著者
有働 裕 小原 亜紀子
出版者
国立大学法人愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育創造開発機構紀要 (ISSN:21860793)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.55-61, 2014-03-31

本論では、音読を、文章理解、文章記憶に有効な活動と考え、聴解、黙読、つぶやき読みと比較検証した先行研究を考察している。その中で、音読活動は、他の活動と比較して、逐語記憶、音韻記憶、内容理解等において、それぞれ優位にあると認められる場合はあるものの、結果にばらつきがあり、検証の余地があるということが明らかになった。これは、対象が幼児から大人と幅広く、また、実験の課題として使用されている題材が単語から長文読解と多岐にわたるためであると考えられる。特に課題文の構造と音読の効果を検証することは、音読に適した教材選択につながると考える。また、音読の実践の状況を知るために、学校での音読授業の受け手の立場にあった学習者(大学学部生)を対象としたアンケートを実施した。その結果、学習者が受けてきた音読活動と音読指導に対して好意的に受け止められてはいるものの、「大きな声で読む」「適切なスピードで読む」等の形式に関する指導を受けた印象が強いという傾向が見られた。この好意的な受け止め方の要因をとらえるとともに、さらに内容理解に効果のある音読方法を模索したい。