著者
中野 典子 森奥 登志江 小川 安子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.71-78, 1988-06-20

調味料の1つ「みりん」の味覚的効果を調べるために東海地区で販売量第1位の市販みりんと醸造元より直接得た古来製法によるみりん及び調味液が添加された調整みりん3種類のみりんを使用し、蒲焼きの「たれ」を作成し、成分の経日変化の測定と官能検査を行った。1)粗たん白質はしだいに増加したが、「たれ」の種類によって増加量に差が見られた。2)粗脂肪量は5回処理蒲焼き操作により約3倍になった。この脂肪の脂肪酸組成はC_<14>〜C_<18>が多く、「たれ」の"なれ"に従ってC_<20>〜C_<22>が減少し、C_<12>が検出されるようになった。3)全糖量は「たれ」の約15%、アルコール度は「たれ」の1回目の処理で3.0〜5.0%前後に減少し、蒲焼き用「たれ」には1%程度残存している。総酸度、アミノ酸度においては「たれ」の"なれ"と共に上昇した。4)官能検査では、1%の危険率で有意差が見られた。以上の実験結果から、短期間処理したものも長期間処理したものも「うなぎのたれ」のそれぞれの成分変化においては両者間に差はみられなかったが、官能検査においては明らかに長期間で作成した「たれ」が好まれた。
著者
中野 典子 森奥 登志江 小川 安子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.411-417, 1986-06-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
4

1) 被検者15名の心拍数と酸素摂取量間の相関係数はおのおの0.9以上であった.2) わさび, にんにく, 辛子, カレー粉, 赤唐辛子等の刺激のある香辛料の香りをかいだときと, バニラエッセンスのような甘い香りをかいだときを比較すると, わさび, にんにく, 辛子, カレー粉, 赤唐辛子等のような刺激性のあるものの場合は1分間あたりの心拍数が90~100回, 平均心拍数97回であった.これに対し, 甘い香りをかいだときは平均心拍数86回であり, 刺激性のある香辛料の香りをかいだときには心拍数は高い値を示した.また, カレー粉の香りをかいだときの消費エネルギー量は, HR-VO2法およびRMR法よりの算出値は, 休息状態での消費エネルギー量にくらべ両方法において高値となった.3) 白飯摂取時1分間あたりの心拍数は平均89回であったが, 白飯にカレー粉をまぜて摂取すると心拍数は平均102回となり, 白飯に赤唐辛子粉をまぜて摂取すると平均心拍数は99回であり, 刺激性の強い香辛料の存在により心拍数は高値を示した.4) 平常食事と刺激性の強い調理品を摂取したときの1分間あたりの心拍数は, 平常食事時では80~90回台であるのに対し, 刺激性の強い調理品摂取時は90~100回台に心拍数が集中しており, 刺激性のある調理品を摂取するときには心拍数は高くなった.5) 消費エネルギー量は平常食事では, 体重1kgあたり1分間, 平均0.037kcalであり, 刺激性の強い調理品摂取時は平均0.056kcalとなり, 刺激性の強い調理品摂取においては, 消費エネルギー量測定値は高く示された.したがって, 食事中の消費エネルギー量は, 刺激性のある調味料の存在と料理の献立により変化することが考えられる.
著者
木村 友子 小川 安子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11, pp.851-860, 1985-11-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
6
被引用文献数
1

肝臓を調理し食べやすくする目的で, 女子大学生210名にレパーに関する意識調査ならびに調理操作上の前処理として, 超音波照射処理による適当な血抜きと, 煮熟後の鶏肝臓の脱臭効果について調べ, さらに洗浄処理後の肝臓を調理し, 官能検査を行い検討し, 次の結果を得た.1) 意識調査では肝臓の喫食率は65.2%であり, 喫食者の肝臓の調理法は, 焼く>炒める>煮る>揚げる>ペースト>その他 (茄でる, 和える) の順位で喫食頻度が高く, また好まれない理由は, 味が悪い>臭み>外観>食べず嫌い>感触>その他 (体質的に合わない) の順位であった.2) 鶏肝臓の血抜き効果においては, 超音波洗浄処理法は, 単なる水洗い処理法よりも効果が著しかった.超音波照射処理時間数は一般的な若鶏肝臓は10分間, 老鶏 (メス, 品種 : ピルチ) の肝臓は5分間が適当と思われた.また洗浄洗液には0.5~1.5%の食塩水が有効で, 洗浄液のpHの影響 (0.2Mリン酸-0.1Mクエン酸の緩衝液を用いた場合) は, pH5.6, 7.0より, pH 3.4, 4.4, 8.0の場合, やや効果的であったが, 嗜好面や外見上, 食用には供しにくくなるものと思われた.3) 鶏肝臓の脱臭効果については, 超音波洗浄処理した肝臓は, 対照の単なる水洗い処理した肝臓より臭みが緩和されることを認めた.4) 官能検査においては, 一般的な若鶏肝臓を用い, 調理法として煮る, 茄でる場合に, 下処理として超音波10分間照射処理したものが, 対照の単なる水洗い処理のものよりおいしく, 臭気が少なく, 総合評価にも, 有意に好まれ, 効果的であった.しかし炒め焼きの調理法では両者間に有意差なしの判定で, 強いて超音波照射の必要はないものと判断される.またパネル者間では老鶏 (メス, 品種 : ピルチ) の肝臓は, においが少ないが, 外観 (色) ・感触・総合に, 一般的な若鶏 (100日生育鶏) の肝臓に比すれば, 好まれない傾向であった.
著者
木村 友子 梅村 けい子 小川 安子 小川 政禧
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.22, no.9, pp.655-659, 1969 (Released:2009-11-16)
参考文献数
5

以上述べたように蔬菜果実類に対する超音波洗滌処理は銅イナン含有農薬添付による残留銅イオンの除去に対し非常に有効であることが判る。しかし, 処理の条件によっては, 組織, 細胞を破壊し, 食用に供し難くなる怖れなしとしない。最初1分間の超音波処理による急激な第1次的洗滌効果に比し, 5分間, 10分間と処理時間を延長した時, 処理時間に比例してなされる銅イオンの除去は困難であって, 完全に除去しようと試みれば遂には組織, 細胞の破壊を招く。従って, 組織, 細胞を損傷することなく, 付着する銅イナンを除去するためには, 更に検討を要するものと思われる。本研究の要旨は昭和43年12月1日, 日本家政学会中部支部第15回例会においてこれを報告した。