著者
佐山 淳造 標葉 隆三郎 横田 憲一 平山 克 樋口 則男 大江 洋文 中野 達也 宮田 剛 菅原 浩 植田 治昌 西平 哲郎 森 昌造
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.841-848, 1994-04-01
被引用文献数
32

手術侵襲に対する過大な生体反応の制御を目的に,食道癌手術症例に対し手術開始2〜3時間前にmethylprednisolone 250mg/bodyを投与(B群:n=8)し,コントロール群(A群:n=9)と比較検討した.心係数・平均肺動脈圧・肺動脈楔入圧の変動に差はなかったが,体重・水分1次出納はB群で1日早く回復した.術後頻拍はB群で有意に制御され,不整脈の発生もB群で少ない傾向であった.A群で術後著増したIL-6やG-CSFはB群では有意に産生が抑制され,尿中カテコールアミン排泄量もB群で著減した.耐糖能異常・術後感染・縫合不全などステロイド剤の副作用は術後みられず,術後のリンパ球数減少もB群で抑えられた.したがって,術前ステロイド投与は食道癌手術侵襲に対する過大な生体反応を主に循環系の面で抑制し,不整脈などの合併症発生を減少させうることが示唆され,胸部食道癌手術後の患者管理において非常に有用と考えられた.
著者
西平 哲郎 SIMON S.L. TROTT K.R. 田口 喜雄 木村 伯子 土井 秀之 黒川 良望 藤盛 啓成 標葉 隆三郎 里見 進
出版者
東北大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

1、調査・研究経過:1993年1月より1994年8月までにクワジャレイン環礁イ-バイ島(1993年1-3月)、マジュロ環礁(1994年3-8月)においてマーシャル諸島住民計6638人全員に超音波断層撮影装置による甲状腺スクリーニング検査を行い、触診で触知する甲状腺結節に対して21あるいは22G針による穿刺吸引細胞診を行った。これらの受診者に対して検診と同時に家族歴、生活歴、食習慣の詳細な聞き取り調査を行った。1959年以前の出生者、すなわち核実験による直接被曝の可能性のあった者は対象者中5016人であり、これは同年齢層のマーシャル諸島住民の約60%に相当した。マジュロ環礁においては2102人に甲状腺機能検査、3008人に自己抗体検査、310人に尿中ヨード測定を実施した。1995年度はこれらの結果のデータベース入力作業を行った。調査としてはイ-バイ島住民306人の追跡調査による甲状腺結節の経時的変化の検討と、1994年マジュロ検診で甲状腺癌が疑われた55人中31人の手術標本を入手し、平成8年3月現在、臨床病理学的検討を行っている。データベースの誤入力の訂正作業がまだ終了しておらず以下の結果は暫定的なものである。また、生活歴と現在の放射能汚染状況および過去の汚染データから推定予定であった住民の推定被曝線量については共同研究者のサイモン博士がマーシャル諸島共和国政府より同国の研究所より解雇されたため、本年は進展できなかった。2、結果:被曝の可能性があった住民(1959年以前に出生)女性の超音波診断では甲状腺結節有病者は受診者の44%であった。穿刺吸引細胞診は648人に施行し、診断率は70%で甲状腺癌の診断となったものは21人であった。触診所見、超音波診断をも考慮して臨床的には77人、1.2%に甲状腺癌が疑われた。これら癌の疑われた受診者の中、手術を受けたイ-バイ島住民12例(他施設病理診断を含む)では、乳頭癌6例、濾胞癌3例、微小乳頭癌2例であった。甲状腺機能検査では10人0.5%がTSH 5.1μU/ml以上の化学的甲状腺機能低下であった。甲状腺自己抗体検査ではTGHAあるいはMCHAのどちらかが陽性であったものは67人2.2%であった。尿中ヨード排泄量の測定では尿中ヨード/クレアチニン比で検討すると22%がWHO基準で中等度あるいは強度のヨード欠乏という結果であった。3、まとめ:超音波診断で甲状腺有結節者とされた女性の年齢別頻度は、年齢とともに増加しており、同様の方法で我々が調査した中国のデータと比較すると、ヨード欠乏地帯よりは低頻度であり、また非ヨード欠乏地帯よりは高頻度であった。甲状腺癌の頻度についてはイ-バイ島の結果から30才以上の女性で約2%と推定され、文献的には甲状腺結節性病変および甲状腺癌の有病率はマーシャル諸島住民で高率である。しかし、切除標本では濾胞癌の頻度が比較的高く(3例/12例)、放射線被曝を原因とするには従来の見解と矛盾すること。また、尿中ヨード排泄の結果からは、住民がヨード欠乏状態にある可能性がうかびあがり、放射線被曝以外の要因も考慮しなければならない結果となった。この研究はマーシャル諸島住民の個々の推定被曝線量と甲状腺結節病変の頻度との間の相関性を求め、それから被曝との因果関係を推定しようとするものである。平成8年度は協同研究者のトロット教授がサイモン博士に代わって被曝線量の推定を行うことになっており、結論を得るためにはその結果をまたなければならない。4、今後の予定:甲状腺疾患の疫学的調査、追跡調査を引き続き行うが、特に、対象住民の居住地域の偏りを少なくするためにouter atollと呼ばれる、マーシャル諸島辺縁の島々の住民を重点的に行う予定である。また、放射線被曝量との関係を検討するとともに、ヨード摂取量と結節性甲状腺腫との発生頻度との関係について検討する。さらに、切除標本をもとにマーシャル諸島住民の甲状腺癌の遺伝子異常の特徴を解明し、被曝との因果関係について検討を行う。
著者
有賀 久哲 山田 章吾 高井 良尋 根本 建二 小川 芳弘 角藤 芳久 メヒア マルコ 西平 哲郎
出版者
Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology
雑誌
The Journal of JASTRO (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.347-355, 1996

目的: 食道癌に対する術後照射の有用性を検討する目的で, 術後照射例の治療成績を非照射例と比較してretrospectiveに解析した.対象と方法: 1981年から1990年までに当施設にて治療した根治切除食道癌278例を対象とした.術後照射併用183例 (RT (+) 群), 非併用95例 (RT (-) 群) であり, IV期症例, 術死症例は予め解析から除外した・術後照射は, 両鎖骨上窩と全縦隔を含めたT字形照射野を原則とし, 総線量30-60Gy (平均41.9Gy) であった.90例にpeplomycinまたはcisplatin, vindesine (CDDP併用療法) を用いた同時化学療法が併用された.RT (-) 群に対しても, 42例に強力化学療法が併用された.鎧塁: 各治療群の5年, 10年生存率は, RT (+) 群が47.2%, 30.4%, RT (-) 群が43.0%, 23.7%であったが, 統計学的肴意差はなかった.化学療法併用例に限ると5年生存率はRT (+) 群47.7%, RT (-) 群23.7%(P=0.684) であった.有意予後因子は, N因子 (p<0.0001), T因子 (p=0.0013), 年齢 (p=0.0091), CDDP併用療法 (p=0.0123) であった.再発様式では, T字形照射域の再発率がRT (+) 群18.6%, RT (-) 群37.6%であり, 前者が有意に低かった (p=0.0068).結語: 根治切除食道癌に対する術後照射は, 照射野内再発を有意に減少するが, 生存率の改善は得られなかった.化学療法の同時併用により, 生存率を改善する可能性が示唆された.