著者
小林 佳美
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.6-17, 2019 (Released:2020-06-05)
参考文献数
28

本稿では,私立保育所の保育士賃金が1990 年代後半以降の保育制度改革を機に,一般的に低いと認識される状況に陥った背景と,その要因を,1980 ~ 2015 年の都道府県別時系列集計データを活用して分析した。分析対象期間の保育士賃金の動向は,2000 年すぎから低下し,2005 年にはいずれの人口規模においても女性労働者の平均を下まわるレベルとなったことが確認された。この低下の要因を検討するため,保育制度改革期を機に減少した公立/私立割合,及び女性の就労環境の変化に着目してプールド重回帰分析を行った。集計データによる分析は留保を要する結果ではあるものの,2000年以降,平均勤続年数の増加にともなう賃金上昇が抑制されたこと,主に人口密度の低い地方部で公立割合の減少と共に賃金水準が低下したことが確認され,専門職としての経験を積み上げられる賃金体系を,ナショナルミニマムとして回復することの必要性が示唆された。
著者
茆原 順一 小林 佳美 萱場 広之
出版者
秋田大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

気管支喘息に代表されるアレルギー性疾患は,アレルギー性炎症疾患として捉えられている.古典的な炎症の定義から考察するとアレルギー性炎症として「発熱」という現象に対する検討はまだされていない.そこで,気道炎症の「発熱」を呼気温度の測定にて捉え得るのではないかと着目し,基礎的検討を行った.フローボリウム測定と瞬時に温度変化を捉えられる高感度温度計を組み合わせ,はじめに安定した測定条件の検討を行った.最大吸気から呼出までの条件,最大呼気条件による呼気測定の温度センサーの位置をマウスピースの中央,マウスピースより咽頭側,鼻マスクで検討を行った.この結果最大吸気後ゆっくりとゆっくり呼出させる方法で,温度センサーをマウスピースを咽頭側で測定した際,最も安定した測定値が得られた.次に単位面積当たりの熱エネルギー量(W/cm^2)を表す呼気熱流速と呼気温度のピーク値の体温補正値(呼気温度測定値と体温の比で表したもの)を健常者の各条件で比較した.その結果,呼気熱流速は呼気温度に比べて温度変化に敏感な値を示した.さらに呼気温度のピーク値は性別や喫煙の有無で差が認められたが,熱流速には差を認めなかった.呼気温度と呼気熱流速の両方を用いることで気道炎症の新しい指標になりうると考えられた.