著者
寺田 英司 中山 太郎 日置 恭司 斎藤 宗雄 奥平 博一
出版者
Japanese Association for Laboratory Animal Science
雑誌
Experimental Animals (ISSN:00075124)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.365-367, 1980-07-10 (Released:2010-08-25)
参考文献数
7
被引用文献数
2 3

Outbred hooded由来であるヌードラット (rnu/rnu) の, 免疫学的性格を検討した。胸腺依存性抗原 (ヒツジ赤血球) に対する抗体産生は, ヘテロ型 (+/rnu) ではIgM, IgG抗体ともに, 産生されるにもかかわらず, ホモ型 (rnu/rnu) ではIgM, IgG抗体とも, 一次反応, 二次反応でも検出されなかった。マウスsarcoma180の移植能を検討したところ, ヘテロ型では腫瘍の生着はみられなかったが, ホモ型では30日間以上生着し, 増殖することがわかった。T細胞にmitogenであるCoA, PHA-Pに対して, ホモ型の脾細胞は反応を示さなかった。以上のことから, rnu遺伝子をホモ型にもつこのヌードラットにおいては, T細胞機能が欠損していると結論した。
著者
小柳 義夫 伊藤 守 若林 とも 寺田 英司 田中 勇悦
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)は、AIDSの原因ウイルスである。しかし、このレトロウイルスがヒトにしか病気を起こさないために、その発病機構の解明ならびに治療薬の開発が大きく遅れている。我々は近年新しい方法として重篤な免疫不全マウスであるSCIDマウスにヒトの造血組織を移植し、ヒトのリンパ球細胞を構築する方法を用いて以下の結果を得た。SCIDマウスに正常人末梢血単核球を腹腔内に導入し、2週間後に100感染価のHIVを接種し、感染後1、2さらに3週間後いずれの時期にもウイルスの増殖をマウスの腹腔内、血漿中さらにリンパ節あるいは胸腺において確認した。確認の方法はPCR法によるウイルスDNAならびにRNA測定法、あるいはHIV-1p24抗原量を測定するELISA法である。その結果NSI型ウイルスすなわちマクロファージ好性ウイルスが増殖性が強く、その範囲は接種した腹腔内に限られるのではなく、リンパ節あるいは胸腺などのリンパ組織に広がっていることが明らかになった。この事実はNSI型ウイルスが初感染時には、まず生体内で増殖するという今までの知見を考えると、NSI型ウイルスに生体内における何んらかの特有な増殖能が備わっている可能性が考えられる。さらに興味あることに我々の使用したNSI型ウイルスは、このSCIDマウス内において優位に増殖しているにもかかわらず、ヒトCD4陽性細胞の特異的な減少は見られなかった。一方、SI型ウイルスによるCD4陽性細胞は減少した。すなわち、我々が開発したSCIDマウスによるHIV感染モデル動物により、明らかにウイルスの増殖性ならびにCD4陽性細胞を減少させる病原性を評価できることが判明した。さらにウイルス感染はリンパ節あるいは胸腺などのリンパ組織に優位に広がることより、この動物モデルは感染個体内におけるリンパ臓器の役割の解析に有用であると判明した。