著者
田中 重好 小倉 賢治
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, pp.117-123, 1994-08
被引用文献数
1

本研究は、1994年7月に発生した北海道南西沖地震時の青森県日本海沿岸住民の津波への対応行動を、災害文化論の観点から取り上げ調査したものである。本調査報告は、10年前の津波災害の被災経験が、10年後に発生した北海道南西沖地震の際にはどう生かされたのかを、災害文化論の観点から検討するものである。日本海中部地震時の避難行動と情報伝達に関して、次のような問題点が指摘された。第一に地震=津波連想がなかったため、津波からの避難行動が遅れたこと、第二に津波警報の発令が沿岸への津波到着後であり、発令に時間がかかりすぎたこと、第三に公的情報伝達ルートが作動しなかったことである。津波への対応行動は、個人レベルでみると、地震=津波連想、情報獲得と判断、避難行動という三つの段階に分けられる。アンケート調査結果からは、次のような点が明らかとなった。10年前に経験した日本海中部地震により、住民の地震=津波連想が高まっており、そのために、住民は津波情報を迅速に獲得した。この点で、日本海中部地震は地域住民に津波に関する災害文化向上に役立ったといえる。また、気象台からの津波警報の発令が前回よりも早く、津波警報の第一報をマスコミを通して聞いた人も多かった。さらに、避難の決め手となった情報からみれば、公的情報も効果を発揮している。このように、10年前の日本海中部地震時の反省は生きていることが分かる。しかし、津波対応に関して問題がないわけではない。それは、北海道南西沖地震の際の北海道奥尻島の場合を想定すると、現在のレベルの対応では遅すぎる。こうした点では、発災直後に津波の避難が必要かどうかの自己判断能力をさらに向上させることが必要となる。第二の防災上の課題は、日本海沿岸の過疎町村では、高齢化が進んでおり、津波情報をいち早く獲得しても、避難行動が迅速にとれない災害弱者が多く住んでいるという点である。今後、公的情報伝達システムの整備だけではなく、こうした点への対策も必要となってくる。
著者
原田 梢平 茂木 堯彦 里川 重夫 小倉 賢
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.233-243, 2022-11-01 (Released:2022-11-01)
参考文献数
50

カーボンニュートラル実現に向けて,CO2水素化による燃料油合成技術が注目されている。CO2を原料としたフィッシャー・トロプシュ合成にカリウムを添加したコバルト系触媒を用いることで,炭素鎖が成長し液体炭化水素が生成され,同時にメタン生成が抑制されることが報告されている。一方で,カリウム添加による活性変化の詳細は明らかにされていない。本研究では,赤外分光法,X線光電子分光法を用いカリウム添加コバルト触媒の表面状態を分析し,カリウムがもたらす効果を詳細に調査した。カリウム添加によりコバルト表面が還元雰囲気下でも部分的に酸化された状態を維持し,CO2吸着サイトとなる弱塩基点として作用することが明らかになった。カリウム添加コバルト系触媒では,反応ガスのH2/CO2比を1にすると,液相生成物選択率が53 %となった。また,得られた液相生成物には有用化学品原料となり得る1-アルコールや酢酸が含まれていた。