著者
木野 稔也 福田 康二 古江 増裕 茆原 順一 泉 孝英 大島 駿作
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.829-836, 1985

61歳男子の肺気腫症例に, 水性ディオノジール<sup>®</sup>を用いて選択的肺胞気管支造影を施行したところ, 6日目から発熱のほか咳嗽, 喀痰, 呼吸困難などの喘息様症状を呈し, 胸部X線写真上気管支肺胞に残留した造影剤を中心に浸潤影を認め, 検査所見では喀痰および末梢血好酸球増多, 血清IgE高値を示した症例を報告した. この症例は, 造影剤が残留した部位を中心に生じた喘息性肺好酸球増多症と診断することができるが, その病因として, 水性ディオノジール<sup>®</sup>の好酸球に対する chemotactic substance としての作用によるもののほか, 真菌抗原に対するI型およびIII型アレルギーの関与が示唆されたことから, アレルギー性気管支肺真菌症としての診断基準をも満すことになり, 造影剤とともに偶然に真菌抗原が長期間気管支肺胞内に貯留したことによって生じた可能性などを考察した.
著者
茆原 順一 小林 佳美 萱場 広之
出版者
秋田大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

気管支喘息に代表されるアレルギー性疾患は,アレルギー性炎症疾患として捉えられている.古典的な炎症の定義から考察するとアレルギー性炎症として「発熱」という現象に対する検討はまだされていない.そこで,気道炎症の「発熱」を呼気温度の測定にて捉え得るのではないかと着目し,基礎的検討を行った.フローボリウム測定と瞬時に温度変化を捉えられる高感度温度計を組み合わせ,はじめに安定した測定条件の検討を行った.最大吸気から呼出までの条件,最大呼気条件による呼気測定の温度センサーの位置をマウスピースの中央,マウスピースより咽頭側,鼻マスクで検討を行った.この結果最大吸気後ゆっくりとゆっくり呼出させる方法で,温度センサーをマウスピースを咽頭側で測定した際,最も安定した測定値が得られた.次に単位面積当たりの熱エネルギー量(W/cm^2)を表す呼気熱流速と呼気温度のピーク値の体温補正値(呼気温度測定値と体温の比で表したもの)を健常者の各条件で比較した.その結果,呼気熱流速は呼気温度に比べて温度変化に敏感な値を示した.さらに呼気温度のピーク値は性別や喫煙の有無で差が認められたが,熱流速には差を認めなかった.呼気温度と呼気熱流速の両方を用いることで気道炎症の新しい指標になりうると考えられた.
著者
小山田 一 守時 由起 茆原 順一 植木 重治
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

プロスタグランジンD2(PGD2)はアレルギー炎症の形成に重要な役割を担っている。PGD2の作用は細胞表面受容体であるCRTH2/DP1、もしくは核内受容体を介していることが知られていたが、これまでの検討から未知の細胞表面受容体の存在が示唆された。われわれはPGD2がケモカイン受容体CCR3の発現を抑制し、これが通常リガンド刺激で認められるinternalizationによるものであることを見いだした。そこでPGD2がCCR3を介して機能している可能性を、トランスフェクション細胞を用いた受容体結合試験やカルシウムシグナルによる検討を行ったが、いずれにおいても否定的な結果が得られた。