著者
寺中 さやか 阿部 克昭 静野 健一 寺井 勝
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.94, no.3, pp.310-316, 2020-05-20 (Released:2020-12-03)
参考文献数
15

2009 年から2018 年までの10 年間に当院小児科において有熱性尿路感染症の診断で入院した患者320 名・339 例の尿より分離された腸内細菌科細菌341 株を対象とし抗菌薬感受性を調査した.入院時の年齢は日齢11~14 歳9 カ月(中央値:日齢174),男児195 例,女児144 例であった.菌株はEscherichia coli が297 株(87.1%)で大半を占めた.extended-spectrum β-lactamase(ESBL)産生菌は16 株(4.7%)であり,すべてE. coli であった.CTX 耐性率は2014 年までは2~4% と低値で安定していたが,2015 年以降耐性株が増加し,直近2 年は10% 以上を占めた.LVFX 耐性率も近年上昇傾向をみとめ2018 年は13% を超えた.一方でCMZ は感性率90% 以上を保っていた.TAZ/PIPC の感性率は2010 年以降95% 以上,MEPM の感性率は全期間100% であった. 小児における腸内細菌科細菌の抗菌薬耐性化は現時点では成人と比較すると深刻ではないといえるが,ESBL 産生菌やAmpC 過剰産生菌など多剤耐性菌の増加傾向をみとめており,今後も継続して抗菌薬感受性の推移を監視することが必要と考えられた.
著者
寺井 勝 地引 利昭 小穴 慎二 浜田 洋通 山本 重則
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

川崎病は乳幼児に発症する原因不明の血管炎である。当該研究者は,血中の単球遊走活性化因子MCP-1が急性期に血中に増加し,組織においても発現が増強していることを見出した。川崎病の治療薬であるガンマグロブリンは,MCP-1の生理活性を抑制することが判明した。またMCP-1をコードする遺伝子の転写開始部位から2518塩基上流のアデニン(A)とグアニン(G)のSingle nucleotide polymorphismとin vitroでの単核球によるMCP-1産生の関連をみたところ,G allele carrierが統計学的有意差をもってMCP-1を大量に産生することが判った。さらに急性期川崎病患者では,G allele carrierがAA homozygousよりも血中MCP-1を大量に産生することが判明した。同時に,日本人はG alleleを高率に有する民族であることを初めて明かにした。以上より,川崎病血管炎では,単球遊走活性化因子MCP-1が血管炎初期において炎症現揚の免疫担当細胞の遊走・活性化に重要な役割を果たしていること。さらに,日本人は外的な刺激に対してこのMCP-1を産生しやすい人種的特徴をもっていることが判明した。日本人に川崎病が多いことの背景になりうるかどうか,今後も更に検討が必要である。
著者
木村 翔 米田 千裕 橋本 尚武 浜田 洋通 寺井 勝
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.272-274, 2011-05-20 (Released:2015-04-10)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

Encephalopathy with reversible lesion of the corpus callosum splenium has a favorable prognosis, but that in 2009 influenza A/H1N1 is unknown. We report a case of clinically mild encephalopathy with a reversible lesion of the corpus callosum splenium in which 2009 influenza A/H1N1 virus was confirmed by laboratory tests. A 15-year-old Japanese girl seen at the emergency unit for loss of consciousness 18 hours after fever onset had been diagnosed with influenza A, and administered zanamivir. Diffusion-weighted magnetic resonance imaging (MRI) indicated lesions of the corpus callosum splenium, and electroencephalography showed slow basic activity, suggesting influenza A related to encephalopathy. She required intensive care with ventilation for two days. Her consciousness had become normal by day 6 after onset, and MRI findings improved on day 7. She recovered without adverse sequelae.