著者
寺井 弘文 今堀 義洋
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では省エネ・低コスト貯蔵の手段として,エタノール蒸気を用いた収穫後ブロッコリーの老化(黄化)抑制効果について,食品成分として重要なアスコルビン酸が関与する抗酸化機構を明らかにした.またエタノールは青果物の異臭や褐変など,ガス障害の原因物質であるため,処理がアルコール発酵に及ぼす影響をブロッコリーの他,バナナ,ピーマンについて検討した.エタノール蒸気処理は"エタノールパッド"(シリカゲルにエタノールを吸着したもの)により,青果物を入れた有孔ポリエチレン袋にパッドを封入することにより行い,アスコルビン酸に関する研究では20℃のもとで,アルコール発酵に関する研究では20から15℃のもとで貯蔵した.アスコルビン酸については,エタノールの蒸気処理により,対照区(無処理)に比較して,その含量の減少が抑制された.過酸化水素含量は,貯蔵期間5日を通じて処理区では無処理区に比較して低かった.また,Superoxide dismutase(SOD),Catalase(CAT),Ascorbate peroxidase(APX)の活性は貯蔵期間を通じて処理区は無処理に比べ高かった.これらのことから,処理によりブロッコリー小花の細胞内では酸化型アスコルビン酸,酸化型グルタチオンを還元型にしてアスコルビン酸-グルタチオンサイクルの働きを保ち,過酸化水素を効果的に消去していることが示唆された.またアルコール発酵に関する研究では用いた3種の青果物のうち,いずれも処理により組織中のアセトアルデヒド(AA)およびエタノール(EtOH)量の一時上昇が認められた.そのうち,ブロッコリーがAAおよびEtOH量とも最も多かった.バナナ果実で緑熟果と追熟処理果を比較した結果,処理によって緑熟果は組織中のAAおよびEtOH量が影響されなかったのに対して,追熟処理果ではいずれも一時増加がみられ,追熟の進展がやや抑制された.さらに,ピーマン果実でアルコール発酵代謝の酵素活性は処理による影響はなかった.
著者
水野 進 寺井 弘文
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.235-240, 1979

現在, 果実の鮮度保持剤(エチレン吸収剤)として市販されている, GP, NGP, AP-1,V-2について, そのエチレン吸収能力を検討した結果, 普通の包装状態(湿大気状態)では, NGPおよびAP-1のみが, エチレン吸収剤としての効力をあらわし, AP-1が, エチレン吸収能力(吸収速度と許容量)で最もすぐれていた。また, エチレン吸収剤を, ポリエチレン密封と併用することにより, 袋内がCA状態にあると共に, 袋内エチレン除去が可能であり, 単なるポリエチレン密封よりも, 果肉軟化の抑制, 内容成分の保持, すなわち, 鮮度保持に効果が期待出来るのは明らかである。