著者
小島 茂明 渡部 裕美 藤倉 克則
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.118, no.6, pp.1174-1185, 2009-12-25 (Released:2010-03-23)
参考文献数
64
被引用文献数
2 1

In deep-sea reducing environments, such as hydrothermal vent fields and cold seep areas, biological communities with huge biomass are often observed. Such communities associated with bacterial chemosynthesis, which are composed of species endemic to these environments, are founded with hydrothermal activities and succeed with changes of activities. Over a longer timescale, genetic deviations among local populations and speciation occur during the course of a series of activities and finally new faunal groups diverged. We attempt to estimate the ages of various hydrothermal phenomena on various timescales from 10 to 107 years on the basis of the evolutionary ecology of animals endemic to hydrothermal vents as part of the “Taiga project”. In this paper, we introduce communities in hydrothermal vent fields and describe the principals of methodologies for age estimation, which we are now planning, and the expected results.
著者
下畑 光輝 成瀬 聡 渡部 裕美子 田中 一
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.123-128, 2011-01-25 (Released:2011-01-26)
参考文献数
14

中大脳動脈狭窄を伴い脳梗塞を生じた高ホモシステイン(Hcy)血症の1例を経験した.症例は48歳男性.有意な既往や健診異常なし.数分の右半身脱力,しびれが繰り返し生じ入院した.頭部MRI FLAIR画像,拡散強調画像で左被殻後方に高信号,MRAおよび脳血管造影で左中大脳動脈狭窄を認めた.脳血栓症と考えアルガトロバン,エダラボン,アスピリン,シロスタゾールを開始し,5日後より発作は消失した.血液検査で血清総Hcy高値,ビタミンB6低値,葉酸低値を認め,methylenetetrahydrofolate reductase 677多型はTT型であった.高ホモシステイン血症は独立した心血管リスクであり,近年のメタ解析では葉酸,ビタミンB6,B12によるHcy低下を介した脳卒中発症リスクの低減が報告された.原因不明の脳梗塞では高Hcy血症の有無を検索し,葉酸,ビタミンB群の投与を検討してもよいと思われる.
著者
佐々木 猛智 小倉 知美 渡部 裕美 藤倉 克則
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1-2, pp.1-17, 2016-04-13 (Released:2016-04-15)
参考文献数
31

Provanna Dall, 1918ハイカブリニナ属は深海の化学合成生物群集に広く生息し多産するグループである。日本の近海では,ハイカブリニナ属にはP. glabra Okutani, Tsuchida & Fujikura, 1992サガミハイカブリニナ,P. abyssalis Okutani & Fujikura, 2002カイコウハイカブリニナ,P. shinkaiae Okutani & Fujikura, 2002シンカイハイカブリニナの3既知種が分布しており,種によって深度分布と底質が異なる。本研究では南西諸島海域から新たに発見された新種について報告する。貝殻の比較形態学的解析および分子系統解析の結果から,4新種の存在が明らかになった。(1)P. subglabra n. sp.ニヨリハイカブリニナ(似寄灰被蜷:和名新称)は膨らみのある平滑な貝殻で特徴づけられ,沖縄トラフの熱水噴出域では最も多産する。種小名と和名は,本種がかつてP. glabraサガミハイカブリニナに同定されていたことに由来する。(2) P. clathrata n. sp.コウシハイカブリニナ(格子灰被蜷:和名新称)は粗い格子状の彫刻を持ち,沖縄トラフ南部の熱水噴出域に生息する。(3) P. lucida n. sp.ミガキハイカブリニナ(磨灰被蜷:和名新称)の殻は平滑で縫合が深く,今のところ沖縄トラフ北部の南奄西海丘にのみ出現する。(4)P. kuroshimensis n. sp.クロシマハイカブリニナ(黒島灰被蜷:和名新称)の殻は平滑でオリーブ色の殻皮を持ち,黒島海丘に固有である。一方,歯舌の形態は4種の間で明確な差は見られなかった。この発見により,ハイカブリニナ属は南西諸島の狭い範囲で多様化していることが明らかになったが,その要因としては南西諸島海域の化学合成生態系形成域が多様な環境にあることが関係していると考えられる。