著者
上田 悦範 山中 博之 於勢 貴美子 今堀 義洋 Wendakoon S.K.
出版者
日本食品保蔵科学会
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.73-84, 2019 (Released:2019-08-07)

果実中のアルコール含量を測ることはその果実の香気評価に重要である。果実(バナナ,パイナップル,メロン,トマト,キウイフルーツおよびイチゴ)の未熟果,完熟果,過熟果からカットフルーツを作り,カット直後および3℃,24時間後のエタノールおよびメタノールの含量を測った。過熟のバナナおよびパイナップルから作ったカットフルーツは高いエタノール含量と酢酸エチルの生成も多く,オフフレーバーが発生していた。過熟のメロンからカットしたものも酢酸エチルの生成が多く,やはりオフフレーバーが発生した。一方トマトはカットすることにより3℃,24時間後,急激にメタノール含量が増え,エタノール含量もまたある程度増加し新鮮さが無くなった。イチゴは使用した栽培品種の内,1品種は24時間後および老化後(3℃,2日間)では高いエタノール含量を示し,酢酸エチルの生成も多くオフフレーバーが感じられた。キウイフルーツは熟度やカットにかかわらずエタノール,メタノールが低含量でそのエステル生成もみられなかった。完熟果におけるアルコールデヒドロゲナーゼ活性を調べたところ,高い活性を示す果実は,キウイフルーツを除き,アルコール含量も高かった。ペクチンメチルエステラーゼの活性はトマトが他に比べて非常に高く,トマトカット後のメタノール急増の原因と考えられる。エステルの生成能力はすべての果実で認められ(キウイフルーツは極低活性),過熟果実のオフフレーバーを加速していると考えられる。カット後すぐに供給され,消費される業種形態もあるので,室温でカット後,2時間までのアルコール含量変化を完熟のバナナ,トマト,イチゴで調べたところ,これらの果実は24時間冷蔵の結果と同じ傾向であった。完熟イチゴおよびトマトをカット後,直ちに測った場合,それぞれエタノールおよびメタノールは極少量検出されたのみであった。イチゴは両品種とも急激なエタノールの増加が起こり,オフフレーバーが認められた。一方,トマトでは遅れてエタノールが増加し始めたが,2時間までは新鮮さが保たれていた。
著者
譚 新平 上田 悦範 今堀 義洋 茶珍 和雄
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.683-688, 1999-05-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
25
被引用文献数
2

本研究ではツルレイシ果実の発育中ならびに貯蔵中の果実および種衣の色素の同定と量的変化を調べた.1. 果実の発育段階におけるカロテノイドの組成は, 果肉では主にルテインで, その他, β-カロテンとα-カロテンから構成されていた.種衣でも少量のカロテノイドを含み, 検出された色素組成は果肉と同じであった.この段階では, 果肉のクロロフィルとカロテノイドともに減少した.2. 果実の成熟段階では, 果肉のクロロフィルはほとんど消失したが, カロテノイドとしてクリプトキサンチンとリコピンが現れ, 特に前者が著しく増加して, 主要な色素になった.種衣の主なカロテノイドはリコピンで, その含量は最高64.7mg/100gに達した.3. 貯蔵中の果実の果肉におけるクロロフィル含量の変化は, 貯蔵温度が高ければ減少が速く, 一方, カロテノイド含量は温度が高いほど増加が大きかった.種子の種衣のリコピン含量は30℃で著しく増大した.
著者
寺井 弘文 今堀 義洋
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では省エネ・低コスト貯蔵の手段として,エタノール蒸気を用いた収穫後ブロッコリーの老化(黄化)抑制効果について,食品成分として重要なアスコルビン酸が関与する抗酸化機構を明らかにした.またエタノールは青果物の異臭や褐変など,ガス障害の原因物質であるため,処理がアルコール発酵に及ぼす影響をブロッコリーの他,バナナ,ピーマンについて検討した.エタノール蒸気処理は"エタノールパッド"(シリカゲルにエタノールを吸着したもの)により,青果物を入れた有孔ポリエチレン袋にパッドを封入することにより行い,アスコルビン酸に関する研究では20℃のもとで,アルコール発酵に関する研究では20から15℃のもとで貯蔵した.アスコルビン酸については,エタノールの蒸気処理により,対照区(無処理)に比較して,その含量の減少が抑制された.過酸化水素含量は,貯蔵期間5日を通じて処理区では無処理区に比較して低かった.また,Superoxide dismutase(SOD),Catalase(CAT),Ascorbate peroxidase(APX)の活性は貯蔵期間を通じて処理区は無処理に比べ高かった.これらのことから,処理によりブロッコリー小花の細胞内では酸化型アスコルビン酸,酸化型グルタチオンを還元型にしてアスコルビン酸-グルタチオンサイクルの働きを保ち,過酸化水素を効果的に消去していることが示唆された.またアルコール発酵に関する研究では用いた3種の青果物のうち,いずれも処理により組織中のアセトアルデヒド(AA)およびエタノール(EtOH)量の一時上昇が認められた.そのうち,ブロッコリーがAAおよびEtOH量とも最も多かった.バナナ果実で緑熟果と追熟処理果を比較した結果,処理によって緑熟果は組織中のAAおよびEtOH量が影響されなかったのに対して,追熟処理果ではいずれも一時増加がみられ,追熟の進展がやや抑制された.さらに,ピーマン果実でアルコール発酵代謝の酵素活性は処理による影響はなかった.
著者
上田 悦範 池田 英男 今堀 義洋
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.446-452, 1998-05-15
被引用文献数
5 1

夏季および冬季に養液栽培(Nutrient Film Technique : NFT)されたホウレンソウの品質および貯蔵性を調べた.1. 温暖地の高温期においてもホウレンソウの高温条件に適応する品種を選ぶことと, 培養液温度を冷却すること等により十分な生長が期待できた.2. 夏・冬季栽培ホウレンソウの収穫時のアスコルビン酸含量, クロロフィル含量とも差異はなかった.3. 貯蔵中(8℃)の外観よりみた鮮度の低下は夏季と冬季に栽培したものの間に差異はなく, 貯蔵12日程度で商品性の限界に達した.貯蔵中のアスコルビン酸含量は冬季で栽培されたものでは鮮度低下や, クロロフィルの損失に伴って徐々に低下するが, 夏季のものの貯蔵中のアスコルビン酸含量は鮮度低下よりも速く, 短期間(5日以内)に低含量になった.