- 著者
-
小島 朝子
- 出版者
- 一般社団法人日本調理科学会
- 雑誌
- 調理科学 (ISSN:09105360)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, no.4, pp.322-327, 1989-12-20
- 被引用文献数
-
1
滋賀県下の神社の神饌と直会膳にみられる魚料理について調べた結果の要約は次の通りであった。1.フナずし切りの神事は湖南北東部地方と湖東地方で行われていた。湖西地方にはシイラのすし切り神事がシイラ切りの神事として残されていた。2.馴れずしを神饌として供える神社は草津市、守山市、野洲群、栗太群などの湖南北東部地方に集中していた。すしの種類ではフナずしが一番多く供えられ、他にめずし、モロコずし、ドジョウずし、ハスずし、雑魚ずし、ウグイずし、サバずしなどがみられた。3.直会膳に出される馴れずしもフナずしが一番多く、他にモロコずし、ドジョウずし、ハスずし、ニシンの糀づけなどがみられた。4.馴れずし以外の魚の熟饌には「なます」料理が多くみられた。熟饌に用いられる魚は淡水魚が多かったが、塩サバや塩シイラ、塩ブリなどの海産塩物もあった。5.直会膳に出される馴れずし以外の魚料理の中には、現在家庭料理として残っていないものもみられた。湖岸近くの神社では淡水魚が多く使用されていたが、山間部では海産塩干物の使用が多かった。6.生饌には生の淡水魚が多く供えられていたが、海産塩干物もかなり多かった。以上の結果より、古来滋賀県ではいろいろな種類の馴れずしが漬けられていたことや、湖魚や海産塩干物が大切な食品材料であったことがわかった。