著者
有賀 久哲 山田 章吾 高井 良尋 根本 建二 小川 芳弘 角藤 芳久 メヒア マルコ 西平 哲郎
出版者
Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology
雑誌
The Journal of JASTRO (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.347-355, 1996

目的: 食道癌に対する術後照射の有用性を検討する目的で, 術後照射例の治療成績を非照射例と比較してretrospectiveに解析した.対象と方法: 1981年から1990年までに当施設にて治療した根治切除食道癌278例を対象とした.術後照射併用183例 (RT (+) 群), 非併用95例 (RT (-) 群) であり, IV期症例, 術死症例は予め解析から除外した・術後照射は, 両鎖骨上窩と全縦隔を含めたT字形照射野を原則とし, 総線量30-60Gy (平均41.9Gy) であった.90例にpeplomycinまたはcisplatin, vindesine (CDDP併用療法) を用いた同時化学療法が併用された.RT (-) 群に対しても, 42例に強力化学療法が併用された.鎧塁: 各治療群の5年, 10年生存率は, RT (+) 群が47.2%, 30.4%, RT (-) 群が43.0%, 23.7%であったが, 統計学的肴意差はなかった.化学療法併用例に限ると5年生存率はRT (+) 群47.7%, RT (-) 群23.7%(P=0.684) であった.有意予後因子は, N因子 (p<0.0001), T因子 (p=0.0013), 年齢 (p=0.0091), CDDP併用療法 (p=0.0123) であった.再発様式では, T字形照射域の再発率がRT (+) 群18.6%, RT (-) 群37.6%であり, 前者が有意に低かった (p=0.0068).結語: 根治切除食道癌に対する術後照射は, 照射野内再発を有意に減少するが, 生存率の改善は得られなかった.化学療法の同時併用により, 生存率を改善する可能性が示唆された.
著者
松本 尚英 小川 芳弘 中村 政明 島本 知茂
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

光、温度などの外部情報で制御できる新しい物質群を創生した。1、外部摂動により高スピンと低スピン状態間を相互変換するスピンクロスオーバー分子。2、一つの分子が磁気履歴をもつ単分子磁石、単一次元磁石。1では特異な性質を示す新しい錯体群を見出した。(A)イミダゾール含有直鎖上配位子の鉄錯体で一次元集積構造と熱履歴をもつスピンクロスオーバー錯体を合成した。(B)3座配位子鉄錯体に水素結合とπ-π相互作用を導入して熱履歴を実現した。(C)鉄錯体で2段階スピン転移をもち、さらにこの中間状態が異常に安定な錯体を合成した。(D)組成式[Fe(H_3L)]CIXをもつ一連の三脚型鉄錯体を合成した。塩化物イオンとイミダゾール基間の水素結合が2次元層構造を形成する。層間を埋める陰イオンXの大きさ、形状によりスピン転移挙動は大きく変化し、一段階、二般階スピン転移をはじめとする多なスピン転移を陰イオンの選択で実現した。さらに高スピンと低スピンが共存する中間般階ではキラリティが発現した。(E)(D)の系では、掌性の起源をさぐるアイデアが生まれた。もともと三脚型鉄錯体は右巻きと左巻きの分子があるが、高スピン状態では右巻き分子の隣に左巻き分子が水素結合で連結して二次元層構造を形成していた。右巻きと左巻きのキラリティ以外では構造的違いがない。ところが中間状態では、右巻き分子は高スピンのまま、左巻き分子は低スピンへと変化し、光学活性な空間群へと変化したと解釈された。しかしこのときのFlack値は0.5であり、外部摂動によるFlack値の偏りを探る研究の端緒となる。一方、単分子磁石、単一次元磁石の研究では、希土類の磁気異方性を利用して一次元鎖錯体をいくつか合成した。この分子系の分子修飾により新しい単一次元磁石を模索した。