著者
鈴木 哲 稙田 一輝 渡邉 進
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.699-702, 2011 (Released:2011-11-25)
参考文献数
12

〔目的〕ベッドのギャッジアップ角度が脊椎カーブに与える影響を座位姿勢と比較し検討することを目的とした.〔対象〕健常成人10名とした.〔方法〕ベッド上背臥位(ギャッジアップ0°,30°,60°)と2座位姿勢(脱力座位および直立座位)の脊椎カーブをSpinal Mouseを使用し測定し5条件間で比較した.〔結果〕腰椎カーブは30°,60°のギャッジアップ角度で中間位を超えて後彎位をとり,その程度はギャッジアップ0°および直立座位と比べて大きかった.〔結語〕脊椎カーブの観点から考えると,脊椎圧迫骨折患者の離床の際には30°以上のギャッジアップ角度をとらせるより,直立座位を取らせる方が疼痛を増強する可能性が少ない場合があり得る.
著者
末廣 忠延 渡邉 進
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.309-313, 2012 (Released:2012-08-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

〔目的〕コルセット使用の有無が腰部安定化運動中の体幹筋活動に及ぼす影響を検討した.〔対象〕健常成人男性10名(平均年齢21.3±0.5歳)とした.〔方法〕ダーメンコルセットを装着した条件としなかった条件でブリッジ,バードドッグ,下肢伸展拳上時の体幹筋活動を測定した.〔結果〕コルセットを装着した条件において,ブリッジとバードドッグ[右上肢・左下肢拳上]で右の内腹斜筋の活動が,また右下肢伸展拳上で右の内腹斜筋と腹直筋の活動が有意に低値を示した.〔結語〕コルセットを装着したブリッジ,バードドッグ,下肢伸展挙上の腰部安定化運動では内腹斜筋の活動が低下するため,より頻回に腰部安定化運動を行い,ローカル筋群の賦活を促していく必要があると考えられた.
著者
末廣 忠延 水谷 雅年 石田 弘 小原 謙一 藤田 大介 大坂 裕 高橋 尚 渡邉 進
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.329-333, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
23
被引用文献数
2

〔目的〕慢性腰痛者における腰部の臨床不安定性と股関節伸展時の筋活動開始時間との関係を明らかにすることとした.〔対象〕慢性腰痛者25名とした.〔方法〕股関節伸展時の筋活動開始時間を測定した.腰部の臨床不安定性の試験として,prone instability test(PIT)と腰椎屈曲時の異常な動きを評価した.腰部の臨床不安定性と股関節伸展時の筋活動開始時間との関係は,相関係数を用いて分析した.〔結果〕PITの陽性の結果が両側の多裂筋と対側の脊柱起立筋の活動遅延と相関した.〔結語〕慢性腰痛者において腰部の臨床不安定性の陽性の結果と股関節伸展時の背部筋群の活動遅延が相関することが明らかになった.
著者
鈴木 哲 平田 淳也 栗木 鮎美 富山 農 稙田 一輝 小田 佳奈枝 高橋 正弘 渡邉 進
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.103-107, 2009 (Released:2009-04-01)
参考文献数
14
被引用文献数
15 4

〔目的〕本研究の目的は,片脚立位時の体幹筋活動の特徴を明らかにした上で,片脚立位時の体幹筋活動と重心動揺の関係を検討することである。〔方法〕健常者10名(25.1±4.4歳)を対象に,両脚立位,片脚立位時の体幹筋活動と重心動揺を測定した。〔結果〕片脚立位では,両脚立位と比べて,挙上側胸腰部脊柱起立と外腹斜筋活動増加率が有意に高かった。立脚側腰部多裂筋と内腹斜筋の筋活動増加率が高い傾向にあった。また挙上側体幹筋活動と重心動揺との間に有意な相関がみられた。〔結語〕片脚立位バランスには体幹筋活動が関与する可能性が示唆された。
著者
江口 淳子 小原 謙一 渡邉 進 石田 弘
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.481-485, 2008 (Released:2008-10-09)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

[目的]運動時間の違いによるジムボールを用いた脊柱可動性運動の効果を検討することである。[対象と方法]健常男性48名を運動時間60秒群,30秒群,15秒群,コントロール群の4群に無作為に分けた。60,30,15秒群はボール上で腹這位をとらせる脊柱可動性運動を行い,コントロール群は静止立位を15秒間保持させた。介入前後に脊柱可動性を計測した。各群での介入前後の比較と変化率の群間比較を行った。[結果]60,30,15秒群では体幹傾斜角と仙骨傾斜角の脊柱可動性運動後の値が運動前と比較して有意に大きかった。変化率の群間比較では60秒群の体幹傾斜角がコントロール群に比べ有意に大きい値を示した。[結語]ボールを用いた脊柱可動性運動は60秒間行うことで脊柱可動性が有意に変化することが示唆された。
著者
鈴木 哲 平田 淳也 栗木 鮎美 富山 農 稙田 一輝 小田 佳奈枝 高橋 正弘 渡邉 進
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.115-119, 2009 (Released:2009-04-01)
参考文献数
13
被引用文献数
9 3

〔目的〕不安定面上座位時の体幹筋活動とその際の重心動揺との関係を検討することである。〔対象〕健常者10名(25.1±4.4歳)を対象とした。〔方法〕安定面上座位と不安定面上座位での体幹筋活動と重心動揺をそれぞれ測定した。〔結果〕不安定面座位では,安定座位と比べ,腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋,腰部多裂筋で有意に筋活動が高かった。不安定面上座位においては,グローバルマッスルである腹直筋・胸部脊柱起立筋・腰部脊柱起立筋の筋活動と重心動揺との間に有意な正の相関がみられたが,ローカルマッスルの筋活動との有意な相関はみられなかった。〔結語〕不安定面上座位バランスには,グローバルマッスルに分類される腹直筋,胸腰部脊柱起立筋の筋活動が関与していることが示唆された。
著者
石田 弘 正木 寛 村上 大祐 渡邉 進
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.493-496, 2012 (Released:2012-09-07)
参考文献数
19

〔目的〕内反捻挫後の運動療法の開発に資するため,踵を上げて行う足関節の運動方向が下腿筋活動に及ぼす影響を明らかにすることとした.〔対象〕健常成人男性10名とした.〔方法〕足関節について回外位での底背屈,底屈角度0°位での回内外,最大底屈位での回内外という3つの課題間で,腓腹筋内側頭,腓腹筋外側頭,長腓骨筋の筋活動量を比較した.〔結果〕腓腹筋内側頭と腓腹筋外側頭での筋活動量は,底屈角度0°位での回内外において他の課題に比べ有意に低い値を示した.長腓骨筋での筋活動量は,最大底屈位での回内外において他の課題に比べ有意に高い値を示した.〔結語〕下腿筋の筋力に応じ,踵を上げて行う足関節の運動方向を選択することが有用である.
著者
末廣 忠延 石田 弘 小原 謙一 藤田 大介 大坂 裕 渡邉 進
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.29-33, 2018-04-30 (Released:2018-08-12)
参考文献数
19

【目的】目的は健常者と慢性腰痛者における腹臥位での股関節伸展運動時の筋活動量を比較することである。【対象】対象は健常成人20名と慢性腰痛者20名とした。【方法】筋活動の測定は表面筋電計を使用し,被験筋は対側の広背筋,両側の脊柱起立筋,多裂筋,同側の大殿筋,ハムストリングスとした。被験者は腹臥位となり膝を伸展位で股関節を伸展10°に保持した際の筋活動量を測定した。群間の筋活動量の比較にはMann-Whitney のU 検定を使用した。【結果】大殿筋の活動は,健常者に比較して慢性腰痛者で有意に高値を示した。他の筋については有意差を認めなかった。【考察】慢性腰痛者は股関節伸展時に健常者よりも高い大殿筋の活動を示すことが明らかとなった。この原因としては,大殿筋の筋力低下や股関節伸展側の骨盤の水平面上での腹側への回旋が生じた状態で股関節を伸展したことが要因として考えられた。
著者
末廣 忠延 渡邉 進
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cb0501, 2012

【はじめに、目的】 近年、腰痛患者や腰部手術を受けた患者はローカル筋群の機能不全が生じることが報告されている。これらのローカル筋群の機能不全が長期間に渡る腰痛悪化の原因となる可能性を示し,またさらなる損傷を受けやすい状態を招くとされており,早期より体幹筋のローカル筋を中心とした腰部安定化運動が実施されている。腰椎術後の腰部安定化運動では安静・固定を目的にコルセットを装着したままでしばしば施行される。しかし,コルセット装着下での腰部安定化運動中の筋活動を調べた報告はない。そこで本研究では,コルセットの使用の有無が腰部安定化運動中の体幹筋活動に及ぼす影響を検討することを目的に実施した。【方法】 対象は,健常な男性10名(平均年齢21.3±0.5歳)とした。測定課題はブリッジ,下肢伸展挙上の2種目とし,下肢伸展挙上は左右両側行った。ブリッジは背臥位で腰椎を中間位に保持したまま股関節伸展0°まで挙上し保持させた。下肢伸展挙上は背臥位で非挙上側の股関節を屈曲45°とし,挙上側の膝関節を伸展位で踵が床から30cmになるまで挙上し保持させた。測定条件は,コルセットを装着しない条件(以下,コルセットなし条件)とコルセットを装着した条件(以下,コルセット条件)との2条件とし,装具はダーメンコルセット(以下,コルセット)を使用した。筋活動量の測定には表面筋電計(Vital Recorder2:キッセイコムテック株式会社製)を用い,サンプリング周波数は1000Hzとした。測定筋は右側の腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋,胸部脊柱起立筋,腰部脊柱起立筋,腰部多裂筋とした。得られた筋電波形は筋電図の解析ソフト(BIMUTAS2: キッセイコムテック株式会社製)を使用し,バンドパスフィルター(10 ~ 500 Hz)処理を行った後,全波整流し,中間3秒間の平均積分筋電値(IEMG)を求めた。各測定筋について, MVC時のIEMGで正規化し%MVCの値とした。統計はSPSS ver. 16.0 を用い,Wilcoxsonの符号付き順位検定を用いて比較した(p<0.05)。【倫理的配慮、説明と同意】 被験者全員に対し本研究について十分な説明を行い,同意を得た。【結果】 (コルセットなし条件,コルセット条件)の順で数値を示す。ブリッジの内腹斜筋(6.2±7.4%,4.2±4.0%)では,コルセット条件がコルセットなし条件に対して有意に筋活動量の低下を示した。その他の5筋は有意差を示さなかった。また同側の下肢伸展挙上の腹直筋(7.1±3.5%,5.1±2.3%)と内腹斜筋(27.9±17.9,25±16.3)でコルセット条件がそれぞれコルセットなし条件に対して有意に筋活動量の低下を示した。その他の4筋は有意差を示さなかった。【考察】 内腹斜筋の活動は,コルセットの使用によりブリッジ,同側の下肢伸展挙上において有意に低値を示した。これは内腹斜筋の鼡径靭帯からの線維が関与していると考えられる。この筋線維は腸骨と仙骨に圧迫を加え,仙腸関節の剛性を高めるように作用する。Snijdersらは,足を組んだ座位姿勢では足を組まない座位姿勢と比べ仙腸関節の圧迫力を強め,骨盤の安定化を代償し内腹斜筋の活動が低下することを報告している。本研究でも,コルセットの使用により受動的に仙腸関節の圧迫力が働いたと考える。これにより仙腸関節の安定化が図られ,内腹斜筋の働きが代償されたために筋活動量が低下したと考える。また,同側の下肢伸展挙上ではコルセット条件で腹直筋の活動量も低下した。下肢伸展挙上の主動作筋である腸骨筋,大腿直筋,長内転筋は,下肢挙上時に骨盤を前方回旋させるトルクを発揮する。これを阻止するために腹直筋や対側の大腿二頭筋が働くことで骨盤の前方回旋を防止する。しかし,コルセット条件では,コルセットが上前腸骨棘から肋骨弓までを覆うことにより,骨盤の前方回旋に対してコルセットが拮抗するように働き,骨盤の前方回旋を阻止する腹直筋の活動量が低下したと考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究より,腰部安定化運動中の体幹筋活動はコルセット使用で内腹斜筋の活動量が低下することが示された。このことから腰部術後など急性期でコルセットの使用が余儀なくされる場合ではコルセットを装着していない時よりもより頻回に腰部安定化運動を行い,ローカル筋群の賦活を促していく必要性が示唆された点で意義がある。
著者
石田 弘 渡邉 進 田邊 良平 江口 淳子 小原 謙一
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.74-78, 2007-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究の目的は,立位での前かがみ姿勢で引き上げ運動を行う際に体幹前傾角度の違いが体幹および股関節伸展筋の活動に及ぼす影響を明らかにすることである。対象は19歳から29歳までの健常男性10名(平均年齢 : 23.1歳)とした。導出筋は腹直筋,腹斜筋群,L3,L5レベル脊柱起立筋,広背筋,大殿筋,大腿二頭筋とした。運動課題は体幹前傾30°,45°,60゜にてピークフォースの0%,30%,60%を行うこととした。筋電図の平均積分値は最大随意収縮(Maximal voluntary contraction ; MVC)を基準に正規化した(%MVC)。その結果,すべての筋で,いずれの前傾角度でも負荷が大きいほど%MVCは有意に大きかった。同一負荷では体幹前傾角度が大きいほど脊柱起立筋の%MVCは小さく,広背筋と大腿二頭筋の%MVCは大きかった。これらの結果から,脊柱起立筋活動が減少するような前かがみ姿勢では腰部の受動的な組織の負担は増していると考えられるが,肩関節や股関節伸展筋が活動量を増やして引き上げ運動を行っていることが示唆された。
著者
鈴木 哲 小田 佳奈枝 高木 由季 大槻 桂右 渡邉 進
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.25-30, 2011-04-30 (Released:2020-06-25)
参考文献数
14

【目的】嚥下時に前腕を置く机の高さが舌骨上筋群の筋活動に与える影響を検討し,嚥下時の姿勢調節に関する基礎的な情報を得ることを目的とした.【方法】健常者10 名を対象に,机無し条件(両上肢下垂位)と,前腕を机上に置いた机有り条件A(差尺が座高の3 分の1 の高さ),机有り条件B(座高の3 分の1 に15 cm 加えた高さ)の3 条件で,全粥(5 g)を嚥下させ,その際の舌骨上筋群の表面筋電図,主観的飲みにくさ,肩甲帯挙上角度を測定した.舌骨上筋群の表面筋電図から,嚥下時の筋活動時間,筋活動積分値,嚥下開始から最大筋活動までの時間を算出した.各机有り条件の各評価・測定項目は,机無し条件を基準に正規化し,机無し条件からの変化率(% 筋活動時間,% 筋活動積分値,% 最大筋活動までの時間,% 主観的飲みにくさ)を算出した.机無し条件と2 種類の高さの机有り条件間における各評価・測定項目の比較,2 種類の高さの机有り条件間における肩甲帯挙上角度の比較,および各評価・測定項目の机無し条件からの変化率の比較には,Wilcoxon の符号付き順位和検定を使用し検討した.【結果】机無し条件と比べ,机有り条件A では,舌骨上筋群の筋活動時間,最大筋活動までの時間は有意に短く,筋活動積分値,主観的飲みにくさは有意に低かったが,机有り条件B では有意な差はみられなかった.机有り条件A における肩甲帯挙上角度は,机有り条件B と比べ,有意に高かった.机有り条件Aにおける%筋活動時間,%最大筋活動までの時間,%筋活動積分値,%主観的飲みにくさは,机有り条件B に比べ,有意に低かった.【結論】本研究結果から,嚥下時に前腕を置く机の高さは,舌骨上筋群の筋活動に影響を与えることが示唆された.頸部や体幹の姿勢調節に加えて,前腕を置く机の高さを適切に調節することは,嚥下時の姿勢調節のひとつとして有用となる可能性があると考えられた.
著者
末廣 忠延 石田 弘 小原 謙一 藤田 大介 大坂 裕 渡邉 進
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.29-33, 2018

<p>【目的】目的は健常者と慢性腰痛者における腹臥位での股関節伸展運動時の筋活動量を比較することである。【対象】対象は健常成人20名と慢性腰痛者20名とした。【方法】筋活動の測定は表面筋電計を使用し,被験筋は対側の広背筋,両側の脊柱起立筋,多裂筋,同側の大殿筋,ハムストリングスとした。被験者は腹臥位となり膝を伸展位で股関節を伸展10°に保持した際の筋活動量を測定した。群間の筋活動量の比較にはMann-Whitney のU 検定を使用した。【結果】大殿筋の活動は,健常者に比較して慢性腰痛者で有意に高値を示した。他の筋については有意差を認めなかった。【考察】慢性腰痛者は股関節伸展時に健常者よりも高い大殿筋の活動を示すことが明らかとなった。この原因としては,大殿筋の筋力低下や股関節伸展側の骨盤の水平面上での腹側への回旋が生じた状態で股関節を伸展したことが要因として考えられた。</p>
著者
鈴木 哲 平田 淳也 栗木 鮎美 富山 農 稙田 一輝 小田 佳奈枝 高橋 正弘 渡邉 進
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.103-107, 2009-02-20
参考文献数
14
被引用文献数
2 4

〔目的〕本研究の目的は,片脚立位時の体幹筋活動の特徴を明らかにした上で,片脚立位時の体幹筋活動と重心動揺の関係を検討することである。〔方法〕健常者10名(25.1±4.4歳)を対象に,両脚立位,片脚立位時の体幹筋活動と重心動揺を測定した。〔結果〕片脚立位では,両脚立位と比べて,挙上側胸腰部脊柱起立と外腹斜筋活動増加率が有意に高かった。立脚側腰部多裂筋と内腹斜筋の筋活動増加率が高い傾向にあった。また挙上側体幹筋活動と重心動揺との間に有意な相関がみられた。〔結語〕片脚立位バランスには体幹筋活動が関与する可能性が示唆された。<br>
著者
末廣 忠延 水谷 雅年 石田 弘 小原 謙一 大坂 裕 高橋 尚 渡邉 進
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】腹臥位での股関節伸展運動(Prone hip extension:以下,PHE)は,腰椎骨盤の安定性の評価としても使用され,股関節伸展に関与する筋活動のタイミングや腰椎骨盤の過剰な動きの有無が検査される。PHE時の筋活動の開始時間を調査した先行研究は,健常者を対象とした腰部多裂筋,脊柱起立筋,大殿筋,ハムストリングスを被験筋としているが,一致した結果が得られていない(Vogtら1997,Lehmanら2004)。また腰痛者でのPHE時の筋活動を調査した研究においては,健常者と比較して大殿筋の活動開始の遅延や広背筋の過剰な活動が報告されている(Brunoら2007,Kimら2014)。このように腰痛者においてPHE時の後斜走スリングを担う大殿筋,広背筋は,健常者と異なる筋活動パターンを示す。しかしながら,PHE時の広背筋の活動開始時間について調査した研究はなく,PHE時の正常な広背筋の活動開始時間は不明となっている。そこで本研究は,PHE時の体幹・股関節伸筋群の活動開始時間を明らかにすることで腰椎骨盤の安定性のメカニズムを解明することを目的とした。【方法】対象は健常男性20名(平均年齢23.4±4.0歳,身長168.9±8.4cm,体重61.2±11.0kg)とした。筋活動の測定は表面筋電計Vital Recorder 2(キッセイコムテック社製)を用い,被験筋は,対側の広背筋,両側の脊柱起立筋,両側の多裂筋,股関節伸展側の大殿筋と大腿二頭筋とした。測定肢位は,リラックスした状態で両上肢は体側とし,足関節以遠をベッド端から出した腹臥位とした。また頸部は,被験者の前方に設置したLEDライトが見えるようにわずかに頸部を伸展した。被験者は,光信号に反応して可能な限り速く,膝を伸展したまま股関節の伸展を実施し,その際の筋活動を測定した。なお,股関節を伸展する足は,非利き足とし,測定は3回実施した。筋活動開始時間の決定は,安静時の筋活動の平均振幅の2標準偏差を超える点とし,データ分析には,各筋がフィードフォワード活動であったかを検出するために,各筋の開始時間と大腿二頭筋の相対的な差を分析した。各筋の相対的な活動開始時間を求める式は,各筋の筋活動開始時間-大腿二頭筋の活動開始時間で算出した。従って,負の値は,その筋が大腿二頭筋の前に活動したことを示す。統計学的解析では,統計解析ソフトSPSS 22.0(IBM社製)を用い,反復測定分散分析とTukeyの多重比較検定を実施し,各筋の相対的な筋活動開始時間の差を検出した。なお,危険率は5%未満とした。【結果】相対的な筋活動開始時間は,同側多裂筋(-3.8±9.2 ms),対側多裂筋(7.0±13.5 ms),対側の腰部脊柱起立筋(8.3±14.1 ms),同側の腰部脊柱起立筋(22.6±21.6 ms),対側の広背筋(24.5±26.1 ms),大殿筋(51.6±57.9 ms)の順であった。すべての体幹筋は,大殿筋よりも有意により速く活動した。また同側の腰部多裂筋は同側の腰部脊柱起立筋,対側の広背筋,大殿筋よりも有意に速く活動した。【考察】フィードフォワード活動は,主動作筋の筋活動開始の100ms前から50ms後と定義される(Hodgeら1997)。そのため本研究のすべての体幹筋は,フィードフォワードの活動であった。すべての体幹筋は,大殿筋よりも有意により速く活動した。これは,大殿筋が働く前に体幹を安定化させるためだと考えられる。また同側の多裂筋の活動は,同側の腰部脊柱起立筋,対側の広背筋,大殿筋よりも早期に活動した。これは,PHE時に多裂筋が最も早期に活動したとするTateuchiら(2012)の結果と類似している。彼らは,多裂筋の活動開始が遅延すると骨盤の前傾角度が増加すると報告している。また腰部多裂筋は,腰椎の分節的な安定性に関与すると報告されている(Richardsonら2002)。これらのことから本研究で多裂筋が早期に活動したことは,股関節が伸展する前に腰椎の分節的な安定性を増加させるために生じたと考えられる。対側の広背筋の活動は,大殿筋よりも早期に活動した。骨盤の安定性は,広背筋,胸腰筋膜,大殿筋の後斜走スリングの筋膜などによって担っている。そのため広背筋が早期に活動したことは,大殿筋が活動する前に胸腰筋膜の緊張が高まり,大殿筋の活動開始時に効率よく骨盤部の安定性が高められたと思われる。【理学療法学研究としての意義】健常者におけるPHE時の体幹・股関節伸筋群の活動開始時間が明らかとなった。本研究の結果をPHEの正常運動の基礎的資料とし,今後,腰痛を持つ者との差を検討することにより腰痛者の理学療法に寄与できる点で意義がある。
著者
石田 弘 廣瀬 良平 小野 晃路 江見 健太 小橋 潤子 篠原 沙織 渡邉 進
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.631-633, 2013 (Released:2013-11-09)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

〔目的〕荷重位で中殿筋活動を促す運動の考案と,その運動時の中殿筋活動を定量化することとした.対象:健常成人男性31名とした.〔方法〕右下肢に荷重をかけた片脚立位で左股関節に対する最大等尺性外転収縮を行っている際の右中殿筋の筋活動を記録し,正規化のための基準とする右股関節外転の最大随意収縮時(maximum voluntary contraction:MVC)の筋活動で除した値(%MVC)を筋活動量の指標とした.〔結果〕運動時の筋活動量は108 %MVCを示した.〔結語〕本研究で用いた運動は,荷重をかけた状態での中殿筋の筋力増強運動のバリエーションを増やすことにつながるものと期待される.
著者
小島 一範 山本 亜希江 鎌井 大輔 槌谷 祐二 尾嶋 紗季 仕田中 美穂 渡邉 進
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.315-319, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
19
被引用文献数
1

〔目的〕訪問リハビリテーション利用者における,足趾把持力のバランス能力に対する重要性を検討するためにこれらの間の関係を調べることとした.〔対象〕立位姿勢を30秒以上とれる訪問リハビリテーションのサービスを利用している者33名とした.〔方法〕足趾把持力と開眼での片脚立位時間を左右ともに3回測定しその中での最大値を採用した.足趾把持力と片脚立位時間との関係をSpearmanの順位相関係数により解析した.〔結果〕足趾把持力と片脚立位時間との相関係数はr=0.776と正の高い値を示した.〔結語〕今回明確化された足趾把持力と片脚立位時間との高い相関は,足趾把持力のバランス能力における重要性を示す.
著者
渡邉 進 江口 淳子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.828, 2003 (Released:2004-03-19)

【目的】持続的な作業姿勢がもたらす腰痛症は産業医学の分野では大きな問題である。この種の腰痛症の多くは腰背部の筋疲労によってもたらされ、筋持久力と関連が深いといわれている。スポーツ医学領域では軽運動、ストレッチ、マッサージなど筋疲労の回復のために実施されることが多いが、産業医学領域での適用は少ない。特に腰背部の筋疲労に対する理学療法的介入の効果を検証した研究は見当たらない。本研究の目的は腰背筋の疲労に対して軽運動が与える影響を筋電図学的に検討することである。【対象と方法】対象は腰痛症の既往歴のない健康な男性16名(21から24歳)で、ランダムに対照群8名と実験(軽運動)群8名の2群に分けた。十分な皮膚処理後、第3(L3)と第5腰椎(L5)棘突起の高さで右腰背筋に表面電極を貼付した。はじめに対象者に徒手筋力測定法の“正常”を行わせ最大随意収縮(MVC)を測定した。次に両群とも腹臥位でベッドから上半身を乗り出して空中で水平に保持するSorensonのtrunk holdingテストを2回実施した。それぞれの保持時間は2分間とした。対照群では、2回のテストの間に背臥位で5分間の単なる安静をとらせた。実験群では1回目のテスト後に背臥位で1分間の腰背部伸展の軽運動(約40%MVC)を6回行わせた後4分間の安静をとらせた。この間の筋電図を記録・解析し両群間で比較した。筋電図学的解析には周波数解析(高速フーリエ変換)を用いた。2秒間毎に周波数中間値(MF:median frequency)を求め、最小二乗法で回帰直線を引いて2分間の減少率(MFS:MF slpoe)を計算した。さらに回帰直線のy切片から初期MF(IMF:initial MF)を求めこの値でMFS を除して正規化して比較の指標(NMFS:Normalized MFS)に用いた。この値が大きいほど疲労が強いことを示す。筋電図の記録と解析にはNORAXON社製MyoReseachを用い、サンプリング周波数は1,000Hz、記録周波数帯域は10から500Hzとした。統計解析にはWilcoxon testを用いた(p
著者
吉村 洋輔 石田 弘 小原 謙一 大坂 裕 伊藤 智崇 吉政 かおり 井上 かよ子 伊勢 眞樹 渡邉 進
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ab0417, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 人間は歩行中,両側の腕を無意識のうちに振っているが,これは単なる振り子運動ではなく,歩行を円滑に行うために中枢神経系に組み込まれた機構の一つであると考えられている.しかし,実際の生活の中では荷物を持つ,ポケットに手を入れて歩くなど腕を振らないで歩いていることも少なくはない.さらに臨床場面に目を向けると,高齢者や障害者では杖をつく必要があったり,上肢の機能障害のために腕を振れない状態にある者も少なくはない.また,近年では,下肢の振りに合わせて対側ではなく同側の上肢を振った方が歩行速度の改善や歩行耐久性の向上につながることも報告され,いくつかの実証例も存在する.歩行時の上肢の腕振りの状態が歩行動作の歩行率やエネルギー消費にどう影響するかを検討した報告は少なく,特に下肢の筋活動についての比較は見当たらない.ここでは歩行中の腕振りの状態が下肢筋活動にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることにより,今後の歩行指導に役立てることを目的とした.【方法】 対象は研究の趣旨に同意を得られた健常成人8名(平均年齢22.5±0.5歳,平均体重52.7±1.7kg)であり,男女の内訳は男性4名,女性4名であった.各自の快適速度にて10m平地歩行をした際の歩行速度を算出し,その速度にて (1)腕の振りを固定しない自由な歩行(以下,自由歩行群),(2)上肢を同側の大腿部に固定し,腕の振りを制限した歩行(以下,固定歩行群)をそれぞれトレッドミル上にて30分間行った.その後,それぞれの条件下での歩行時の右大腿直筋(以下,RF),右大腿二頭筋(以下,BF),右前脛骨筋(以下,TA),右外側腓腹筋(以下,GL)の筋活動を表面筋電計(キッセイコムテック社製,Vital Recorder 2)にて計測し,付属のソフトであるBIMUTAS IIにて解析を行った.なお,両群での筋活動をフットスイッチからの信号により立脚相と遊脚相に分けてそれぞれを比較した.なお,筋疲労の蓄積を考慮し,自由歩行群と固定歩行群の計測には3日以上の間隔をあけて実施した.筋活動の比較は各筋の最大随意収縮値を100%として正規化し%MVCとして3歩行周期分の平均にて比較検討した.統計学的解析には統計ソフトウェアSPSS 17.0 J for Windows(エス・ピー・エス・エス社製)を用いて,Wilcoxon符号順位和検定を行い,危険率5%未満をもって有意とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には事前に本研究の趣旨と目的を文書にて十分説明した上で協力を求め,同意書に署名を得た.【結果】 自由歩行群の30分トレッドミル歩行後のRF,BF,TA,GLの筋活動は,立脚相ではそれぞれ13.6±10.3(%),15.1±16.9(%),11.2±5.5(%),60.4±41.9(%)であり,遊脚相では12.4±14.0(%),18.4±14.3(%),22.7±6.8(%),15.4±9.0(%)であった.固定歩行群の30分歩行後のRF,BF,TA,GLの筋活動は,立脚相ではそれぞれ10.7±8.4(%),8.8±7.6(%),11.3±3.5(%),53.5±25.9(%)であり,遊脚相では6.1±4.2(%),12.0±5.2(%),20.7±6.8(%),18.2±21.6(%)であった.自由歩行群と固定歩行群の歩行後の各筋の筋活動の比較では,RFの立脚相では有意差を認めなかったが,遊脚相では有意差を認めた.BF,TAにおいては立脚相,遊脚相ともに有意差を認めなかったが,自由歩行群に比べ固定歩行群では筋活動が低値である傾向を認めた.GLでは両群間の立脚相においてその筋活動に有意差を認めた.【考察】 遊脚相におけるRFと立脚相におけるGLの筋活動は歩行周期の中で特にその働きが重要であるが,自由歩行群に比べ固定歩行群では,それらの筋活動において有意な低下を認めた.その他の筋の活動においても,固定歩行群では低値を示す傾向にあった.長い時間の歩行においては,上肢の振りを下肢の振りに合わせた方が下肢筋への負荷や疲労が少ないことを示唆する結果となった.なんば歩行と呼ばれる腕振りを同側下肢の振り出しに合わせた歩行様式ではエネルギー消費や酸素摂取量が変化することも報告されており,陸上競技などでのコーチング内容として紹介されることも多い.さらに,日常場面や臨床場面では上肢の動きが制限される場面もある.また理学療法治療場面では,下肢筋力や筋持久力が低下している患者も多いが,そのような患者がある程度以上連続して行える歩行能力の獲得には腕振りの状態を考慮する必要があるといえる.【理学療法学研究としての意義】 連続歩行の際に腕振りを制限することによる下肢機能への影響を下肢筋活動の観点から示すことができた.筋力低下や廃用症候群などにより歩行障害を呈する患者への歩行練習を指導する際の基礎的資料となり得ることから,理学療法学研究としての意義があるものと考えられる.