著者
小岩 俊行
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.9-15, 2002-02-16
被引用文献数
2

日林誌84:9〜15,2002カラマツ根株心腐病菌の生態を明らかにするために,36〜41年生の3林分で腐朽伐根調査を行った。調査林分では,カイメンタケとハナビラタケが病原菌として多く分離された。病原菌の子実体は梅雨期から初秋まで発生し,胞子の飛散は比較的長期間にわたると推察された。腐朽伐根の掘取り調査を行ったところ,腐朽伐根には約10本の主根がみられ,そのうち1〜2本に侵入口となった傷がみられた。侵入口の種類は,5タイプに分けられ,開口・大型の傷,根切れ・根腐れタイプが多かった。侵入口の形成部位は根株と主根が大半を占め,いずれの場合も深さ30cm以内の浅い位置であった。侵入口の年輪調査によって,病原菌の侵入時期は,樹齢7年〜31年生と推察された。侵入口となった伐根の傷は,石レキあるいは風が原因と推察された。
著者
河原 孝行 平岡 裕一郎 渡辺 敦史 小岩 俊行 滝 久智 田端 雅進
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

ウルシは日本の伝統工芸を支える漆を得るための重要な特用林産物である。文化財修復など国産漆の需要は高まっており、安定供給が求められているが、その伝統に反し、ウルシの育林技術は確立されていない。健全な育苗を行っていくために、ウルシ林がどのような繁殖構造を持っているか遺伝解析によって検討した。<br> 北海道網走市及び岩手県二戸市浄法寺町に植栽されるウルシ林を材料として用いた。SSR10座を用い、multiplexによるPCR増幅後ABI prism 3100XLにより遺伝子型を決定した。 網走の2林分において6mx6m内の全ラメットを採取し、クローン構造を決定した。成長良好箇所はラメット数が少なく(134)、22のマルチジェノタイプ、不良個所はラメット数が多く(223)、24のジェノタイプが検出された。この結果、約20年での萌芽枝の最大伸長は4m前後であり、自然実生による更新も行われていることが示された。また、上伸成長がよい個体では萌芽枝を発生しないか少ないことが示された。 <br> 両地域の代表的な母樹を選び、父性分析を行ったところ、隣の林分からの遺伝子フローもあることが示された。