著者
寺尾 英夫
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.470-484, 1979-05-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
63
被引用文献数
2 1

経口的鉄過剰摂取が原因とされている南アフリカ・バンツー語族における鉄沈着症(Bantu siderosis)は鉄が人体に及ぼす影響をみる上で好個な材料として, Idiopathic hemochromatosisやTransfusional hemosiderosisと比較されつつ研究がなされている.著者は東アフリカ・ケニアにおけるバンツー語族の剖検例(74例)にも高頻度(46%)かつ強度の肝鉄沈着を見出したので病理形態学的に検討した.肝組織内鉄沈着のあり方は,同一原因(経口的鉄摂取)と推定されるにもかかわらず肝細胞,Kupffer細胞ともにさまざまである.小葉内分布は肝細胞内鉄沈着は周辺部にKupffer細胞内鉄沈着はび漫性である.鉄が肝線維症や肝硬変の原因となり得るか検討したが鉄の一義的肝障害性を示唆する成績は得られなかった.肝硬変におけるnodularhyperplasiaや異型性のある再生結節に鉄沈着は少なく,癌細胞では全く認められないことから増殖性病変の前癌性病変としての意義についても考察した.
著者
堀 高志 藤岡 利生 村上 和成 首藤 龍介 末綱 純一 寺尾 英夫 松永 研一 糸賀 敬 村上 信一 柴田 興彦 内田 雄三
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.27, no.12, pp.2775-2781_1, 1985-12-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
27

胃憩室は消化管憩室の中では比較的稀なものであり,胃憩室の発生頻度は一般に0.01%から0.20%との報告が多い.胃憩室の多くは,噴門部小彎後壁寄りに発生し,体部大彎に発生するものは極めて稀である.また,大きさについては,広田らによれぼ2.1cmから3.0cmのものが最も多く,5.1cmを超えるものは6.9%にすぎない.更にその壁構造については,一般に真性憩室が多いとされている. 症例は48歳女性,胸やけ,心窩部痛,体重減少を主訴として入院した.上部消化管X線検査にて胃体部大彎側に巨大な憩室を認め,内視鏡検査にても同様の所見であった.保存的療法にても自覚症状改善しないために手術が施行された.憩室は11.5cm×8.0cmの大きさで,組織学的には仮性憩室であった.
著者
田代 隆良 重野 秀明 後藤 純 菊池 博 寺尾 英夫 那須 勝
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.859-866, 1989
被引用文献数
3

1981年10月から1988年10月までの7年間に当内科で経験した連続剖検200例中8例 (4.0%) に単純ヘルペスウイルス (HSV) 臓器感染を認めた. また, 肝臓のnecropsyを行った1例にHSV感染を認めた. 9例の年齢は35~70歳 (平均58歳), 男女比は5/4で, 原疾患は非ポジキソリンパ腫4例, 成人T細胞白血病1例, 多発性骨髄腫1例, 特発性間質性肺炎1例, 気管支喘息1例であり, 残りの1例には基礎疾患はなかった.<BR>9例中2例はHSV劇症肝炎が, 1例はHSV肺炎が直接死因だった. HSV感染臓器は食道が87.5%と最も多く, 舌62.5%, 肝臓33.3%, 脾臓, 膵臓, リンパ節25.0%, 肺, 副腎, 扁桃12.5%だった. 細胞の風船様膨化, 多核巨細胞, スリガラス状核 (full型核内封入体), Cowdry A型核内封入体などの特徴的組織像は潰瘍や凝固壊死巣の辺縁に認められた. 間接酵素抗体法による免疫染色で9例全例にHSV-1抗原が証明され, 電顕により2例でウイルス粒子が証明された.<BR>7例に重複感染が認められ, 病原体はサイトメガロウイルス5例, <I>Aspergillus</I>4例, <I>Candida</I>3例, 細菌3例だった.