著者
中島 けい子 福本 順子 中野 典子 小川 政禧
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.261-268, 1976-09-10 (Released:2010-02-22)
参考文献数
5
被引用文献数
1

1) N-50-4型 (東洋理工製作所, 20KHz) 超音波発振装置を用い, 1gのパセリを30mlの蒸留水で洗浄すると, 10分間でパセリの細菌の残存率は約10%に低下し, 洗液中にはほとんど残存せず, 未洗浄パセリに付着していた細菌の約90%が殺菌されたことになる。しかし単なる振り洗いをわずか1分間行なうことによって, この超音波処理と同じ程度の洗浄効果が得られ, 振り洗いのほうがむしろ効率がよかった。2) Bransonic 12型 (Branson社, 50KHz) 超音波洗浄器を用い, 50gのパセリを1lの蒸留水で洗浄すると, 10分間でなおパセリと洗液の細菌の残存率はそれぞれ約25%と45%であって, 未洗浄パセリに付着していた細菌の約30%が殺菌されたにすぎず, N-50-4型超音波発振装置による洗浄効果に劣る。しかし, 同量のパセリを攪拌洗浄した場合, 殺菌効果はほとんど認められず, 未洗浄パセリに付着していた細菌の約30%がパセリに, 約70%が洗液に検出された。それゆえに, 相当量のパセリを洗浄する場合には超音波洗浄のほうがやや有効と判断されるが, その効果は顕著ではなかった。3) 20gのパセリを1lの容器に入れ, 水道水で流水洗浄すると, 1分間でパセリに残存する細菌は未洗浄パセリに付着していた細菌の数%にすぎず, 本実験で行なわれた他のいずれの方法よりも有効であった。
著者
中野 典子 森奥 登志江 小川 安子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.71-78, 1988-06-20

調味料の1つ「みりん」の味覚的効果を調べるために東海地区で販売量第1位の市販みりんと醸造元より直接得た古来製法によるみりん及び調味液が添加された調整みりん3種類のみりんを使用し、蒲焼きの「たれ」を作成し、成分の経日変化の測定と官能検査を行った。1)粗たん白質はしだいに増加したが、「たれ」の種類によって増加量に差が見られた。2)粗脂肪量は5回処理蒲焼き操作により約3倍になった。この脂肪の脂肪酸組成はC_<14>〜C_<18>が多く、「たれ」の"なれ"に従ってC_<20>〜C_<22>が減少し、C_<12>が検出されるようになった。3)全糖量は「たれ」の約15%、アルコール度は「たれ」の1回目の処理で3.0〜5.0%前後に減少し、蒲焼き用「たれ」には1%程度残存している。総酸度、アミノ酸度においては「たれ」の"なれ"と共に上昇した。4)官能検査では、1%の危険率で有意差が見られた。以上の実験結果から、短期間処理したものも長期間処理したものも「うなぎのたれ」のそれぞれの成分変化においては両者間に差はみられなかったが、官能検査においては明らかに長期間で作成した「たれ」が好まれた。
著者
馬場 景子 中野 典子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成17年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.33, 2005 (Released:2005-09-13)

山芋(自然薯)は、日本にある在来種の代表的なものである。しかし儀礼食として捉えられることが、今までほとんどなかった。馬場・中野は、山芋がとろろ飯として調理され、正月に食べられることに着目し調査を行なってきた。 調査から、正月に食べられるとろろ飯には、日常的に食べられるとろろ飯とは異なり、ハレの食としてとろろ飯を食べる文化的な理由が明らかになってきた。正月のとろろ飯の食習の特長の一つは、地域により、付加された意味が異なっている点である。民衆を中心に行なわれてきた行事一般に言えることであるが、中心から周辺に伝播されるに従い、本来の意味が失われ、伝播の途中から別の意味が含まれることがある。正月のとろろ飯食習は、まさにこの文化伝播の代表的な例である。 しかしこの食習は単に一地域の行事食ではなく、東日本を中心に正月の行事を関わりの深い行事食として分布傾向は、東北地方、甲信越、中部にはこの食習慣が多く分布している。東高西低の分布を示している。 本発表では、次の三点に焦点をあてる。(1)分布状況(日本での分布)(2)付随する行事(3)節句としての正月料理このことを考察することにより、正月のとろろ飯研究の重要性を示唆していく。
著者
中野 典子 森奥 登志江 小川 安子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.411-417, 1986-06-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
4

1) 被検者15名の心拍数と酸素摂取量間の相関係数はおのおの0.9以上であった.2) わさび, にんにく, 辛子, カレー粉, 赤唐辛子等の刺激のある香辛料の香りをかいだときと, バニラエッセンスのような甘い香りをかいだときを比較すると, わさび, にんにく, 辛子, カレー粉, 赤唐辛子等のような刺激性のあるものの場合は1分間あたりの心拍数が90~100回, 平均心拍数97回であった.これに対し, 甘い香りをかいだときは平均心拍数86回であり, 刺激性のある香辛料の香りをかいだときには心拍数は高い値を示した.また, カレー粉の香りをかいだときの消費エネルギー量は, HR-VO2法およびRMR法よりの算出値は, 休息状態での消費エネルギー量にくらべ両方法において高値となった.3) 白飯摂取時1分間あたりの心拍数は平均89回であったが, 白飯にカレー粉をまぜて摂取すると心拍数は平均102回となり, 白飯に赤唐辛子粉をまぜて摂取すると平均心拍数は99回であり, 刺激性の強い香辛料の存在により心拍数は高値を示した.4) 平常食事と刺激性の強い調理品を摂取したときの1分間あたりの心拍数は, 平常食事時では80~90回台であるのに対し, 刺激性の強い調理品摂取時は90~100回台に心拍数が集中しており, 刺激性のある調理品を摂取するときには心拍数は高くなった.5) 消費エネルギー量は平常食事では, 体重1kgあたり1分間, 平均0.037kcalであり, 刺激性の強い調理品摂取時は平均0.056kcalとなり, 刺激性の強い調理品摂取においては, 消費エネルギー量測定値は高く示された.したがって, 食事中の消費エネルギー量は, 刺激性のある調味料の存在と料理の献立により変化することが考えられる.
著者
馬場 景子 中野 典子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成18年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.3, 2006 (Released:2006-09-07)

〔目的と背景〕正月に食べられるとろろ飯は、餅の形・年取りの魚と同様に日本の東西文化の指標になる可能性を明らかにした。日本の民俗学研究では、在来種である山芋に関しての調査が行われてこなかった。そのことが儀礼食としての山芋調査が行われなかった理由の一つである。先行調査により山芋が儀礼食であることを想定し、山芋の調理法の一つであると考えられるとろろ飯に注目した調査を行ってきた。その結果、正月に食されるとろろ飯は、正月の儀礼食であることを明らかにした。さらに東日本を中心に分布していることも明らかにしてきた。本発表では、この儀礼食の東西分岐の分布集積地が愛知県知多半島であることの可能性を示唆する。〔方法〕資料調査、アンケート調査〔結果〕調査により、正月のとろろ飯は儀礼食としての役割を果たしていることが明らかになった。さらに東西文化の食の一つとなる可能性が高いとの推論を出すことができた。愛知県の知多半島での調査結果を示し、分布状況から、伝播起点を想定する。
著者
後藤 桂葉 服部 イク 大野 知子 中野 典子 石川 昌子 熊沢 昭子 磯部 しづ子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.223-237, 1982

1940年以後日本において行われた栄養調査のうち, 高校生, 短大生, 大学生を対象とした栄養調査について経年的にその特徴を明らかにすることを試みた。<br>1) 文献数の最も少ないものは高校生を対象としたもので, 多かったのは女子短大生の調査であった。<br>2) 女子大生および短大生調査では, 家政科系でしかも普通の学生生活を営む学生を対象とした報告が多い。栄養素摂取量は1965年以後VAとCaを除き, バラツキの幅が少なくなる傾向がみられる。しかし, VAは1970年以後, 中部地区の調査において低値の報告がみられるところから, 今後の動向が注目される。<br>3) 女子大生調査の傾向は, 短大生と類似していた。<br>4) 食品群別摂取量の記載は, 1965年以後に多くみられた。このうち, 多くの報告に緑黄色野菜の少ないことを示していた。<br>5) 男子大学生は寮生, 寮食の調査が多くみられた。栄養素量では, たん白質摂取量は1958年以後77g程度に集中していた。<br>6) 各文献の報告者が指摘する問題点としてあげられている栄養素は, いずれのライフステージにおいてもVAとCa, 次いで, VB<sub>1</sub>, VB<sub>2</sub>など微量栄養素であった。
著者
馬場 景子 中野 典子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
巻号頁・発行日
pp.30, 2007 (Released:2007-08-30)

【目的】 正月のとろろ飯の調査開始から、正月に食されるとろろ飯は、年取りの魚や雑煮の餅の形と同様に、東西文化の指標となる儀礼食であることが判明した。とろろの材料である山芋は、日本の農耕文化の発達過程において稲に先行する作物であり、儀礼食として東日本を中心に連綿と食されてきた食であったにも関わらず、全国的な調査が行われていないのが現状である。その結果、正月のとろろ飯は、郷土食として位置付けされているに留まっている。本研究では、正月のとろろ飯を東西文化の指標となる儀礼食であると捉え東西文化の分岐集中地域を、調査より知多半島であることを確認した。【方法】 知多半島の市町村の教育委員会に調査を依頼し、地域特徴が明確になる中学校に在籍する生徒の父兄にアンケートを実施した。また地元の郷土学習会へもアンケートを実施し、世代差間の調査を行った。【結果】 アンケートの結果から知多半島では一月二日の朝にとろろ飯を食べることが多いことが分かった。また一月二日は、知多半島では予祝儀礼である「仕事はじめ」の儀式が行われていることから、半田市ではこの儀礼と結び付き正月のとろろ飯が食されていた。また半田市に隣接する武豊町では、松の内に食する習慣があり、必ずしも正月のとろろ飯が一定の日程で行われている行事ではなく、日程のバリエーションが存在することが判明した。さらに全国的に見た場合は、明治初年の改暦により儀礼の意味に差が存在することが判明した。儀礼のバリエーションとしては、新しい儀礼食の発生を意味するで、あろう事例も発見できた。分布に関しては、北高南低の分布傾向があった。
著者
馬場 景子 中野 典子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成20年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.34, 2008 (Released:2008-08-29)

「正月のとろろ飯」習慣を単に郷土食としてではなく、東西文化の分岐の指標と規定できる食習慣であることを今までの調査で明らかにしてきた。さらに「正月のとろろ飯」の東西分岐地域は愛知県知多半島であることを聞き取り調査により推定した。知多半島の市町村の教育委員会の協力を得て、各中学校の父兄および郷土研究会の会員を対象に2006年8月から12月の期間にアンケート調を行った。今回の発表では、アンケート調査の結果をもとに、「正月のとろろ飯」習慣が集中的に現存する知多半島での、当該習慣の推移、伝播経路、とろろ飯に付随する行事食の発生を報告する。
著者
馬場 景子 中野 典子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.30, 2007

<BR><B>【目的】</B><BR> 正月のとろろ飯の調査開始から、正月に食されるとろろ飯は、年取りの魚や雑煮の餅の形と同様に、東西文化の指標となる儀礼食であることが判明した。とろろの材料である山芋は、日本の農耕文化の発達過程において稲に先行する作物であり、儀礼食として東日本を中心に連綿と食されてきた食であったにも関わらず、全国的な調査が行われていないのが現状である。その結果、正月のとろろ飯は、郷土食として位置付けされているに留まっている。本研究では、正月のとろろ飯を東西文化の指標となる儀礼食であると捉え東西文化の分岐集中地域を、調査より知多半島であることを確認した。<BR><B>【方法】</B><BR> 知多半島の市町村の教育委員会に調査を依頼し、地域特徴が明確になる中学校に在籍する生徒の父兄にアンケートを実施した。また地元の郷土学習会へもアンケートを実施し、世代差間の調査を行った。<BR><B>【結果】</B><BR> アンケートの結果から知多半島では一月二日の朝にとろろ飯を食べることが多いことが分かった。また一月二日は、知多半島では予祝儀礼である「仕事はじめ」の儀式が行われていることから、半田市ではこの儀礼と結び付き正月のとろろ飯が食されていた。また半田市に隣接する武豊町では、松の内に食する習慣があり、必ずしも正月のとろろ飯が一定の日程で行われている行事ではなく、日程のバリエーションが存在することが判明した。さらに全国的に見た場合は、明治初年の改暦により儀礼の意味に差が存在することが判明した。儀礼のバリエーションとしては、新しい儀礼食の発生を意味するで、あろう事例も発見できた。分布に関しては、北高南低の分布傾向があった。