著者
藤田 裕子 喜多 一馬 小島 一範
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.71-80, 2022-10-01 (Released:2022-10-01)
参考文献数
20

本研究の目的は,リハビリテーション関連職(以下,リハ職)におけるジェンダーバイアスについてアンケート調査を行い,どのような種類のジェンダーバイアスがみられるかを予備的に調べることである.方法としては,国内の現役リハ職に対し,インターネット上でのアンケート調査を行った.設問は,基本的属性,独自に作成したジェンダーバイアスに関する18 の設問項目,ジェンダーや働き方に関する意見や体験談に関する自由記載欄とした.統計学的処理では,1)設問項目ごとの対象者の基本的属性間の群間比較,2)ジェンダーバイアスに関する設問における各設問項目間の相関,3)「男性」と「女性」という言葉以外が同内容の設問間における2 群間の差の比較を調べた.結果として,1)では,年代,所属,経験年数,同居家族においていくつかの設問項目で有意な差がみられた.2)では,男女間の大学院進学についての設問間に強い相関が,育児中の男女スタッフの急な休みに対する考え方の設問間に中等度の相関が見られた.3)では,2 群間に有意な差がみられた.自由記載欄では,全体としては男性・女性それぞれが感じた性別・カテゴリ分けされた他者からの心ない言葉や扱いに関する内容が多く記載された.これらから,リハ職は働き方やキャリア,研究会や学会参加,バイザー業務や指導係,大学院進学に対してジェンダーバイアスがあることが示唆された.
著者
中山 陽平 喜多 一馬 小島 一範
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.D-39, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに】日本は2040 年までに医療福祉職の人材が200 万人超の増加が必要と経済財政諮問会議で発表された。その中で,数だけでなく質の確保が急務とされている。そして,質の確保のためには思いやりを持つ重要性が示唆されており(福間2012),これからの医療福祉職には思いやりを育む教育や環境の整備が課題になる。これは在宅分野の理学療法士でも同様である。しかし,思いやりの育み方については,教育関連における報告は多いが(山村2012,三浦2013),医療福祉職における報告は見当たらない。他方,思いやりは様々な人間関係の中で育まれるものであり(植村1999),職員と上司の関係性はその一つとして重要と考えられる。本研究の目的は,職員が上司から感じている思いやりと,職員が利用者に意識している思いやりとの関係性を明らかにすることである。【方法】対象は,本法人のうちデイサービス(3 施設)と老人ホーム,居宅介護支援事業所のいずれかに所属する職員33 名(男性7 名,女性26 名,年齢47+12.4 歳)とした。なお,職員の職種は,ヘルパー,介護福祉士,看護師,柔道整復師,理学療法士であった。対象者には,紙面によるアンケート調査を実施した。アンケート項目は,上司から感じている思いやりについて「上司はあなたが困っている状況を話すと理解してくれる」など4 つの設問を設定した。利用者に意識している思いやりについては「あなたは利用者が困っている状況を理解しようと意識している」など4 つの設問を設定した。各設問に対し,①そう思う(1 点)から,⑤そう思わない(5 点)の5 件法にて回答を得ることとした。分析方法は,回答を点数化し,上司からの思いやりの合計点と利用者への思いやりの合計点との関連を,スピアマンの順位相関係数を用いて検討した。【倫理】本研究はヘルシンキ宣言に基づき,研究の趣旨,目的,内容,方法などの説明を行い,対象者の同意を得た上で実施した。なお,対象者の個人情報が特定されぬよう,アンケートの回答は無記名にする等の配慮を行った。【結果】上司からの思いやりの合計点の中央値は6(5 ‒ 8),利用者への思いやりの合計点の中央値は6(5 ‒ 7)であった。スピアマンの相関係数が中等度の正の相関(r = 0.478, p < 0.05)を認めた。【考察】結果より,職員が上司から感じている思いやりと,職員が利用者に意識している思いやりには,関係性があることが示唆された。これは,思いやりを感じる力と思いやりを持つ力は共感する能力に起因して生じた可能性がある。上司からの思いやりを感じるには,前提条件として,上司が思いやりを持っていることに対する共感が必要となる。また,他者への思いやりは共感から生じるものであり(満野ら2010),利用者への思いやりも共感をもつことが前提となる。つまり,2 つの質問の性質は両方とも他者への共感に基づくものであったといえる。よって,思いやりを感じる力を育むことは,他者に思いやりを持つ力を育むことと同意となる。思いやりは後天的な遺伝的要因以外の部分のほうが影響するといった報告がある(Varun Warrier 2018)。また,米グーグル社は2012 年から始めた研究(プロジェクトアリストテレス)でも思いやりに近似する心理的安全性がサービスの質を向上させると結論づけ,その形成に効果が証明されているマインドフルネスなど内観的プログラムを開始している。このような報告を応用し,在宅分野の理学療法士を含む医療福祉職における思いやりを育む教育を実践し,その効果を検証することが今後の課題である。【結論】職員が上司から感じている思いやりと,職員が利用者に意識している思いやりには,関係性を認めた。
著者
小島 一範 山本 亜希江 鎌井 大輔 槌谷 祐二 尾嶋 紗季 仕田中 美穂 渡邉 進
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.315-319, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
19
被引用文献数
1

〔目的〕訪問リハビリテーション利用者における,足趾把持力のバランス能力に対する重要性を検討するためにこれらの間の関係を調べることとした.〔対象〕立位姿勢を30秒以上とれる訪問リハビリテーションのサービスを利用している者33名とした.〔方法〕足趾把持力と開眼での片脚立位時間を左右ともに3回測定しその中での最大値を採用した.足趾把持力と片脚立位時間との関係をSpearmanの順位相関係数により解析した.〔結果〕足趾把持力と片脚立位時間との相関係数はr=0.776と正の高い値を示した.〔結語〕今回明確化された足趾把持力と片脚立位時間との高い相関は,足趾把持力のバランス能力における重要性を示す.