著者
今野 暁子 及川 桂子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.39-44, 2003-02-20
参考文献数
12
被引用文献数
2

The extent to which iron is eluted by different cooking methods from an iron pot during cooking was investigated. The addition of seasonings and the use of oil, as well as the effect of heating time,・were evaluated. The amount of iron eluted tended to be less with the use of oil, and was also affected by the seasoning added during cooking. In particular, the amount of iron eluted was markedly increased when vinegar was added. The amount of iron eluted also increased with increasing heating time. 78-98% of the iron that was eluted from the iron pot was in the form of easily absorbed ferrous compounds. Added vinegar resulted in 98% of the eluted iron consisting of ferrous compounds which exhibited outstanding stability. The results of this study demonstrate that the amount of iron supplied depended on the cooking method employed.
著者
沢村 信一
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.231-237, 2011-06-05
参考文献数
18

現代の抹茶は,微細に粉砕され,滑らかな食感である。このように微細になったのは,茶の栽培技術や粉砕道具の発達を考慮すると近世になってからと考えられる。粉砕の面から抹茶を4期に分けて再現し,その粒度を測定し味の評価を行った。薬研で粉砕した2種類の抹茶は,粒度が粗く,ざらつきを感じた。味は,強い苦味を感じた。2種類の茶臼で粉砕した抹茶は,微細に粉砕され,滑らかな食感であった。味は,まろやかでうま味を感じた。
著者
中町 敦子 中村 恵子 四宮 陽子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.151-158, 2004-05-20
参考文献数
12
被引用文献数
3

デュラム小麦のセモリナ粉100%使用,標準ゆで時間11分のスパゲティを用いて,ゆで時間を5~20分まで変えて試料を調製し,アルデンテについての官能評価,水分音量・ゆで歩留測定,拡大写真撮影,糊化度測定,破断試験を行い,以下の結果を得た。1)官能検査の結果,9,10,11分ゆでが「アルデンテである」と評価され,10,11分ゆでが「少し芯がある」,「好ましい」と評価されたので,好ましいアルデンテは10,11分ゆでであった。2)日本人のアルデンテの10,11分ゆでは,ゆで歩留2.3~2.4,水分含量63~64%に相当し,これらは中心の白い芯がなくなった状態で,糊化度は90%以上であった。イタリア人のアルデンテはゆで歩留2.1~2.2とすると,ゆで時間8~9分,水分含量約60%に相当し,中心にまだら状に白い芯が残り,糊化度は約80%であった。3)破断曲線を微分すると,ゆで時間の違いによってダブルピーク,肩,シングルピークの3つに分類された。日本人が好む10,11分ゆではシングルピークの形で,イタリア人が好む8,9分ゆでは肩がある形であった。破断曲線の微分はスパゲティの芯のゆで状態の指標になった。4)20分放置により,拡大写真撮影では中心部への水分移動が見られたが,糊化度はゆで直後と差が認められなかった。また破断曲線の肩はシングルピークになり,破断特性値は全体的に低下した。
著者
下坂 智恵 下村 道子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.125-131, 1996-05-20
被引用文献数
1

近年わが国の生活環境は大きく変化し、家庭内の衣・食生活は多様化し、さらに高齢化が急速に進む中で、高齢者をめぐる家庭生活の状況も以前とは異なってきている。そこで本調査では女性の家事行動の実態と意識について多面的に把握しようとした。女性は、食料品よりも衣料品を買いに行くことが好きとした者が多かった。また、食料品の買物、料理作りなどの食生活に関する行動よりも、衣料品の買物、手芸など衣生活に関する行動をすることで、ストレスの解消になるとした者が多かった。実際の行動としては、生活の技術といわれる食生活関連の行動の方が衣生活関連の行動よりも頻度が高かった。女性の25〜34歳では、クリスマスや子供の誕生日に特別な料理を作るとした者が多く、パンや菓子作りをする割合も高かった。25〜64歳では、年齢が高くなるにつれて食器やおしゃれに関心をもち生活を楽しもうとする傾向がみられ、買物をすることは楽しくストレスの解消になるとした者が多かった。とくに衣料品の買物でストレスの解消になるとした者が高率であった。65歳以上の女性は、他の年齢と比べて惣菜や半調理品を購入する頻度が高く、外食頻度は低かった。そして、漬物や煮豆、行事食などを作ることが多く、夕食作りや夕食の後片付けなどを楽しむ傾向がみられた。すなわち、惣菜を購入する率は高く、その一方、料理を楽しいと意識し、伝統食の手作りなどを楽しむ傾向がみられ、これらは家事の簡便化指向と同時に、余暇として楽しむという二極分化現象とみることができる。女性で年齢の高い者は低い者よりも、みそ汁や漬物作り、夕食作りを楽しいとし、食卓を飾る、盛り付けに配慮するなど食生活を楽しむ傾向がみられた。本調査から作り慣れている料理は、高齢になったときに、容易に行うことができ、楽しみとして作ることができるのではないかと考えられる。
著者
辰口 直子 渋川 祥子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.157-165, 2000-05-20
参考文献数
8
被引用文献数
4

本研究は材質の異なる市販鍋(アルミ,銅,多層,ステンレス,ホーロー,パイレックス,土鍋)や厚さの異なる試験用鍋(アルミ)を用い,その熱特性と調理適性との関連を明らかにすることを目的とし,実験を行った。鍋の材質や厚さの違いによる熱特性として,温度上昇速度,水分蒸発量,熱効率を算出し,その際ガス流量を変化させ,火力の違いによる影響も加味した。その結果,以下のことが明らかとなった。1.熱効率と鍋内試料の温度上昇速度は,熱容量が小さく同時に熱伝導率の高い材質の鍋ほど大である。2.熱伝導率が低い鍋(ステンレス,ホーロー,パイレックス,土鍋)と厚さの薄い鍋は,鍋底に温度ムラがおこりやすく,焦げ付きやすい。3.鍋底の温度ムラの大きい材質の鍋(パイレックス,土鍋,ホーロー)は煮崩れ量が多くなる。4.鍋の特質は火力が大きいほどでやすい為,調理成積に差が出る。火力が小さければ鍋間の差が出にくい。このため,短時間で鍋内温度を上げたい場合は熱容量の小さく熱伝導率の高い鍋(アルミ,銅)及びホーローを用いるとよい。煮込み料理のように,条件として煮崩れ量が少なく,蒸発量が少なく,温度ムラなく均一である方が好ましい場合には熱伝導率が高く厚手の鍋(アルミ厚鍋,多層鍋)が好ましい。
著者
飯島 久美子 小西 史子 綾部 園子 村上 知子 冨永 典子 香西 みどり 畑江 敬子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.154-162, 2006-04-20
参考文献数
20
被引用文献数
2

A questionnaire survey was conducted to identify the regional variety of Japanese New Year's dishes and how they are prepared. Questionnaires were sent out to students of universities and colleges throughout Japan in December 2001 and 2608 questionnaires were collected in January 2002. Japanese soba was eaten by 74.8% of Japanese on New Year's eve, while Okinawa soba was eaten by 58.8% in Okinawa. Osechi dishes were eaten by 79.6% during the New Year period, most being homemade although some were bought from shops. Kuromame was most commonly eaten, followed by boiled fish paste, cooked herring roe, cooked sweet-potato paste, cooked vegetables, cooked sardines, fried eggs, rolled kombu and vinegared dishes. The cooked vegetables and vinegared dishes were mostly homemade, while fried eggs and boiled fish paste were mostly purchased from shops. The popularity of Japanese New Year's dishes varied according to the region although it has decreased compared to that of 23 years ago.
著者
木村 友子 菅原 龍幸 福谷 洋子 佐々木 弘子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.178-185, 1996-08-20
参考文献数
13
被引用文献数
3

昆布だしの抽出法の迅速化・合理化・実用化を目的に、食品の新しい処理方法として加熱過程に超音波照射を併用した加熱抽出法を試み、昆布だしの溶出成分と嗜好の関係を調べ、好適な調製条件を検討した。1)超音波照射を併用した加熱法は対照の照射無しの加熱法に比べ成分溶出量がやや多く、良好なだしが得られた。2)超音波照射有りのだしは対照の照射無しのだしに比べ明度の低下が進行し、色差の値に差が見られ、照射の影響が認められた。3)だしの好適調製条件では、加熱時間は照射有りの場合8分間と対照の照射無しの場合15分間であった。これらだしは総窒素量・5'-ヌクレオチド・無機質の含量は近似値を示したが、照射8分間のだしは遊離アミノ酸が顕著に多く、嗜好的にも優れていた。その上、加熱時の消費電力量を28%低下させ有利であった。従って超音波を併用した加熱法は、従来の加熱法や浸水法よりも嗜好性に優れた昆布だしが得られ、抽出時間も短縮及び消費電力量も低減できることが示唆された。
著者
和泉 眞喜子 高屋 むつ子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.257-261, 2008-08-20
参考文献数
16
被引用文献数
2

コーヒーの抽出条件や水の違いが味に及ぼす影響を官能評価を基に検討し,さらにコーヒー中のクロロゲン酸量と酸味との関連性を検討した。3種類のコーヒーにおける湯の温度の違いの官能評価では,ほとんどの評価項目で有意な差はみられないが,2種類のコーヒーにおいては温度が高い方が色が濃かった。85℃の抽出では評価が低くなる傾向が認められ,抽出器具では,コーヒーメーカーの評価が有意に低かった。それは,クロロゲン酸量が少なく,酸味が弱いことによるものと考えられる。水の種類では,2種類のコーヒーで硬水の総合評価が有意に低くなった。理由として,硬水を用いると,苦味が強く,酸味が弱いためと考えられる。クロロゲン酸量と酸味は正の相関が認められた。従って,クロロゲン酸量は酸味の指標になることが明らかになった。
著者
永塚 規衣 大野 隆司 大川 佑輔 松下 和弘 仁科 正実 峯木 眞知子 長尾 慶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.360-365, 2004-11-20
参考文献数
10
被引用文献数
3

煮こごりを始めとするゼラテン料理に加えられるアルコール量のゲル化に及ぼす影響をみるために低濃度から高濃度(1%,3%,5%,10%,20%)まで変化させたアルコール添加ゲルを調製し,動粘度モニタリングシステム,旋光度,動的粘弾性,レオメーターによる力学特性及び^<17>O-NMRのスピン-格子緩和時間(T_1)の測定,電子顕微鏡によるゲル内部の組織観察を行い,得られた結果を以下にまとめた。(1)アルコール添加濃度が高濃度になるほどゼラチン分子のゲル化特性(ゲル化温度,旋光度,粘性率及び弾性率の低下)に影響を及ぼし,初期の架橋形成も遅れることが示唆された。つまり,高直度のアルコール添加はゲル化が阻害されることが明らかとなった。(2)10%以上の高濃度アルコール添加ゲルの物性は,表面はゴム状の延性的性状を有したが,(1)の結果から内部は網目構造の少ない口どけの早いゲルを形成すると推測された。(3)ゾルのNMR測定及びゲル内部の組織観察から,10%以上の高濃度アルコール添加はアルコールと溶媒の水との相互作用により,ゼラチン分子の網目形成が阻害され,ネットワークの少なく組織構造の変化したゲルを形成することが認められた。
著者
光崎 龍子 坂口 和子 光崎 研一 高木 敬彦 森 真弓 鈴木 啓子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.330-333, 1999-11-20
参考文献数
11
被引用文献数
1

ドクダミ茶加工の採取時期としては,一般に花のような白い総ほうが終わる頃が適していると言われている。そこで,ドクダミの成長期を「萌芽期」,「結実期」,「本葉期」と名付け,この3期と,結実期の「葉部」,「花部」の2種類の無機成分含有量を分析した。さらに,採取時期の意義を,相関分析,主成分分析法により解析を試みた。1.ドクダミの無機成分は,カリウムがもっとも多く,カルシウム,マグネシウム,鉄,マンガン,亜鉛は成長とともに増加し、銅は複相単為生殖後の花部に多い。2.カリウムとカルシウムは6:1,マンガンとマグネシウムは80:1ほどの比率で増加し,カルシウム・カリウムと銅では反比例する関係があり,花部,本葉期に認められる。3.主成分分析では第1主成分に,カルシウム,マグネシウム,カリウム,マンガンと銅が抽出され、ドクダミの無機成分を構成する主な成分と複相単為性生殖により増加する成分と考えられ,第2主成分の鉄,亜鉛は複相単為生殖に深く関与する成分と考えられる。4.成長期別の主成分分析法では,2次元布置図から花部の特異性が推測ができる。5.以上のことから,経験的にいわれているドクダミ採取時期は総ほうの終わる頃がよいとされるが、3成長期と花部、葉部に分けることにより明確にできた。ゆえに,昨今の食生活に派生する味覚異常や高齢者の無機成分摂取不足などの改善には,手軽に日常的な飲用が望ましい薬用植物と考えられる。
著者
岡田 久美子 市川 朝子 下村 道子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.327-336, 2008-10-20
参考文献数
18
被引用文献数
2

うどんのおいしさには食したときの物性が大きく関与し,それにはうどんの成分である澱粉の性状が影響するといわれる。現在製麺業界で麺の物性改良として用いられている各種澱粉としてタピオカ澱粉,コーンスターチ,サゴ澱粉のいずれかを中力粉に加えたときの物性及び官能評価を行った。その結果,タピオカ澱粉代替麺は,破断エネルギー値が低く,伸長度の高い,軟らかく伸びやすい性状を,またコーンスターチ代替麺は破断エネルギー値が高く,伸長度の低い,すなわち硬く伸びにくい性状であった。この違いはα-アミラーゼ処理した生麺の走査電子顕微鏡観察でグルテン組織の形状に明らかな違いとして認められた。さらに,各種澱粉に活性グルテンを添加すると,破断エネルギー値はいずれの澱粉の場合も高くなった。官能検査ではタピオカ澱粉に活性グルテンを添加した麺が弾力,腰のある麺として好まれた。
著者
楠瀬 千春 木村 利昭 藤井 淑子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.10-18, 2002-02-20
参考文献数
14
被引用文献数
2

スポンジケーキの主材料は小麦粉,鶏卵,砂糖である。本報では小麦粉の全量を澱粉(小麦澱粉,あるいは馬鈴薯澱粉)に置き換え,馬鈴薯澱粉を大粒と小粒に分級することによって,スポンジ組織の気孔形成に澱粉粒径のおよぼす影響を検討した。スポンジケーキの調製方法は,3材料を同重量づつ配合し,卵(全卵)糖液を泡立てた後,小麦澱粉あるいは馬鈴薯澱粉を混合し,ケーキバッターを調製した。2種類のバッターを同時にオーブンで焼成し,次のような実験を行った。ケーキバッターの焼成中の膨張・収縮時の高さの変化をカセトメーターを用いて計測した。また,バッターに含まれている気泡と,澱粉粒の相互作用を,加熱・放冷中にわたって,モデル実験的に,顕微鏡観察した。更に,澱粉粒の糊化状態を偏光顕微鏡で観察した。焼成したスポンジケーキの気孔構造と,膨潤・糊化した馬鈴薯澱粉粒の変形した形状を,ケーキのSEM写真によって比較検討した。その結果,分級した馬鈴薯澱粉の粒径分布が狭い範囲に限られると,ケーキバッターの気泡の表面を澱粉粒が覆いやすくなり,ケーキバッターが加熱された時,気泡の合一,破泡が抑制される。この状態で加熱を継続すると気泡は澱粉粒に覆われたまま徐々に膨張する。同時に気泡表面を覆っている澱粉粒の糊化が進行し,膨張した気泡は粒に覆われたまま固定化し,放冷後において球形を保持したまま気孔を形成した。要するにスポンジケーキの気孔は,気泡が膨張し固定化して形成されたものである。
著者
山崎 歌織 外西 壽鶴子 加藤 和子 河村 フジ子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.31-36, 2000-02-20
参考文献数
20
被引用文献数
3

材料の種類と水煮時間が異なる煮こごりの品質に付いて調べた結果は次のようであった。1.煮汁をゲル化させた場合,最も硬いゲルを形成する水煮時間は,ぶりやまだらが鶏手羽先よりも短かった。ゲルの硬さは,鶏手羽先が最も高く次いでぶりであり,まだらはかろうじてゲル化する程度であった。2.鶏手羽先のゲルは長時間水煮において安定した硬さを保持するが,ぶり,まだらのゲルは水煮30分以降徐々に軟らかくなった。3.煮汁の透明度は水煮時間の経過と共に低くなり,煮汁中のタンパク質は,ぶり,鶏手羽先では増加した。4.煮汁中のタンパク質には,ゲル形成を促進させるゼラチンの他に阻害するものが含まれている。5.長時間水煮により煮汁中のゼラチン分子は低分子化してゲルは軟らかくなった。
著者
豊満 美峰子 松本 仲子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.181-185, 2005-04-20
参考文献数
16

A questionnaire survey was conducted to examine how the color of the food, tableware and table setting influenced the taste. Color schemes of yellow, orange, red, purple, blue, green, white and black could be chosen as preferable. Jelly was used to simulate the foods, plastic plates for the tableware and papers for the table setting. Pictures were taken of the different color schemes for visual assessment by an evaluation panel. Warm color schemes were highly evaluated, the most favored being yellow, orange and white for the food, tableware and table setting, respectively. Dull color schemes were not liked, the most disliked being all black and cool colors. The color scheme of the foods and tableware was more influential than the color of the table setting.
著者
小松 あき子 原田 和樹 遠藤 伸之 永塚 規衣 長尾 慶子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.128-136, 2011-04-05
参考文献数
18
被引用文献数
8

本学調理科学研究室で調製した"塩漬""味噌漬""すんき漬"と市販漬物数種の品質ならびに機能性を検討した。漬物の品質は色差測定,pH測定,塩分濃度測定ならびに破断強度測定により評価し,機能性には抗酸化力の指標として「化学発光法」,「ORAC法」および「HORAC法」により評価した。<br>その結果,各野菜漬物の重量,色差および破断歪率は経時的に変化し, pHは塩漬ではpH4~6,味噌漬ではpH5.2付近を示した。また,塩漬野菜の漬け液,"味噌漬""すんき漬"は高い抗酸化力を示し,特に発酵漬物である"すんき漬"は高いペルオキシラジカルおよびヒドロキシルラジカル消去活性を有していることが明らかとなった。市販漬物においても発酵漬物である"すぐき漬"や"高菜漬"は高い抗酸化力を示した。
著者
柳本 正勝
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.32-36, 2002-02-20
参考文献数
28
被引用文献数
4

食べ物のおいしさは一般に,感覚特性で決まるとされている。ところが,それぞれの重要性の差についてはあまり取り組まれてこなかった。そこで,著者が行ってきた10品目の「食べ物のおいしさとは」を考察した表を用いて,感覚特性の食べ物のおいしさに対する貢献度を比較した。6つの感覚特性,味,匂い,テクスチャー,外観,品温,音のうち,テクスチャーと味が2大特性であった。テクスチャーと味を比べれば明確な差はないが,テクスチャーの方が貢献度の高い項目が多いことが指摘できた。また,液状食品と固形食品に分けると,液状食品は味が,固形食品はテクスチャーの貢献度が高い結果を得た。外観と匂いがこれに次いで高かったが,外観のこの評価は他の調査結果と比べると低い。音は最も低かったが,これは常識的な結果と考える。
著者
三宅 妙子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.39-45, 1995-02-20
参考文献数
16

焼き肉の経時硬化防止に有効な調理方法を検討したので, その成果を報告する。焼き肉の物性判定は, レオメーターによる硬さと咀しゃく性の測定値によった。塩分濃度1%では, 焼き肉の経時硬化は抑制されたが, 低温および無塩の調理では, 前凍結処理を施すことで効果がみられた。
著者
綾部 園子 本間 千裕 長浜 ゆり 高橋 伸幸
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.188-193, 2009-06-20
参考文献数
17

同じ条件で栽培したF<sub>1</sub>種のフルーツトマト(甘しずく)と普通のトマト(麗容),および比較のため特殊栽培によるフルーツトマト(アメーラ)の品質と嗜好性について検討した。その結果,甘しずくの糖度は,麗容と同じ栽培方法であったが,アメーラとほぼ同じであった。甘しずくとアメーラは麗容に比べてフルクトースとグルコースの含量が多かった。フルクトース/グルコースは甘しずくはアメーラよりも高く,甘味の質が異なることが示唆された。酸度は甘しずくのゼリー部において有意に高かったが,果肉においては有意の差はなかった。皮付きの破断応力は甘しずくが最も高く,皮を除いた果肉の圧縮応力はアメーラが最も高かった。官能評価の結果,麗容に対し甘しずくとアメーラは有意に好まれた。
著者
山本 由喜子 冨森 温子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.293-298, 1998-11-20
参考文献数
13
被引用文献数
1

常圧(約100℃)で, 30, 60, 180分間, または高圧(115または120℃)で10または30分間加熱して鶏骨スープストックを調整し, 成分含量, 透明度, 粘度を比較し, 官能検査を行った。また市販固形スープの素の成分含量とも比較した。その結果, 常圧での加熱時間が長いほど, また常圧よりは高圧のほうが, 総固形物, タンパク質, ヒドロキシプロリン(Hypro)溶出量が増加した。しかし, 5'-アデニル酸, 5'-イノシン酸は, 高圧加熱でやや低値を示した。また旨味成分であるグルタミン酸を含めてほとんどの遊離アミノ酸は, 常圧加熱よりも高圧加熱で増加傾向が見られたが, 120℃では115℃以上に増加しなかった。コラーゲンの溶出は, 加熱時間が長く, また加熱温度が上昇すると著しく, またコラーゲン含量とスープストックの粘度は正の相関を示した。高圧調理では, 成分の溶出量が多いにもかかわらず透明度が高かった。市販固形スープの素は総固形物量が多く, また5'-イノシン酸とグルタミン酸が非常に多くて他のアミノ酸類の少ないものもあり, 調理したスープストックとの呈味性の違いが示唆された。官能検査の結果, 100℃で180分加熱は鶏骨臭が弱く旨味が強い, 120℃で30分加熱は鶏骨臭が強い, 100℃で60分加熱は野菜の香りが強く旨味が弱い, という特徴が認められた。しかし総合的なおいしさは, 3つのスープストックの間に有意差がみられなかった。以上の結果, 鶏骨スープストックを高圧加熱で調理することにより調理時間を短縮させ, 成分の溶出を促進する効果を認めたが, 呈味性を強めたり嗜好性を高める効果は認めなかった。
著者
峯木 真知子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.335-341, 1997-11-20
被引用文献数
4

鶏卵卵黄の加熱による組織構造の変化を観察した。1)加熱した卵黄球は,新鮮生卵黄と同様に多面体で緊密充填を示し,その形状は外層部はまるみを帯び,内層部は細長かった。卵黄球の間隙は生卵黄に比べて狭く,卵黄球の基質は小胞化し,レース状を呈していた。加熱により,卵黄球の基質に存在する蛋白性小顆粒の中には,融合したものや内部に電子密度の低い部分が斑点状に生じているものが出現した。2)半熟卵黄では,外層部は全熟卵と同様に多面体が緊密充填した卵黄球がみられたが,中層及び内層部の卵黄球の境界は消失し,多面形構造は不分明であった。蛋白性小顆粒は,新鮮卵であっても偏在し,融合過程を示すものもあった。また,卵黄球の基質の小胞化は,外層部では全熟卵と同様にレース状を示したが,中層部では部分的に小胞が散在する程度であった。3)貯蔵した鶏卵の全熟卵黄では,卵黄球の基質の小胞化は明瞭で,蛋白性小顆粒は融合しているものが新鮮全熟卵に比べて多く,その分布には偏りがみられた。また,卵黄球の間隙に電子密度の低い物質が集塊の状態で存在するのが観察された。