著者
奥谷 喬司 小島 茂明 金 東正
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus : journal of the Malacological Society of Japan (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.29-32, 2004-06-30
被引用文献数
1

シロウリガイ属はこれまで北東・北西太平洋から多様の種類が知られてきたが,南西太平洋からはニュージーランド沖とラウ海盆からこの属の出現が予報的に報じられているのみで,分類学的な詳細は公表されていない。ところが,1994年にドイツのゾンネ号が行ったニューアイルランド海盆の調査中,リヒル島沖のエジソン海山から本属の標本を採集していた。今回その後同地点から採集された標本の形態学的および分子系統学的研究(Kojima et al.,未発表)を行った結果,我が国本州沖の南海トラフに棲むナンカイシロウリガイに近似の未記載種であることが判ったので記載した。Calyptogena(Archivesica) edisonensis n. sp.エジソンシロウリガイ(新種・新称)殻長99.8mm(ホロタイプ)。殻頂は前方1/4〜1/5くらいに偏っていて,殻の後域は僅かに広がる。殻皮は薄く,殻頂域では剥離している。〓歯は放射状。浅い殻頂下洞がある。前足牽引筋痕は明らか。エジソン海山の水深1450m。あらゆる点でナンカイシロウリガイに似るが,ナンカイシロウリガイでは前足牽引筋痕が深い孔状になる特異性がある。
著者
小島 茂明 渡部 裕美 藤倉 克則
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.118, no.6, pp.1174-1185, 2009-12-25 (Released:2010-03-23)
参考文献数
64
被引用文献数
2 1

In deep-sea reducing environments, such as hydrothermal vent fields and cold seep areas, biological communities with huge biomass are often observed. Such communities associated with bacterial chemosynthesis, which are composed of species endemic to these environments, are founded with hydrothermal activities and succeed with changes of activities. Over a longer timescale, genetic deviations among local populations and speciation occur during the course of a series of activities and finally new faunal groups diverged. We attempt to estimate the ages of various hydrothermal phenomena on various timescales from 10 to 107 years on the basis of the evolutionary ecology of animals endemic to hydrothermal vents as part of the “Taiga project”. In this paper, we introduce communities in hydrothermal vent fields and describe the principals of methodologies for age estimation, which we are now planning, and the expected results.
著者
小島 茂明 太田 秀
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.189-195, 1997-10-31
被引用文献数
12

Shell morphology of Calyptogena soyoae-complex (Bivalvia : Vesicomyidae) was compared between the two mitochondrial haplotypes that had been revealed by the previous genetic study. Significant morphological differences between the two haplotypes were detected by an analysis of covariance of shell length-height relationship and by t-test of the average value of length-height ratio. On the basis of the molecular and morphological differences between two haplotypes, Calyptogena okutanii n. sp., a sibling species of Calyptogena soyoae, is established from the seep area off Hatsushima Island, Sagami Bay, central Honshu, Japan.
著者
藤倉 克則 小島 茂明 藤原 義弘 橋本 惇 奥谷 喬司
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.103-121, 2000-06-30
被引用文献数
11

海洋科学技術センター(JAMSTEC)が運用する深海調査システム(有人潜水調査船, 無人探査機, 深海曳航式カメラ)を用いて, 日本周辺の深海化学合成生物群集におけるオトヒメハマグリ科二枚貝の採集及び生息環境の観察を行い, 6種について新たな分布域を発見した。シマイシロウリガイは, 相模湾の初島沖と沖ノ山堆の冷水湧出域と沖縄トラフ伊平屋海嶺の熱水噴出域に分布していることが知られていたが, 沖縄トラフの北部伊平屋海嶺からも新たに発見された。テンリュウシロウリガイは, これまで知られている南海トラフ天竜海底谷の冷水湧出域に加え, 南海トラフ第三天竜海底谷からも発見された。ナンカイシロウリガイは, 南海トラフ竜洋海底谷の冷水湧出域に分布していることが知られていたが, 沖縄トラフ北部伊平屋海嶺の熱水噴出域にも新たに発見された。ニヨリシロウリガイは, これまで知られている南海トラフのユキエ海嶺や東海スラストの冷水湧出域に加え, 琉球海溝(南西諸島海溝)付近の喜界島沖の冷水湧出域から死殻が採集された。エンセイシロウリガイは, これまで知られている沖縄トラフ南奄西海丘に加え, 南海トラフ第二天竜海底谷の冷水湧出域に生息し, さらに南海トラフの室戸海丘と足摺海丘, 琉球海溝付近の黒島海丘から死殻が採集された。ノチールシロウリガイは, 天竜海底谷に加え, 南海トラフの第一南室戸海丘の冷水湧出域から新たに発見された。また, これまで日本周辺の深海化学合成生物群集から出現しているオトヒメハマグリ科に属するシロウリガイ属およびオトヒメハマグリ属二枚貝の地理的分布・鉛直分布をまとめた。そして, 日本周辺ではシロウリガイ属二枚貝の分布は, 熱水噴出や冷水湧出といった化学合成生物群集のタイプの違いや地理的な距離に左右されず, 同じ水深レベルには同じ種が出現する傾向が認められた。
著者
藤原 義弘 小島 茂明 溝田 智俊 牧 陽之助 藤倉 克則
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.307-316, 2000-12-31
被引用文献数
5

日本海溝の超深海域より採集したオトヒメハマグリ科ナラクシロウリガイCalyptogena fossajaponicaの共生細菌の性状を明らかにするため, 形態観察, 硫黄含有量および同位体組成分析, 分子系統解析を行った。透過型電子顕微鏡観察により, この二枚貝の鰓上皮細胞中に多数の細菌を確認した。また, この二枚貝の軟体部の硫黄含有量と硫黄同位体組成の解析により, 硫黄細菌の存在を示唆する結果を得た。更に, この細菌の16SリボソームRNA遺伝子配列を決定し, 系統解析を行ったところ, この細菌は深海の熱水噴出域, 冷水湧出域に生息する他のオトヒメハマグリ科二枚貝の共生硫黄細菌と近縁であった。この共生細菌はガラパゴスシロウリガイ, ナギナタシロウリガイおよびフロリダ海底崖産シロウリガイ類の1種の共生細菌と単系統群を形成した。これら4種の二枚貝は他の多くのシロウリガイ類に比べて大深度に分布していた。シロウリガイ類は種ごとに垂直分布が異なることが知られているが, このような垂直分布様式の違いはそれぞれの共生細菌の影響を受けているのかもしれない。