著者
尾沢 達也 西山 聖二 堀井 和泉 川崎 清 熊野 可丸 中山 靖久
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.276-288, 1985 (Released:2010-06-04)
参考文献数
15
被引用文献数
3

皮膚保湿に於ける保湿剤の役割について, In Vitro, in Vivoでの検討を行なった。モルモットの角質層を用いた力学的検討の結果及びヒト皮膚を用いたIn Vivoの物理化学的, 生物化学的検討の結果, 次のことが知られた。(1) 皮膚保湿にとって水-保湿剤-油及びそのバランスは極めて重要であり3者は相乗的に機能を発揮する。(2) 保湿剤は皮膚保湿に重要な役割を演じており, 特に高分子系の保湿剤 (ヒアルロン酸などのムコ多糖類) と比較的低分子系の保湿剤 (グリセリン等のポリオール類やピロリドンカルボン酸などのNMF成分) の組合わせが, 相乗的に好結果を与える。(3) 理想的な組み合わせの皮膚保湿製剤は単なる物理化学的変化に止まらず, 皮膚に生物化学的変化をもたらすことを認めた。皮膚保湿製剤のモデルは皮膚保湿機構にあると解釈された。
著者
服部 尚樹 北川 香織 中山 靖久 稲垣 千代子
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.131, no.5, pp.326-332, 2008 (Released:2008-05-14)
参考文献数
60
被引用文献数
1

アミロイドβタンパク(Aβ)はアミロイド前駆タンパク(APP)からβ-およびγ-セクレターゼによってペプチド分解されて生成され,Aβオリゴマーとなって神経細胞毒性を生じる.細胞外のAβ沈着に先立って細胞内に主にAβ1-42が蓄積し,神経細胞傷害をきたす.細胞内Aβの起源として,細胞内産生よりも細胞外に分泌されたAβが細胞内に取り込まれる経路が優位であると考えられている.細胞外Aβによる神経細胞毒性機構としてNMDA受容体の細胞内取り込み増加によるシナプス機能障害やグリア細胞の活性化が報告されている.一方,細胞内Aβによる神経細胞毒性機構としてこれまでに,1)ユビキチン依存性タンパク分解の抑制,2)シナプス機能障害,3)過リン酸化タウタンパクの増加,4)カルシウム仮説,5)ミトコンドリア傷害とフリーラジカルの増加等が示されてきた.我々は,Aβによる神経細胞傷害の新たな原因としてホスファチジルイノシトール-4-一キナーゼ(PI4K)阻害作用を見出した.アルツハイマー病脳ではPI4K活性が約50%に低下しており,ホスファチジルイノシトール(PI)やホスファチジルイノシトール一リン酸(PIP)のレベルも低下している.塩素イオンポンプ(Cl-ポンプ)はその活性発現にPI4Pを必要とする事から,AβによるPI4K活性抑制に伴うPI4Pレベルの低下がCl-ポンプ活性を抑制し,神経細胞傷害をきたすかを検討した.病態生理濃度のAβ(1~10 nM)は,ラット脳細胞膜分画中のII型PI4K活性を阻害し,細胞膜のPIPレベルを低下させた.初代培養ラット海馬神経細胞にAβ1-40,Aβ1-42,Aβ25-35を投与すると,神経毒性の強さに平行して細胞内塩素イオン濃度[Cl-]iが上昇し,グルタミン酸興奮毒性が増強された.この機構に,神経細胞[Cl-]iの増加によるII型ホスファチジルイノシチド依存性キナーゼ(PDK2)活性低下とそれに伴うリン酸化Aktレベルの低下が考えられた.今後,Aβの新たな標的であるPI4Kを作用点とするAβ標的拮抗薬の開発が期待される.
著者
小山 純一 仲西 城太郎 佐藤 純子 野村 純子 鈴木 裕美子 増田 嘉子 中山 靖久
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.16-26, 1999-03-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
22
被引用文献数
4 3

健常な人にとっての一般的な皮膚の悩みとして, 皮膚表面に生じる落屑の発生があげられる。冬季の肌荒れによくみられる現象である。形態学的, 生化学的な検討により肌荒れの現象面については解明されてきたが, 落屑の発生メカニズムはまだ明らかでない。本研究では角層の接着, 剥離のメカニズムを明らかにし, どのような因子が影響しているのか, またどのようなスキンケアが有効かを検討した。角層中には2種類のセリン酵素が存在し, それぞれトリプシン様 (30kDa), キモトリプシン様酵素 (25kDa) であることがわかった。遺伝子解析によりキモトリプシン様酵素はすでに報告されている角層中のキモトリプシン様酵素 (SCCE) と一致した。トリプシン様酵素はIV型トリプシノーゲンと新奇なトリプシノーゲンであることがわかった。角層シートは緩衝液中で単一細胞にまで分散するが, 分散した角層からはデスモソームは検出されなかった。逆に熱処理した角層やセリン酵素阻害剤を添加した場合はデスモソームは分解されず, 分散も起こらなかった。ロイペプシンあるいはキモスタチンの単独では抑制効果はアプロチニンの半分でしかなかった。しかし, ロイペプシンとキモスタチンを混合した場合はアプロチニンと同程度の抑制効果がみられた。この結果からデスモソームが角層細胞の接着に大きな役割をはたしており, このデスモソームを2種類のセリン酵素 (トリプシン様, キモトリプシン様) が分解することにより角層細胞が剥離することが明らかになった。加齢によりトリプシン様酵素の活性が低下することが明らかになり, 加齢による角層の肥厚に酵素活性の低下が関与していることが示された。酵素によるデスモソームの分解は角層中の水分に影響されることが明らかになった。冬季の乾燥により角層中の水分が減少しデスモソームの正常な分解が妨げられた結果, 落屑が生じると考えられた。この研究により角層の剥離過程に二つの因子が関係することがわかった。一つは角層中の水分量である。酵素自体は正常であっても角層中の水分量が減少することにより酵素の働きが妨げられる。この場合は保湿剤が有効であった。もう一つは酵素活性そのものの低下であった。この場合にはデスモソームの分解を促進する薬剤が必要であった。ジカルボン酸類がデスモソームの分解を促進しその種の薬剤としての可能性が示唆された。
著者
中山 靖久
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会雑誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.642-656, 1977-11-25 (Released:2011-07-19)
参考文献数
64
被引用文献数
1