著者
花田 惇史 吉田 裕一 佐藤 卓也 後藤 丹十郎 安場 健一郎 田中 義行
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.161-169, 2016 (Released:2016-06-30)
参考文献数
27
被引用文献数
3 4

近年,受粉用ミツバチがしばしば不足し,果実を中心に園芸作物の生産コスト増大や品質低下を引き起こしている.その解決策の一つとして,医療用の無菌ウジ増殖技術を応用して生産したヒロズキンバエについて,施設栽培作物の花粉媒介昆虫としての実用化の可能性を検討した.イチゴ,トマト,ナスおよびメロンを対象として,開花期にヒロズキンバエをハウス内に放飼し,着果率や果実形態の比較によって,各作物への受粉効果を調査した.トマト,ナスおよびメロンにおいては,明確な着果促進効果は得られなかった.一方,イチゴでは,ハエは羽化直後から盛んに花に飛来する姿が観察され,ハエ搬入前と比較して受精不良果発生率は大きく低下した.ただし,90 m2当たり400頭の搬入では品種によって効果が不十分であった.しかし,1000頭搬入した場合は,ミツバチと同等の効果が得られたことから,ヒロズキンバエはミツバチの代替ポリネーターとして十分利用可能であると考えられた.
著者
山口 訓史 後藤 丹十郎 大谷 翔子 安場 健一郎 田中 義行 吉田 裕一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.261-266, 2015

生育段階の異なるシュートに対する温度条件がシュッコンカスミソウ'アルタイル'の形態異常花序発生に及ぼす影響を検討した.シュート長20 cmから2週間15°Cに加温することで,8週間15°Cに加温した場合と同様に,形態異常花序発生が軽減された.2週間加温した個体の切り花長と切り花重は,8週間加温した個体よりも大きくなった.形態異常花序が発生するシュート長と頂芽における花芽分化段階との関係を調べたところ,頂芽のステージが栄養成長からがく片形成期に当たるシュート長が約1~20 cmから15日間の15°C加温で最も形態異常花序が抑制できた.形態異常花序に及ぼす低温の影響を明確にするため,異なる生育段階に対する低温遭遇(7°C)が形態異常花序発生に及ぼす影響を調査した.異なる生育段階に高温(15°C)に遭遇させた実験と同様に,頂芽のステージが栄養成長からがく片形成期までの低温遭遇が形態異常花序発生に大きく関与していた.以上のことから,摘心直後からがく片形成期の期間,株を低温に遭遇させないように温度管理することで,形態異常花序の発生を抑制でき,切り花形質も改善できると考えられた.
著者
山口 訓史 後藤 丹十郎 小日置 佳世子 大谷 翔子 吉田 裕一
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:21867755)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.29-34, 2013-02-01

As occurrence of abnormal inflorescence in Gypsophila paniculata 'Altair' is caused by environmental conditions, effects of day length, supplemental lighting strength, shading period and minimum night temperature on occurrence of abnormal inflorescence were investigated. Abnormal inflorescence was classified into four types : normal, pattern 1 (Short-flower stalk), pattern 2 (Coalescent two-flower stalk) and pattern 3 (Looping and irregular-flower stalk). Neither of 12h, 16h, 20h or 24h day length by fluorescent lamp, nor 24h by incandescent lamp affected occurrence of abnormal inflorescence. Effects of four levels of light intensity (fluorescent lamp : PPFD 1μmol・m−2・s−1, incandescent lamp : PPFD 3μmol・m−2・s−1, metal halide lamp : PPFD 14μmol・m−2・s−1 and high-pressure sodium lamp : PPFD 48μmol・m−2・s−1) were examined in 16h photoperiod. Occurrence of abnormal inflorescence was not affected by different light intensities, neither was it affected by shading period. Occurrence of abnormal inflorescence at 15°C was however significantly reduced compared to that at 8°C. In particular, patterns 2 and 3 at 15°C were significantly reduced compared to those at 8°C. There was a strong negative correlation between average night temperature from starting the treatment to flower budding (7.1°C, 9.0°C, 9.2°C, 11.6°C and 16.4°C) and incidence of pattern 3 (13.1%, 8.7%, 7.1%, 1.1% and 0.7%). Therefore, as average night temperature increased, occurrence of abnormal inflorescence decreased. The results show that low night temperature may be the main factor inducing occurrence of abnormal inflorescence.シュッコンカスミソウ'アルタイル'の形態異常花序の発生には環境要因が関与していると考えられたので,日長,補光強度,遮光時期および最低夜温が形態異常花序発生に及ぼす影響を調査した.形態異常程度は4種類のパターン (0:正常,1:茎が短いもの,2:2本の茎が癒着,3:ひどく湾曲し変形したもの) に分類し,その影響を受けた小花の割合を求めた.蛍光灯による日長処理(12時間,16時間,20時間,24時間)や白熱灯による日長処理(自然日長,24時間)は形態異常花序発生率に影響を及ぼさなかった.蛍光灯(PPFD 1μmol・m-2・s-1),白熱灯(PPFD 3μmol・m-2・s-1),メタルハライドランプ(PPFD 14μmol・m-2・s-1),高圧ナトリウムランプ(PPFD 48μmol・m-2・s-1)を用いて16時間の補光を行った.異なる光源による光強度でも形態異常発生率に一定の傾向は認められなかった.遮光時期を変えても形態異常発生率に一定の傾向は認められなかった. 最低夜温を15℃に上げると8℃区と比較して15℃区の形態異常発生は大きく減少した.特にパターン2と3の発生率は大幅に低下した.各実験の処理開始から発蕾までの平均夜温(7.1℃,9.0℃,9.2℃,11.6℃,16.4℃)と,パターン3の形態異常発生率(13.1%,8.7%,7.1%,1.1%,0.7%)との間に高い負の相関(R2=0.849)が認められ,処理開始から発蕾までの平均夜温が高いほど形態異常発生率は低下した.以上のことから,形態異常花序発生には夜間の温度が大きく関与しているのではないかと推察された.
著者
吉田 裕一 尾崎 英治 村上 賢治 後藤 丹十郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.343-349, 2012 (Released:2012-10-24)
参考文献数
27
被引用文献数
8 11

低コストで簡便な促成栽培イチゴの新しい花芽分化促進法として間欠冷蔵処理を考案して‘女峰’のトレイ苗に試みたところ,体内非構造炭水化物濃度の低下が抑制され,顕著な開花促進効果が認められた.果実予冷用に用いられるプレハブ冷蔵庫を用いて 13℃暗黒の冷蔵庫内と戸外の 50%遮光条件下に 2,3,4 日間ずつ交互におく処理をそれぞれ 4,3,2 回繰り返し行った.冷蔵庫の利用効率を高めることを前提として,冷蔵庫と戸外で経過する期間は同一とし,交互に入れ替える 2 処理区をそれぞれに設定した.相互の移動は正午頃に行い,処理期間中の戸外の環境条件は,日平均気温 22.5~29℃,日長 12.4~13.1 時間(日の出から日没まで)であった.ピートバッグに定植し,12 日間連続で低温暗黒処理を行った処理区および無処理の対照区と比較したところ,いずれの処理においても,冷蔵処理区は無処理区より 6~10 日早く開花した.12 日間連続処理区と同じ日に処理を開始してその中間で 4 日間戸外においた間欠冷蔵処理区とを比較すると,9 月 13 日定植では 15 日,9 月 17 日定植でも 4 日早く間欠冷蔵処理区が開花した.冷蔵を中断し,2~4 日間戸外で光合成を行わせることによって炭水化物栄養条件が大きく改善される結果,イチゴの花芽分化が促進されると考えられた.効果的な処理条件については今後詳細に検討する余地があるが,2 から 4 日間の低温暗黒と自然条件を繰り返す間欠冷蔵処理は新規の花芽分化促進技術としてきわめて有望であることが示された.
著者
後藤 丹十郎 高谷 憲之 吉岡 直子 吉田 裕一 景山 詳弘 小西 国義
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.760-766, 2001-11-15
参考文献数
19
被引用文献数
5 5

根域制限によって生じるキクの生育抑制が, 養水分ストレスの軽減によってどの程度まで解消できるかを明らかにするため, 連続給液式の水耕法と1日の給液頻度を異にした点滴灌水式の培地耕を用いて根域制限と養水分ストレスに対する品種'ピンキー'の反応を調査した.連続給液水耕では, 茎長, 節数は定植25日後においても根域容量(10∿1000ml)による差が生じなかったが, 葉面積, 地上部・地下部乾物重は根域容量が小さいほど抑制された.最も抑制程度が大きかった葉面積には定植10日後から影響が認められ, 定植25日後には根域容量10mlで根域容量1000mlの約70%となった.S/R比は根域容量の減少に伴って大きくなったが, その差は比較的小さかった.点滴給液した培地耕において, 根域容量30mlで給液頻度が少ない場合には, 定植14日後から茎長に差が認められたが, 8回では28日後においてもほとんど差が認められなかった.根域容量が小さいほど定植35日後の地上部の生育は劣ったが, 根域容量30および100mlでは給液頻度が8回以上の場合, 1および3回と比較して抑制程度はかなり小さくなった.地下部乾物重は給液頻度に関わらず根域容量が大きくなるほど重くなった.S/R比は給液頻度1回および3回では根域容量による影響がみられずほぼ一定であったが, 8回および13回では根域容量が小さくなるほど大きくなった.以上のように, 養水分を十分に与えることによってキクの生育抑制を軽減することができたことから, 根域制限による植物体の生育抑制の最大の要因は, 養水分ストレス, 特に水ストレスであると推察された.100ml以下の根域容量で栽培されるキクのセル苗や鉢育苗においては, 養水分供給頻度を高めることによって, 養水分ストレスが回避され, 生長が促進されると考えられる.
著者
後藤 丹十郎 石井 真由美 藤原 一毅
出版者
岡山大學農學部
巻号頁・発行日
no.100, pp.25-29, 2011 (Released:2012-12-03)

ブプレウルム(Bupleurum rotundifolium L.)は,種子のロットによって発芽や生育が異なることが生産上大きな問題となっている。本実験では種子のロット(No.021793,025090,026247,027668)および採種時期が生育,発芽および開花に及ぼす影響を調査した。ロットによって発芽率は異なった。発蕾および開花は025090で最も早く,026247で最も遅く,027668と021793はその中間だった。自家採種種子は採種時期により発芽が異なり,6月中旬から7月上旬の高温期に採種した種子は発芽率が著しく高かった。しかし,高温期採種種子は著しく開花が遅れ,節数が多く,切り花品質が低下したのに対し,低温期採種種子は開花が早く,切り花形質が優れる傾向があった。種子のロットによって生育や開花が異なった。親個体のロットによる違いがほとんど認められなかったので,採種種子の性質の違いは親個体のロットによる違いよりも採種時期の環境条件の方が大きく影響していると考えられた。
著者
福島 啓吾 梶原 真二 石倉 聡 時安 美奈 福田 直子 後藤 丹十郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.373-379, 2019 (Released:2019-12-31)
参考文献数
23
被引用文献数
2

定植後に速やかに生育するトルコギキョウ苗を人工光利用の閉鎖型育苗環境で育てることを意図し,育苗開始から5週間の明期の長さおよびPPFDを明らかにしようとした.育苗は,明暗期の気温を27.5°Cとしたインキュベータで行った.PPFDを平均125 μmol・m–2・s–1とした場合,育苗開始8日後の発芽率は,明期の長さにかかわらず98%以上となった.育苗開始5週間後の苗の節位別の葉身長は,明期の長さが12 hと比較して20 hおよび24 hが大きく,定植から抽苔,発蕾および開花までの日数は小さかった.明期の長さを24 hとした場合,育苗開始8日後の発芽率は,PPFDにかかわらず概ね95%以上となった.育苗開始5週間後の苗の節位別の葉身長は,PPFDが50 μmol・m–2・s–1と比較して100 μmol・m–2・s–1および125 μmol・m–2・s–1が大きく,定植から抽苔,発蕾および開花までの日数は小さかった.これらの結果から,明暗期の気温が27.5°Cの人工光利用の閉鎖型育苗環境では,育苗中の明期の長さを20 h以上,PPFDを100~125 μmol・m–2・s–1にすることで,定植後にロゼット株が発生することなく,速やかに生育するトルコギキョウ苗を生産できることが明らかになった.
著者
山口 訓史 後藤 丹十郎 大谷 翔子 安場 健一郎 田中 義行 吉田 裕一
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.261-266, 2015 (Released:2015-09-30)
参考文献数
12

生育段階の異なるシュートに対する温度条件がシュッコンカスミソウ‘アルタイル’の形態異常花序発生に及ぼす影響を検討した.シュート長20 cmから2週間15°Cに加温することで,8週間15°Cに加温した場合と同様に,形態異常花序発生が軽減された.2週間加温した個体の切り花長と切り花重は,8週間加温した個体よりも大きくなった.形態異常花序が発生するシュート長と頂芽における花芽分化段階との関係を調べたところ,頂芽のステージが栄養成長からがく片形成期に当たるシュート長が約1~20 cmから15日間の15°C加温で最も形態異常花序が抑制できた.形態異常花序に及ぼす低温の影響を明確にするため,異なる生育段階に対する低温遭遇(7°C)が形態異常花序発生に及ぼす影響を調査した.異なる生育段階に高温(15°C)に遭遇させた実験と同様に,頂芽のステージが栄養成長からがく片形成期までの低温遭遇が形態異常花序発生に大きく関与していた.以上のことから,摘心直後からがく片形成期の期間,株を低温に遭遇させないように温度管理することで,形態異常花序の発生を抑制でき,切り花形質も改善できると考えられた.
著者
福島 啓吾 梶原 真二 石倉 聡 勝谷 範敏 後藤 丹十郎
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.177-184, 2017 (Released:2017-06-30)
参考文献数
33
被引用文献数
2

本実験は,吸水種子湿潤低温処理方法がトルコギキョウの生育および切り花形質に及ぼす影響を明らかにしようとした.無処理を対照とし,10°Cの暗黒条件下で5週間の低温処理を播種前または播種後に行う6処理区についてロゼット性の異なる‘キングオブスノー’と‘ロココマリン’を用いて比較検討した.低温処理終了から定植までの育苗は,日最低気温が21.0~25.5°Cの範囲で推移し平均23.0°C,日最高気温が26.0~43.5°Cの範囲で推移し平均37.2°Cの条件の下で実施した.抽苔,発蕾および開花率は,ロゼット性にかかわらず種子低温処理により無処理と比較して有意に高まったが,低温処理方法による差はなかった.ロゼット性の強い‘ロココマリン’において定植から抽苔,発蕾および開花までの日数は,無処理と比較して種子低温処理により有意に減少した.切り花形質は,両品種ともに種子低温処理各区に大きな差はなかった.以上から,高温期に育苗する作型では,種子低温処理を行うことが重要であり,処理方法は低温による生育促進効果に影響を及ぼさないことが明らかになった.
著者
山口 訓史 後藤 丹十郎 小日置 佳世子 大谷 翔子 田中 義行 吉田 裕一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.161-167, 2014
被引用文献数
1

最低気温がシュッコンカスミソウ'アルタイル'の形態異常花序発生および切り花形質に及ぼす影響を調査した.形態異常花序を異常の特徴と程度に基づき3つのタイプ(1:茎が短いもの,2:2本の茎が癒着,3:ひどく湾曲し変形したもの)に分類した.形態異常花序の発生は初冬から早春にかけて増加した.軽度なタイプ1とタイプ2による形態異常は,開花時期に関係なくほぼ一定の割合で発生が認められたのに対して,切り花の外観を大きく損なうタイプ3は3月開花の個体で大幅に増加した.最低気温(7°C, 11°C, 15°C)が形態異常発生に及ぼす影響を調査したところ,タイプ3は最低気温が低いほど発生率が高かった.一方,切り花長,切り花重は最低気温が高いほど劣ることが明らかになり,形態異常花序発生を抑制したうえで,十分なボリュームの切り花を得るためには11°Cの加温が有効であると考えられた.栽培期間中の低温への積算遭遇時間とタイプ3の発生割合の関係を分析したところ,発蕾から開花までの積算低温遭遇時間と形態異常花序発生の間に相関は認められず,摘心から発蕾までの積算低温遭遇時間と形態異常花序発生との間には有意な相関が認められたことから,摘心から発蕾の期間における9°C以下の低温遭遇が重度の形態異常花序(タイプ3)の発生に関与することが示唆された.
著者
安場 健一郎 藤尾 拓也 渡邊 勝吉 多根 知周 山田 竜也 内村 優希 吉田 裕一 後藤 丹十郎 田中 義行
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.155-163, 2017 (Released:2017-12-28)
参考文献数
22
被引用文献数
2

施設内外の夜間のCO2濃度の計測値を利用して,隙間換気回数と施設内でのCO2発生速度を推定するソフトウェアを開発した.開発したソフトウェアはパーソナルコンピュータ上で動作し,ユビキタス環境制御システム(UECS)に準拠したCO2計測ノードが導入された施設で利用可能である.冬期間締め切った施設では夜間,土壌や植物から発生するCO2によってCO2濃度が上昇する.隙間換気回数と施設内からのCO2発生によってCO2の上昇曲線が決まる.開発したソフトウェアで,隙間換気回数推定のためのデータ収集期間を設定すると,自動的にその期間のCO2濃度を記録する.その期間の終了時に,非線形回帰分析を利用して,隙間換気回数と施設のCO2発生速度を自動的に推定する.また,計算したこれらの推定値を利用して,日中,換気開始前までの施設内での光合成速度を推定する機能を実装した.また,電子メールによってこれらの計算結果をリアルタイムにユーザーに伝達する機能を実装し,推定値の把握を容易にした.本ソフトウェアを利用することでCO2測定ノードが導入されていれば,簡単に隙間換気回数,施設内でのCO2発生速度を推定可能で,施設内でのCO2環境や省エネルギなどの施設内環境の改善に活用できると考えられた.
著者
花田 惇史 吉田 裕一 佐藤 卓也 後藤 丹十郎 安場 健一郎 田中 義行
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.161-169, 2016
被引用文献数
4

近年,受粉用ミツバチがしばしば不足し,果実を中心に園芸作物の生産コスト増大や品質低下を引き起こしている.その解決策の一つとして,医療用の無菌ウジ増殖技術を応用して生産したヒロズキンバエについて,施設栽培作物の花粉媒介昆虫としての実用化の可能性を検討した.イチゴ,トマト,ナスおよびメロンを対象として,開花期にヒロズキンバエをハウス内に放飼し,着果率や果実形態の比較によって,各作物への受粉効果を調査した.トマト,ナスおよびメロンにおいては,明確な着果促進効果は得られなかった.一方,イチゴでは,ハエは羽化直後から盛んに花に飛来する姿が観察され,ハエ搬入前と比較して受精不良果発生率は大きく低下した.ただし,90 m2当たり400頭の搬入では品種によって効果が不十分であった.しかし,1000頭搬入した場合は,ミツバチと同等の効果が得られたことから,ヒロズキンバエはミツバチの代替ポリネーターとして十分利用可能であると考えられた.