著者
山口 訓史 後藤 丹十郎 小日置 佳世子 大谷 翔子 吉田 裕一
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:21867755)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.29-34, 2013-02-01

As occurrence of abnormal inflorescence in Gypsophila paniculata 'Altair' is caused by environmental conditions, effects of day length, supplemental lighting strength, shading period and minimum night temperature on occurrence of abnormal inflorescence were investigated. Abnormal inflorescence was classified into four types : normal, pattern 1 (Short-flower stalk), pattern 2 (Coalescent two-flower stalk) and pattern 3 (Looping and irregular-flower stalk). Neither of 12h, 16h, 20h or 24h day length by fluorescent lamp, nor 24h by incandescent lamp affected occurrence of abnormal inflorescence. Effects of four levels of light intensity (fluorescent lamp : PPFD 1μmol・m−2・s−1, incandescent lamp : PPFD 3μmol・m−2・s−1, metal halide lamp : PPFD 14μmol・m−2・s−1 and high-pressure sodium lamp : PPFD 48μmol・m−2・s−1) were examined in 16h photoperiod. Occurrence of abnormal inflorescence was not affected by different light intensities, neither was it affected by shading period. Occurrence of abnormal inflorescence at 15°C was however significantly reduced compared to that at 8°C. In particular, patterns 2 and 3 at 15°C were significantly reduced compared to those at 8°C. There was a strong negative correlation between average night temperature from starting the treatment to flower budding (7.1°C, 9.0°C, 9.2°C, 11.6°C and 16.4°C) and incidence of pattern 3 (13.1%, 8.7%, 7.1%, 1.1% and 0.7%). Therefore, as average night temperature increased, occurrence of abnormal inflorescence decreased. The results show that low night temperature may be the main factor inducing occurrence of abnormal inflorescence.シュッコンカスミソウ'アルタイル'の形態異常花序の発生には環境要因が関与していると考えられたので,日長,補光強度,遮光時期および最低夜温が形態異常花序発生に及ぼす影響を調査した.形態異常程度は4種類のパターン (0:正常,1:茎が短いもの,2:2本の茎が癒着,3:ひどく湾曲し変形したもの) に分類し,その影響を受けた小花の割合を求めた.蛍光灯による日長処理(12時間,16時間,20時間,24時間)や白熱灯による日長処理(自然日長,24時間)は形態異常花序発生率に影響を及ぼさなかった.蛍光灯(PPFD 1μmol・m-2・s-1),白熱灯(PPFD 3μmol・m-2・s-1),メタルハライドランプ(PPFD 14μmol・m-2・s-1),高圧ナトリウムランプ(PPFD 48μmol・m-2・s-1)を用いて16時間の補光を行った.異なる光源による光強度でも形態異常発生率に一定の傾向は認められなかった.遮光時期を変えても形態異常発生率に一定の傾向は認められなかった. 最低夜温を15℃に上げると8℃区と比較して15℃区の形態異常発生は大きく減少した.特にパターン2と3の発生率は大幅に低下した.各実験の処理開始から発蕾までの平均夜温(7.1℃,9.0℃,9.2℃,11.6℃,16.4℃)と,パターン3の形態異常発生率(13.1%,8.7%,7.1%,1.1%,0.7%)との間に高い負の相関(R2=0.849)が認められ,処理開始から発蕾までの平均夜温が高いほど形態異常発生率は低下した.以上のことから,形態異常花序発生には夜間の温度が大きく関与しているのではないかと推察された.
著者
山口 訓史 後藤 丹十郎 小日置 佳世子 大谷 翔子 田中 義行 吉田 裕一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.161-167, 2014
被引用文献数
1

最低気温がシュッコンカスミソウ'アルタイル'の形態異常花序発生および切り花形質に及ぼす影響を調査した.形態異常花序を異常の特徴と程度に基づき3つのタイプ(1:茎が短いもの,2:2本の茎が癒着,3:ひどく湾曲し変形したもの)に分類した.形態異常花序の発生は初冬から早春にかけて増加した.軽度なタイプ1とタイプ2による形態異常は,開花時期に関係なくほぼ一定の割合で発生が認められたのに対して,切り花の外観を大きく損なうタイプ3は3月開花の個体で大幅に増加した.最低気温(7°C, 11°C, 15°C)が形態異常発生に及ぼす影響を調査したところ,タイプ3は最低気温が低いほど発生率が高かった.一方,切り花長,切り花重は最低気温が高いほど劣ることが明らかになり,形態異常花序発生を抑制したうえで,十分なボリュームの切り花を得るためには11°Cの加温が有効であると考えられた.栽培期間中の低温への積算遭遇時間とタイプ3の発生割合の関係を分析したところ,発蕾から開花までの積算低温遭遇時間と形態異常花序発生の間に相関は認められず,摘心から発蕾までの積算低温遭遇時間と形態異常花序発生との間には有意な相関が認められたことから,摘心から発蕾の期間における9°C以下の低温遭遇が重度の形態異常花序(タイプ3)の発生に関与することが示唆された.