる.
著者
奥野 淳一 三浦 英樹
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

南極周縁域の大陸棚の深度は,一般的な大陸棚の深度より著しく深いことが知られている.この原因は,南極氷床が地球表層における荷重として作用することで,その縁辺域を沈降させているという仮説がある.本研究では,地球の粘弾性的変形を考慮したグレイシャルアイソスタシーのモデルを用いて,南極氷床荷重を変動が大陸棚深度に与える影響を調査した.数値シミュレーションの結果,現在の氷床分布を表面荷重と仮定すると,南極縁辺域の大陸棚深度の異常を説明することができないことが判明した.しかし,過去に現在の氷床分布より拡大した時期があると仮定した場合,南極縁辺域の大陸棚深度異常を説明できる可能性を示した.
著者
三浦英樹
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
平成25年度北海道大学低温科学研究所共同利用研究集会『氷河変動の地域性に関する地理的検討』報告書
巻号頁・発行日
pp.38-44, 2014-05

現存する氷床である南極氷床とグリーンランド氷床が変動した場合、海面変化や海洋熱塩循環など地球環境に重大な影響を与えることが予想される。将来の南極氷床とグリーンランド氷床が、どのような条件でどのように融解し、それが地球環境や人類社会にどのような影響を与えるのかを検討するうえで、過去の2つの時代の氷床状態の復元は重要な基礎的情報を与える。ひとつは温暖化時代のアナロジーとなる「最終間氷期」、もうひとつが「最終氷期最盛期以降」である。本報告では、まず、現在の南極氷床とグリーンランド氷床が形成される気候条件と氷床の概況を示した上で、(1) 人工衛星測地データに基づく、地球温暖化時代である現在の極地の氷床変動の実態とその海面変化寄与量の定量的評価に関する最近の研究成果と問題点の紹介、(2) 野外地形地質調査に基づく、最終氷期最盛期の極地の氷床の拡大範囲と形状およびそれ以降の縮小過程の研究の概要と問題点の紹介、を行う。そのうえで、過去の氷床変動の研究が、どのように現在の氷床変動評価や将来の氷床変動と海面変化の予測に貢献するのかについて、その概略を説明する。
著者
菅沼 悠介 三浦 英樹 奥野 淳一 Yusuke Suganuma Hideki Miura Jun'ichi Okuno
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.85-90, 2012-07-31

宇宙線生成核種を用いた表面露出年代測定法は,地球表層における様々な現象を理解するために非常に重要な年代測定法である.この年代測定法には,年代決定精度が試料形状に依存するという特徴があり,試料採取の際に試料の厚さと形を高精度で測定することが必要となる.しかし,ハンマーやタガネを用いた従来の手法では,このような要求を満たす試料採取は時として困難であった.そこで本研究では,新たに携帯型電動カッターを用いた試料採取手法を提案する.この手法は,迅速かつ精密な試料採取および形状測定を可能とすることから,結果として年代測定精度の向上につながるものである.簡単な理論計算に基づき不完全な試料形状に起因する年代差を求めたところ,試料の採取深度が大きくなるにしたがって年代差が大きくなることが分かり,表面露出年代測定法における精密な試料形状測定の重要性が示された.
著者
山根 雅子 横山 祐典 三浦 英樹 前杢 英明 岩崎 正吾 松崎 浩之
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.329, 2008

近年開発された表面照射年代測定法は、二次宇宙線の作用により岩石の石英中に生成される宇宙線照射生成核種 (TCN) の濃度から、地表面が宇宙線に被爆した期間を直接求める手法である。この手法によって、これまで不確定性が高かった、南極氷床の最終退氷の時期が明らかになりつつある。発表者の研究グループは、東南極リュツォ・ホルム湾の露岩域から採取された岩石試料の石英に含まれる<SUP>10</SUP>Beと<SUP>26</SUP>Alの定量を行ない、この地域における氷床変動の研究を進めている。東南極のマック・ロバートソンランド、西南極のマリー・バードランド、南極半島においても、この手法を用いた最終退氷の時期に関する研究が行われている。TCNを用いたこれらの研究結果から、(1) 南極のどの地域も最終退氷の時期は完新世であること、(2) 東南極氷床は西南極氷床や南極半島氷床より気温の変化など、氷期の終焉によりもたらされた環境変化に対して、相対的に安定していたことが示唆された。
著者
富田 克利 上野 孝幸 河野 元治 三浦 英樹 北村 良介 大場 孝信
出版者
日本粘土学会
雑誌
粘土科学 (ISSN:04706455)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, 2003-03-28

第38次南極地域観測隊(1996-1997)によって採取されたリーセルラルセン山地域の地表から140cmの深さまでの試料について,粘土鉱物学的研究を行った.本研究では,粘土鉱物の種類や性質について,垂直的な変化や,風化の違いによる平面的な変化があるかを考察した.